2017年は北米でデジタル広告収益がテレビ広告収益を超す年になりそうだ。中国の広告市場の伸びは顕著で、西ヨーロッパに匹敵するサイズに達しつつある。
今回は2016年最後の「デジタルマーケティングサマリー」となるが、今週出た、2017年に北米でデジタル広告収益がテレビ広告収益を超す予測は来年の大きな指針になりそうだ。各社の来年の広告収益予想を簡単にまとめた。
マグナグローバル(Magna Global)とメディアエージェンシーのゼニス(Zenith)のレポートは2017年に北米でデジタル広告費がテレビ広告費を逆転すると予測。
同レポートは中国の広告市場の伸びが顕著だと指摘した。グローバル広告費においては、2019年までモバイルが成長を独占し、全体に対する比率もテレビに肉薄するレベルに達すると予測している。
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今年8月のPwCが発表した「Global Entertainment and Media Outlook report」も2017年に米国でデジタル広告がテレビ広告を超すと予想していた。
*米国のテレビ広告収益は、2015年の699億ドルから2020年には817億ドルに増加すると予測される。年平均成長率は3.2%。
*米国のデジタル広告収益は2015年の596億ドルから2020年には935億ドルに増加すると予測される。年平均成長率は9.4%(テレビの約3倍)。
*PwCは2017年がデジタル広告収益がテレビ広告収益を超える最初の年と予測する。
*モバイル動画広告収益は2015年の35億ドルから2020年には133億ドルまで増加する。年平均成長率は30.3%と急拡大する。
WPPの旗艦エージェンシーであるグループエムは12月5日の発表で、2017年のグローバルの広告費は5470億ドル(4.4%増)と予想されるとした。「このうちデジタル広告の割合は33%。2016年は新しい広告費支出の1ドルにつき、デジタルが72セント、テレビが21セントだが、2017年にはデジタルが77セント、テレビが17セントになる」とし、予算を積み増した分の多くが、デジタルに配分されると予想する。
*低成長などの要因が広告主に効率化を迫る
*トランプ政権や英国国民投票によるEU離脱(ブレグジット)の不透明感でも広告主は予算を維持
*高成長市場とデジタルメディアが引き続き成長の原動力
グループMはグローバルな広告市場では「適度な成長というニューノーマル(新常態)が定着した」と見ている。同社はプレスリリースで中国をはじめとするブリックスやネクストイレブンなどの新興国が一定の貢献をすると予想。中国は西欧諸国に匹敵するレベルだ。
WPP系列で世界的なメディア投資グループのグループエムは5日、世界の広告費の2016年予想をそのまま維持するとともに、2017年の予想を明らかにした。ブランド企業が低成長下で効率経営を迫られる中、世界の広告費は来年もさまざまな経済要因から穏やかな伸びにとどまりそうだ。
米大統領選挙や欧州連合(EU)離脱を巡る英国民投票の結果に伴って不透明感が漂っているが、広告予算には今のところ影響は出ていない。中国などの新興国は広告費の伸びに大きく貢献し続けているものの、適度な成長というニューノーマル(新常態)が定着している。デジタル広告が最も成長の恩恵を受ける状況も変わらない。
以下、今週の注目トピック。
■プログラマティックがディスプレイの過半に
プログラマティック広告に投じられる広告費の割合が伸びている。メディアエージェンシー、ゼニス(Zenith)のレポートによると、ディスプレイ広告の半分以上がプログラマティックになった。
※DIGIDAY[日本版]では、プログラマティックは自動化され、データを活用した広告のことで、物理的な営業活動を通じないものを指す。
■PCのYahoo! モバイルのLINE
ニールセンの「2016年日本のインターネットサービス利用者数ランキング」によると、2016年PCからの利用者数1位は「Yahoo!」で、2位より1200万人多い3412万人が利用している。
アプリ利用者数1位は「LINE」で、昨年から668万人増加した、4353万人が利用している。
■インスタグラムがさらにスナチャっぽく
24時間で消える動画と写真「インスタグラムストーリーズ」にステッカーを貼れる機能を追加した。人々は位置、気温、時刻などをステッカーで追加することもできる。これはSnapchatのジオフィルターに似た機能だ。
■Messengerがグループビデオ通話機能を追加
世界中のFacebook Messengerにグループビデオ通話が追加された。同時に50人までビデオ通話できる。ビデオ通話自体は元から採用されており、毎月2億4500万人がMessengerのグループビデオ通話を利用しているという。先週、LINEが同様の機能の追加を発表していた。
■米司法省、広告制作の価格協定疑惑で大手代理店を聴取へ
米司法省はテレビ・デジタル動画広告制作の入札における価格協定の疑惑を捜査するため、広告ホールディングス世界1位のWPPの子会社代理店3社に出頭を命じた。先週までに、同2位のオムニコム、同3位のピュブリシス、同4位のインターパブリックの代理店が出頭を命じられていた。
Written by 吉田拓史
Photo by Thinkstock