マーケティングにとってデータの重要性は拡大し続けており、テクノロジー企業やブランド、広告代理店などが「データの合従連衡」を繰り広げている。電通と電通デジタルは7月上旬、電通の海外本社・電通イージスと協力し、データコンサル「Data2Decisions Japan」を設置した。
Data2Decisions(D2D)は2001年にロンドンで創業したデータコンサルティング企業。英イージスがD2Dを2012年に買収。電通が2013年にイージスの買収を完了し、電通海外ネットワークの電通イージス傘下になっている。電通は8月上旬にもデータマーケティング企業のマークルの株式過半取得で合意。米メディア報道によると買収額は15億ドル(1500億円)と言われ、同社がグローバルでデータに注力していることが伺える。
マーケティングにとってデータの重要性は拡大し続けており、テクノロジー企業やブランド、広告代理店などが「データの合従連衡」を繰り広げている。電通と電通デジタルは7月上旬、電通の海外本社・電通イージスと協力し、「Data2Decisions Japan(データ・ツー・ディシジョン・ジャパン)」を設置した。
Data2Decisions(D2D)は2001年にロンドンで創業したデータコンサルティング企業。英イージスが2012年にD2Dを買収した。電通が2013年にイージスの買収を完了し、D2Dは電通海外ネットワークの電通イージス傘下となっている。電通は8月上旬にもデータマーケティング企業のマークルの株式過半取得で合意。米メディア報道によると買収額は15億ドル(1500億円)と言われ、同社がグローバルでデータに注力していることが伺える。
「D2Dが実現するのはデータを収集し、分析し、施策を実施する、このプロセスすべてを助けることだ。顧客企業のマーケティング活動におけるROI(投資利益率)の最大化を目指す」と、電通デジタル・データアナリティクス事業部チーフコンサルタント、D2D Japanマネージングダイレクターの濱口洋史氏は語った。今回のD2D Japanの設置により、同社は12カ国にビジネス拠点を持つことになる。
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「顧客である日本企業はグローバル化している。ブランドのニーズはヒアリングしたところ、グローバルで一貫した分析アプローチ、ブランドマネジメントを行えることや、現状の解決策ではなく収益を増やす機会をグローバルに見つけることにある。我々はグローバルなデータコンサルティングを提供し、『日本で商品Aにマーケティング投資するか、北米で商品Bの投資するか』を比較できる。ローカルの事情が深く絡んだ課題でも、電通イージスのグローバル・ネットワークで解決できる」。
よりリアルなデータの粒
電通デジタルによるサービス提供は、電通本社よりも柔軟な対応が可能になると濱口氏は説明している。「D2Dのソリューションは広告費を減らすときに使われる。新興国市場は『広告を打てば売れる』という状況なので、データのアプローチはまだそこまで必要ない。経済が成熟した国ではどうやって効率的にマーケティングができるかというアプローチになる」。アジアだと豪州やシンガポールに拠点があり、経済成長が成熟している兆候が見える中国も視野に入っている。
多様なデータを重回帰分析など統計学的手法であるマーケティングミックスモデル(MMM)で分析する。「MMMは一説では米国で株主が『広告費ではなく配当を渡せ』と要求した際に、広告費の効果を示すために作られた」。D2D独自のMMMには気象条件、経済指標、オペレーション状況、ソーシャル、店舗での陳列の位置など従来型のマーケティング理論が無視するものを含んだ要素を含んでいる。個々の要素がどれだけ、KPI(近年はROIになることが多い)に関与したかを知り、将来的にどの要素がどれだけKPIをドライブするかを推測するという。
ただし、デジタル化の進展で粒が細かくなっている行動データを捉える新しい手段を用意しているという。「エコシステムモデリング」はMMMでとらえきれなかった、無数のメディア、インターネットプラットフォームのインタラクション(相互作用)で評価するという。広告主がアナログ―デジタルの多様なチャネルでキャンペーンを打っているとき、メディアはそれぞれ影響を与え合っており、それぞれがどのような役割を果たしているのかを推し量ることは難しい。
「エコシステムモデリング」では検索やホームページへのアクセス、ソーシャルメディア上での拡散など、売上に影響を及ぼす多様なファクターのインタラクションを明らかにするという。それぞれの要素が与える「影響」を数値化しており、よりエコシステムを理解できる。「これでもすべてが分かるとは言えないかもしれない。しかし擦りガラスの向こうで何が起きているかは分かる。施策を調整するには十分な解像度だ」と濱口氏は説明する。
どの国に投資すべきか、決められる
「価格の引き下げとテレビCMのどちらが効果的かを比較することができる。『過去と同じ投資効率を得るにはどれだけ広告投資をすればいいのか』もメディアの最適化もできる。日本の商品Aに投資するか、北米の商品Bに投資するか、をグローバル企業のヘッドクォーターで比較することができる」
「デジタルはあくまで『刈り取り』だという考え方の場合にはアトリビューションモデルを提供できる。業種によってはアトリビューションを利用する方がいいケースもある」と濱口氏は話している。デジタル上の行動データに関しては、Google、Facebookのような巨大プラットフォームがリードを築いているが、電通デジタル・データアナリティクス事業部アナリスト、D2Dプリンシパルコンサルタントの松田一樹氏は「ロンドンではプラットフォームとともにクライアントとお話をするという取り組みをしている」と語った。
D2Dのサービスはソフトウェアとコンサルティングにより提供される予定で、顧客側がカスタマイズできるプラットフォームの提供も検討している。D2Dのアジア太平洋地域でもさらなる拡大も視野に入れているという。
濱口氏は今後のサービス開発に関して、早く分析結果を算出できるかという短納期化への試みや、データの大きさが増大することに対応したITインフラ、クライアント自身が最適化等を行うことができるプラットフォームの提供などを目標にしているという。
Takushi Yoshida
Image via D2D