ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリスト 亦賀(またが) 忠明氏は26〜28日に開かれた「ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2017」で、企業はデジタルビジネスを開始するため、テクノロジ、ビジネス、人材に対し新しい戦略を即座に開始することを提案した(講演の一部を抜粋している)。
ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリスト 亦賀(またが) 忠明氏は26〜28日に開かれた「ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2017」で、企業はデジタルビジネスを開始するため、テクノロジー、ビジネス、人材をめぐって新しい戦略を即座に開始することを提案した。講演の一部を抜粋。
亦賀氏はこう警鐘を鳴らした。「デジタル化はすでに起こりつつある現実。ゼネラルエレクトリック(GE)はいいものを作ったとしても売れるかわからないと考え、ビジネスモデルを変えようとしている。米金融シティは『Digital Disruption』というレポートを出し、『スマートフォンが銀行業を下から上に破壊していく』と考えた。スマートフォンネイティブにとって銀行は理解しがたく、店舗に行く理由がない。新たなテクノロジーで30%が職を失うと予見する」と語った。
急拡大するフィンテック投資。シティはディスラプションの兆候と受け取っており、レポートではビジネスモデルの改革を急ぐことが提唱されている。 Via Digital Disruption
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Google、Amazon、ウーバー、フィンテック企業などが提供する価値とはPeople Centric(人中心)だ。「デジタルビジネスは破壊と創造を繰り返す。産業とビジネスを根本から変えるインパクトがある」。
亦賀氏は人中心型のプロダクト例としてAmazonエコーを挙げた。エコーに搭載された音声認識プラットフォームAmazon Alexaは米国ではさまざまなデバイスに搭載されつつある。中心にある人をコネクティビティ(ネット接続)のインフラが包み込む「デジタルメッシュ」。人はどこでもインテリジェンスにアクセスでき、センサーデータを基にしてプロダクトやサービスが逐次改善されたりする。
ガートナーはデジタルビジネスを確立するため、2つのモードを段階的に実現していく「バイモーダル」を提唱してきた。モード1は従来の業務システムなどを指し、モード2はビジネスを革新することだ。

出典:ガートナー(4/26)
亦賀氏はビジネス、マネジメント、テクノロジにまたがる人材の協働の必要性を指摘した。デジタルビジネスを生み出し、運営するには以下のようなスキルセットが融合しないといけないという。

出典:ガートナー(4/26)
特にテクノロジー人材の世界で大きな変化が起きていると語った。「人工知能のトップ人材はF1レーサー、大リーガーに匹敵する。トヨタは、昨年設立した人口知能研究所の研究者に数千万円レベルの報酬を渡している」と語った。「人材獲得競争が激しく、捕まえられない。投資して早期に育成しないと間に合わない。ともに楽しむ、世界を変える新しいプロ集団、好奇心指数の高いグループが中心になる」。
いいテクノロジー人材にいい評価を
テクノロジー人材の内外給与格差が問題になる、と亦賀氏は分析する。「米国で1200万〜2000万円超。日本は400万〜600万円。『日本人安いよね』となり、獲得の対象になるかもしれない。給与体系を変えるのは大変だが、高いスキルを適切に評価して、相応の対価を払うことが必要だ」。
先日も一橋大で講師を務める経済学者が香港大学に移籍し、給与が2.3倍以上増えた事例が話題を集めた。特に近年は人工知能、データサイエンス、ブロックチェーンなどの最先端領域を専門とする人材は希少であり、高い報酬を払う巨大企業が彼らを囲い込む例は枚挙にいとまがない。
「これまでもエンジニアを作業者として扱ってきた。専門スキルをもつクリエイターとして処遇するべきだ。今後は多くの?日本企業が?新たなアルゴリズム開発や人工知能的なも?にチャレンジするが、そ?の80%がテクノロジーで?なく、人材?問題で行き詰まる」。
「想像を絶するテクノロジー・イノベーションが起こっている。そのインパクトを思考してとるべきアクションを考察しないといけない。テクノロジーを駆使する人材を擁立し投資する。デジタルトランスフォーメーションの計画に着手する。社外に対し良いインフルエンス(影響)を与えるため頑張らないといけない」。
Written by 吉田拓史
Photo by GettyImage