エージェンシーとクライアントの関係は以前から不安定だったが、ここ数年両者の緊張関係は高まっている。その大きな要因となっているのが、エージェンシーの手数料ベースの報酬モデルだろう。プロジェクトの作業が増えているのに、報酬モ […]
エージェンシーとクライアントの関係は以前から不安定だったが、ここ数年両者の緊張関係は高まっている。その大きな要因となっているのが、エージェンシーの手数料ベースの報酬モデルだろう。プロジェクトの作業が増えているのに、報酬モデルは進化していない。そのため、クライアントから支払期限を延長されると、エージェンシーはますます長いあいだ資金不足に陥ってしまう。
ただし、支払いの延期だけが争点ではない。請求額をめぐる議論も白熱している。いまのクライアントは、コストセンター扱いされているマーケティングの価値を証明するため、コストを削減できる領域を見つけ出さなければならない。そのため、予算の範囲内でもっとも規模の大きいと思われるエージェンシーを選ぼうとしている。コストはよくある問題だが、エージェンシーとクライアントのあいだで緊張が高まっている理由は、それだけではないのだ。
米DIGIDAYでは、エージェンシーとクライアントの関係がどれほど悪化しているのか、その現状を調査した。
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クライアントがエージェンシーとの関係を終了する理由
エージェンシーとクライアントの関係が継続する期間は、この数十年間でますます短くなっている。ベッドフォード・グループ(The Bedford Group)の調査によれば、1984年の段階では、両者の関係が続く期間は平均で7年超だったが、1990年代に入ると5年超に下落した。2010年代には、さらに短い3年未満となっている。米DIGIDAYが4月にクライアント側の幹部73人を対象に行った調査によれば、回答者の77%がエージェンシーの仕事の質に対する不満を理由に、エージェンシーとの関係を絶ったという。また、回答者の45%が、より安価なエージェンシーを見つけたことを提携解消の理由として挙げた。
理由が何であれ、関係が続く期間が短くなれば、エージェンシーは自らの価値を証明できなくなる可能性がある。最初の1年は、以前のエージェンシーから仕事を引き継ぐ期間だ。2年目には、クライアントとどのようなユニークな関係を構築できるか見えはじめるようになり、前のエージェンシーが行っていた仕事の整理に追われることはなくなる。3年目になれば、両者の関係がうまく回りはじめる。だがこのタイミングで、クライアントはいままでの仕事を見直し、また一からやり直そうとするのだ。
エージェンシーと利害が一致していると考えないクライアント
米DIGIDAYの調査によると、クライアントの回答者の45%が、自社のビジネス上の関心がエージェンシーと一致していないと考えている。また、19%の回答者がよくわからないと回答した。クライアントの多くが内製化を進めているのはこのためだ。なかには、アウトソースするより短い期間と少ないコストで、自社の関心によりマッチした仕事ができると考えているブランドもある。
「いま起きているのは、クライアントとエージェンシーのあいだの信頼の危機だ」と、エージェンシー検索コンサルタント会社アビダン・ストラテジーズ(Avidan Strategies)のCEO、アビ・ダン氏は、米DIGIDAYに対して語ったことがある。「エージェンシーが正当な成果やサービスを提供していないと、クライアントは感じている」。
コンサルタント企業へのシフト
クライアントには、エージェンシー以外の選択肢もある。そのひとつがコンサルタントだ。彼らはすでに多くの大手ブランドと提携し、テクノロジー、サプライチェーン、経営コンサルティング関連のさまざまなサービスを提供するだけでなく、マーケティング責任者との仕事を増やしている。コンサルタントは問題点を指摘するのは得意でも、問題解決につながる仕事ができるとはいえないと考えるクライアントもいるが、エージェンシーからコンサルタントへ乗り換える動きが収まる気配はない。米DIGIDAYの調査によれば、22%のクライアントが、一部のマーケティング活動をエージェンシーからクライアントに移す計画があると答えている。
コンサルタントは、官僚的でコストのかかるエージェンシーのやり方にうんざりしている一部のクライアントから、仕事を勝ち取ることができる。
進む内製化
外部のエージェンシー以外のオプションを求めているクライアントは、内製化を検討するようになる可能性が高い。内製化の多くは、マーケティング予算に対するコントロールを取り戻そうとするクライアントによってはじめられた。世界最大手のブランドであるプロクター&ギャンブル(Procter & Gamble)も、内製化を支持する発言をここ数年繰り返している。内製化が独自の問題を引き起こす可能性もあるが、たいていのクライアントは何らかの形でエージェンシーとの仕事も続けている。米DIGIDAYの調査対象となった回答者の61%は、クリエイティブの制作でいまも外部エージェンシーと提携していると報告した。
内製化がエージェンシーとクライアントの関係に与える影響
クライアントがエージェンシーから離れるという近年の傾向は、両者の関係に変化をもたらしている。米DIGIDAYの調査対象となった企業幹部73人のうち、30%が内製化によってエージェンシーとの関係が緊張したと述べている。もっとも、エージェンシーにとっては、自分たちの仕事がさらに内製化される恐れが確実に高まっているのだから、緊張が高まるのも当然だ。クライアントの社内チームにノウハウを提供したのがエージェンシーである場合は、特にそうだろう。こうした緊張は、全体的な雰囲気だけでなく、両者の日常的なやり取りに影響する可能性がある。たとえば、エージェンシーがクライアントの要求をはねつけることが増えるといったようにだ。
Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)