今週の注目ニュースはAbemaTVが600万ダウンロードを突破(サイバーエージェント)。「本開局からちょうど3ヶ月の2016年7月11日(月)時点で500万を突破、その後、2週間で更に100万件増加し、7月25日(月)時点で600万ダウンロードを突破するなど、急速に利用者を伸ばしている」という。
テレビがブロードキャスト(放送)からインターネットに移行することは世界的な傾向だ。北米ではインターネット接続した世帯の52%にあたる4900万世帯がテレビをネットに接続しているという(関連記事)。メディア環境研究所の「メディア定点調査・2016」によると、日本でも「テレビ」をインターネット回線に接続している比率は31.0%、初めて3割を超えた。
今週の注目ニュースはAbema TVが600万ダウンロードを突破したことだ(サイバーエージェント)。プレスリリースによると「本開局からちょうど3ヶ月の2016年7月11日(月)時点で500万を突破、その後、2週間で更に100万件増加し、7月25日(月)時点で600万ダウンロードを突破するなど、急速に利用者を伸ばしている」。おそらく利用者のマジョリティはこのモバイルアプリでAbema TVをみている。
テレビがブロードキャスト(放送)からインターネットに移行することは世界的な傾向だ。北米ではインターネット接続した世帯の52%にあたる4900万世帯がテレビをネットに接続しているという(関連記事)。メディア環境研究所の「メディア定点調査・2016」によると、日本でも「テレビ」をインターネット回線に接続している比率は31.0%、はじめて3割を超えた。
サイバーエージェントのQ3決算資料によると、Abema TV は週間アクティブユーザー数(上図)が244万人ととてもアクティブ性が高く、ユーザー数拡大のため収益性は現状、棚に置くという。
Advertisement
番組視聴数ランキング(上図)では、テレビコンテンツを掘り下げた企画で、より特定の層のエンゲージメントを得ている印象だ。
年代別利用者(上図)では、放送の「テレビ」とは異なり、18〜24歳が29%、25〜34歳が32%と視聴者層が若年層によりマジョリティ形成されている。テレビコンテンツ自体は若者に強いニーズがあることを示している。
以下のその他の注目トピック。
■VerizonがYahoo買収
VerizonがYahooを48億3000万ドル(約5000億円)で買収(Bloomberg)。Verizon傘下のメディア・広告ハイブリッド企業AOLと統合される。Verizonがキャリアとして取得可能な豊富なユーザー情報、AOLの多数のパブリッシャーと拡大するアドテクにYahooが加わる。合計ユーザー数10億人のファイナンス、ニュース、スポーツコンテンツなどのサ―ビスにより面が確保され、同時にメールなどから豊富なユーザーデータが手に入る。米デジタル広告市場でGoogleとFacebookを追いかける第3極になる。
Yahooはアリババとヤフージャパン(35.6%)の株式を保有するファンドの状態。親会社に相当するヤフージャパン筆頭株主(43.0%)のソフトバンクは英ARMを約3.3兆円で買収したばかり(参考:ヤフージャパンQ1)。
■Facebook、Google、Amazon驚異的な成長
Facebookの第2四半期決算(Q2)、収益は対前年同期比で59%増の64億ドル(約6700億円)と大きく伸びた。モバイル広告の売上高は52億ドルに達し、対前年同期比81%の伸び。モバイル広告収益が広告収益全体の84%を占めておりモバイル比率は高まるばかりだ。北米での広告事業の伸び率は69%、アジア太平洋地域では67%で、この2地域が成長が著しい。営業利益率は43%と極めて高い。
ユーザー数の増加は続いている。月間アクティブユーザー数(MAU)は17億1200万人に達し、モバイルオンリーのMAUは9億6700万人に上っている。さらに拡大するには、途上国のネット環境の整備が重要になるだろう。
Googleの親会社AlphabetのQ2でも、収益は対前年同期比21%増の215億ドル(約2兆2500億円)(Alphabet)。AmazonのQ2も収益は前年同期比31.1%増の304億ドル(約3兆2000億円)。クラウドサービスのAmazonWebServices(AWS)が好調(Amazon)。
デジタル広告市場の成長の大半をこのFacebookとGoogleが取り込んでおり、プラットフォームが有利にゲームを進めていることが伺える。
■Oracleが約1兆円買収
Oracleは28日(現地時間)、財務・バックエンド業務のクラウドサービスを提供するネットスイーツ(NetSuite)を93億ドル(9800億円)で買収したと発表した(Oracle)。オラクルはオンプレミスのデータベースソフト事業が縮小傾向であり、既存事業で蓄えた豊富なキャッシュで、今年も大きな買収をすると取り沙汰されていた。
■テンセントがインバウンド向け広告
テンセントは訪日中国人観光客の急増によるビジネス機会の獲得を目指す日本企業を対象に、ワンストップ型の広告ソリューションの提供を開始することを発表。日本政府観光局(JNTO)によると、2016年1月〜6月に日本を訪れた中国人観光客は307万6600人となり前年同期比から41.2%増加した。
テンセント・シニアダイレクターのベニー・ホー氏はDIGIDAYに対し「テンセントのプロダクトは中国人の生活のほとんどだ。中国人旅行者が日本に来る前の情報収集段階から多様な広告でアプローチできる」と語った。ベニー・ホー氏へのインタビューは近日公開予定。
■ワトソンがプログラマティック広告を効率化
先週の動きになるが、IBMはWatson(ワトソン)をプログラマティック広告買い付けの効率化に利用したところ、クリック単価(CPC)を35%削減し、一部のケースでは71%削減に成功したと発表した。
一時期、ロケットサイエンティストが設計したアルゴリズムを採用するアドテクも存在し、金融工学同様のアプローチがデジタル広告に用いられようとした時期があった。
しかし、結果はあまり安定しなかったようだ。モデル設計段階で、対象となる人間の行動の複雑性をあまり勘案せず、条件を「恣意的」に設定していたようだ。ファクターが金融商品のように抽象性の高いものではなく、広告の結果を決めるのは、複雑な心理をもつ人間のため、より細かく、ダイナミックなモデリングが必要になる。
最近のマイクロモーメントなどのアプローチが人間の心理部分に光を当てているのは、この部分を織り込んだためだろう。また、「ロケットサイエンティストの失敗」には、中間業者が多すぎたり、不透明な箇所がたくさん散らばっているという業界の特性もあっただろう。人間の仕事を拡張する、自律的に学習する機械の挑戦が始まっている。
■データセンター冷却費40%の効率化
関連して、Googleも先週、傘下の人工知能(AI)企業DeepMindの機械学習技術をデータセンターの冷却機能の改善に利用し、40%のコストカットを実現したと発表した(Bloomberg)。Googleグリーンブログによると、Googleは独自に超効率的なサーバーを制作していたが、サービスは拡大の一途で、データセンターの電力消費量は米国の36万世帯分に達していた。
Googleは2年前から機械学習をデータセンターの操業に活用していたが、2〜3カ月前からDeepMindのチームが参加し、今回の結果につながった。同社共同創業者のデミス・ハサビス氏はファン、冷房、窓などの「120に及ぶ変数」を調整し、とても良い成果を出したという。
Written by 吉田拓史
Photograph via Abema TV