米メディア界の有力者であるジョン・スタインバーグ氏は、BuzzFeedのCOOや英タブロイド紙「デイリーメール(Daily Mail)」の北米CEOを務めたことのある人物で、広告に支えられたデジタルメディアにはスケールが必要であることを熟知している。だが、ビジネスニュースの動画サービスを提供する新しいベンチャー企業チェダー(Cheddar)で、同氏はライセンス料の徴収という、いままでとは異なるビジネスモデルに賭けようとしているのだ。
チェダーは2016年夏までに、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の立会場から、取引日全日の立ち会いの模様をライブ配信する計画でいる。だが、その配信を無料で視聴することはできない。同社は、多数のOTT(オーバー・ザ・トップ)事業者と受託放送契約を結び、自社コンテンツを視聴者に提供しようとしている。ここに広告は入らない。つまり、スタインバーグ氏がBuzzFeedやデイリーメールで力を注いできたような、巨大なオーディエンス群を作る必要はないのだ。
米メディア界の有力者であるジョン・スタインバーグ氏は、BuzzFeedのCOOや英タブロイド紙「デイリーメール(Daily Mail)」の北米CEOを務めたことのある人物で、広告に支えられたデジタルメディアにはスケールが必要であることを熟知している。だが、ビジネスニュースの動画サービスを提供する新しいベンチャー企業チェダー(Cheddar)で、同氏はライセンス料の徴収という、いままでとは異なるビジネスモデルに賭けようとしているのだ。
チェダーは2016年夏までに、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の立会場から、取引日全日の立ち会いの模様をライブ配信する計画でいる。だが、その配信を無料で視聴することはできない。同社は、多数のOTT(オーバー・ザ・トップ)事業者と受託放送契約を結び、自社コンテンツを視聴者に提供しようとしている。ここに広告は入らない。つまり、スタインバーグ氏がBuzzFeedやデイリーメールで力を注いできたような、巨大なオーディエンス群を作る必要はないのだ。
スタインバーグ氏は、米DIGIDAYのポッドキャスト企画「今週のエピソード(this week’s episode)」に登場してこう語った。「YouTubeで無料公開するつもりはない。インプレッション単価(CPM)は4ドル(約400円)が妥当だと考えている。現在の状況下で独立して新たに起業し、こういうコンテンツを買ってくれる、同じ100の広告主の同じマインドシェアや大きなスポンサー契約を巡って競争することは、困難を極める。5年前の自分と競い合うことはしたくない」。
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広告頼みの起業は至難の業
パブリッシャーは通常、ビジネスモデルとして広告に目を向ける。だが、デジタルメディアの世界が成熟するにつれ、それはますます難しくなってきた。GoogleやFacebookのような超大手や、それらに次ぐ大手のパブリッシャーのおかげで、トラッキング履歴がなければ特に、マーケターのニーズに応えることが困難になっている、とスタインバーグ氏は言う。
「GoogleやFacebookでなければ、本当に厳しい。チェダーが、たとえばペプシやP&Gを訪ねていって、『これが我々のブランデッド・コンテンツのアイデアです。我が社は、BuzzFeedやVox Media、Viceがやっていることと競い合うつもりです』なんて、言えるだろうか? 頭がおかしいと思われるのがオチだ」。
「今からブランデッド・コンテンツを作ろうとしている新興のメディア企業は振り落とされてしまうだろう。クリティカルマスに達していないし、十分なスケールにも達していない。関係も構築できていなければ、追跡記録ももっていない。それではもう手遅れだ」。
花盛りのデジタルテレビ
インターネットとテレビの衝突が熾烈になってきた。OTTサービスは、Netflix、Amazon、ロク(ROKU)、ベライゾン(Verizon)など山ほどあり、どこも独占コンテンツを探し求めている。これはすなわち、現代版の「ディスカバリー・ネットワークス(Discovery Networks)」を作り出すチャンスがあるということだ、とスタインバーグ氏は説明する。
「インターネット経由で配信する場合を除いて、基本としてケーブルテレビのチャンネルを作るチャンスはふんだんにある。コンテンツを売る巨大なマーケットも、いまならある。OTTプラットフォームを作っている人はいても、そこへ向けた番組を作っている人は多くない。我々はいま、かつて新聞で起きたことがテレビで起こっているところを目撃しようとしている。コストがかからない構造でコンテンツを作り、巨大なケーブルテレビ・ネットワークと競い合うことができれば、素晴らしい」。
ライブ動画はビッグチャンス
そもそも、デジタルメディアが目指しているところは、望む時にいつでも人々がコンテンツを消費できるようにすることだった。タイムシフトは未来の波だと思われていた。だが、振り子は戻ってきて、人々はライブの魔力に気づいた。Facebookはライブ動画を押しているし、メディア企業も大急ぎで編成を変えてライブ番組を送り出している。AmazonやNetflix、テスラ(Tesla)のような魅力的な企業に焦点を当てたビジネスニュースは、ライブの動画ニュースの入り口としては最適だとスタインバーグ氏は考えている。
「リビングの壁には、これからもテレビがかかったままだろう。テレビ向けのライブコンテンツはほとんどない。テレビは世の中の出来事を見せてくれるものだ。株式市場は、どの企業の業績がよくてどの企業が悪いかを示す数字を一日中流しており、FacebookやSnapchat(スナップチャット)、Uber(ウーバー)といった企業は、我々の暮らしを形作っていて、刺激的だから、テレビ向けにこうしたコンテンツを放送するのは面白いと思う」。
プログラマティックは「理解不能」
スタインバーグ氏はプログラマティック広告(自動化されたデジタル広告)にも精通している。デイリーメールでは、プログラマティック広告が売上戦略の重要な柱だった。だがスタインバーグ氏は、この分野が意味もなく複雑で、その結果、詐欺やボット、その他の不正行為が当然のごとく起こることに気づいた。
「私は、理解できないことには注意するようにしている。普通に教育を受けた人なら、一定の時間を費やせばある物事の基本をしっかり理解できるはずだ。できない場合、それはその人の落ち度ではないと思う。その物事そのものが怪しい。プログラマティック広告についてどんなに一生懸命勉強しても、事実上『理解不能』だとわかった。私が広告主なら、そのことが気にかかるだろう」とスタインバーグ氏は語った。