1週間のデジタルのトピックをおさらいする「デジタルマーケティング10」。手早くチェックを済ませたら、どうぞいい週末をお過ごしください。来週はDIGIDAYパブリッシングサミットを京都で開催するため、お休みします。 今週の […]
1週間のデジタルのトピックをおさらいする「デジタルマーケティング10」。手早くチェックを済ませたら、どうぞいい週末をお過ごしください。来週はDIGIDAYパブリッシングサミットを京都で開催するため、お休みします。
今週の注目トピックとしては、YouTubeが米国でモバイルライブ動画「YouTube Connect」を開始し、モバイルライブ動画ストリーミング(Mobile live-streaming video:以下、モバイルライブ動画)の活況が裏付けられたことが挙げられる。
YouTubeは2011年からライブストリーミングを開始していたが、タテ型、時系列に表示されるコメントなどのフォーマットを採り入れたモバイルライブ動画を初めて導入。Twitterが提供するペリスコープ(Periscope)とほぼ同じ規格だろう。Tumblrも今週、YouTubeなどとの協力でライブ動画を開始した。
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ライブストリーミングは主にデスクトップで消費されてきたが、通信環境の良化やモバイルの高機能化、アプリの拡充により、昨年頃からモバイルでの競争が激しくなり始めた。このモバイルライブ動画とカテゴライズされる領域では、ミーアキャット(Meerkat)、Periscope、Younowなどの先行者に加え、Facebookも今年参入しており、各社が殺到する超激戦区になっている。
おそらく背後には、消費者行動がモバイルライブ動画にシフトしているというデータが存在するはずだ。若年層のニーズのなかでは「生中継(ライブ)」あるいは「ライブ感」が重要な要素になっている。日本でもニコ生、ツイキャスがイノベーター的に市場をつくっていたが、米国のトレンドはかなり急激だと考えられる。米国は日本よりもWi-Fi環境が整っていることがトレンドの基盤になっていそうだ。
モバイルライブ動画とビデオオンデマンド(VOD)の組み合わせは動画を以下のように変えつつある。
1.ニッチコンテンツが無数のケーブルチャンネルになる
ニッチコンテンツ製作者はプラットフォームのなかの「ケーブルチャンネル」になれるし、クラウドサービスの拡充により独自配信インフラ構築・アプリ制作のコストも下がっている。AbemaTVなどへの番組提供、チャンネル運営も好例で、将来的に広告収益のレベニューシェアなどが見込まれそうだ。アニメ、スポーツ、ボードゲームなどの「テレビ放送にとってはニッチすぎるが、ロイヤリティのあるコンテンツ」のホルダーは独自配信により、サブスクリプション(定額制)モデルでの収益化の機会を迎えている。ニッチで粘着力のあるユーザーは課金に対し、抵抗が少ないかもしれない。一部のゲームアプリでそのような傾向が見てとれる。
2.コミュニケーションとしての「生中継」
動画はコミュニケーションツールになっている。デスクトップのライブストリーミング/VOD配信は、YouTubeスターのようなインフルエンサーを生んだが、モバイル利用が拡大すれば、よりパーソナルな、少人数のなかで視聴される動画の流通が増えることになる。流通する動画はどんどん多様化しているのだろう。Snapchat(スナップチャット)の「雑談的な動画」のシェアやストーリー機能も「ライブ感がある」と考えられる。「雑談的な動画」に関しては、このSnapchatに似た日本のアプリSnowの藤田ニコルをご覧ください。
米セレブゲームアプリのプロデューサー、クリスチャン・ライモン氏はモバイルライブ動画に関して、ビジネスとして成立させるには「ストリーミングは『インフルエンサー総取り』」と分析している。メディアなどのバックボーンを持たない個人では十分な視聴数は稼げず、有名人が勝つという想定だ。LINE LIVEやAbemaTVの生放送は有名人、テレビ系製作スタッフ起用でこの路線だ。
今週発表されたメディア環境研究所の「メディア定点調査・2016」によると、メディア総接触時間は過去最大の393.8分。おそらくメディアヘビーな若年層は「もうこれ以上接触できない」というレベルまで接触しているかもしれない。なかでもモバイル接触時間が長いが、今後米国の若年層と同じように、モバイルライブ動画がシェアを伸ばすのか、注視が必要だ。
以下今週の10のトピック。
1.YouTubeが米国でモバイルライブ動画「YouTube Connect」を開始。タテ型フォーマット、コメントが時系列に表示される。先行するPeriscopeと同じ仕組み(Youtube)
2.Tumblrがライブ動画を開始。ライブ動画アプリのYouTube、YouNow、Kanvas、Upcloseをインテグレート(TheVerge)
3.米メディア大手バイアコムはモバイル動画ストリーミングアプリ「BET Play」をリリース。月3.99ドルでMTV、コメディセントラルなどが見放題(The Verge)
4.eMarketerは米デジタル動画広告費が2020年まで2桁成長を持続すると予測。今年は98億4000万ドル(約1兆円)、2020年は166億9000万ドル(約1兆6600億ドル)と予測(eMarketer)
5.BuzzFeedの広告事業をゼロから築いたジョン・スタインバーグ氏が展開する金融情報動画ストリーミング「Cheddar」がアンドロイドアプリとRokuでの配信を開始(Cheddar)
6.バイアコム、支配株主サムナー・レッドストーン氏、業績不振などを理由にCEOと4取締役を更迭(CNBC)
7.インターネットのインフラを握る野望の行方はいかに。Alphabet(アルファベット)傘下のGoogleファイバー(Google Fiber)が米国時間22日、米ウェブパス(Webpass)というインターネットサービスプロバイダー(ISP)事業者の買収を発表(WIRED)
8.Vice Mediaのシェーン・スミス氏「われわれは今年、上場か、企業売却を検討しないといけない」。事業拡大の速度を重視。アフリカ、インドなどの国に50のテレビネットワークを拡大する予定(CNBC)
9.Vice MediaのスミスCEOは「デジタルやモバイル、地上波の分野で今後1年以内に血戦を目にすることになる」「人々は、サブスクリプションベースに移行しつつある」(DIGIDAY[日本版])
10.モバイルでのネット接続は家の中、家の外の両方に染みこんでおり、どんな瞬間・位置・状況においても動画を視聴可能にした(DIGIDAY[日本版])
Written by 吉田拓史