電通は17日、人工知能による広告コピー生成システム「AICO」(β版)を開発したことをプレスリリースで明かした。同社では、5年ほど前から次世代型広告に関する研究を行っており、その流れから、静岡大学情報学部で自然言語処理を専門とする狩野研究室(狩野芳伸准教授)と共同で、本システムを開発したという。
ついに人工知能は、広告クリエイティブの作成能力も手に入れたようだ。
電通は17日、人工知能による広告コピー生成システム「AICO」(β版)を開発したことをプレスリリースで明かした。同社では、5年ほど前から次世代型広告に関する研究を行っており、その流れから、静岡大学情報学部で自然言語処理を専門とする狩野研究室(狩野芳伸准教授)と共同で、本システムを開発したという。
このプロジェクトには、広告制作の実務に携わる電通のコピーライターも参加。人工知能の学習をサポートすることで、より人間に近いコピーの生成を可能にしたという。
Advertisement
電通のオウンドメディア「電通報」では、この発表に合わせて「AIコピーライター、AICOだよ。」という記事を掲載。プロジェクトに関わった、電通のクリエイティブディレクター・福田宏幸氏、電通のコピーライター・堤藤成氏、静岡大学の狩野芳伸准教授、およびAICOのダイアローグを紹介している。
すでに広告賞で実績
同記事によると、AICOはすでに、新聞協会広告委員会が主催する2016年度の「新聞広告クリエーティブコンテスト」に挑戦。1000以上におよぶ全応募作品のなか、「この広告のコトバは、人工知能が書きました。」という作品で、ファイナリストの16作品に選出されたという。
「この広告のコトバは〜」作成のためにAICOが参照したのは、青空文庫やことわざなど。それらに頻出する単語や言葉遣いを自然言語処理のアルゴリズムと掛け合わせて、複数のコピー案を作成したという。
そのようにして作成されたクリエイティブ案は、なんと2万案! そのなかから最終的に、福田氏・堤氏らが約500案をピックアップし、新聞原稿にまとめたという。
代表=堤藤成さん CD=福田宏幸さん AD・D=田頭慎太郎さん キャッチコピー・タグライン=堤藤成さん AIコトバ生成=狩野芳伸さん、谷口諒輔さん、島田渉平さん、福田宏幸さん 監修・プログラマー=狩野芳伸さん、谷口諒輔さん、島田渉平さん(新聞協会広告委員会HPから引用)
AICOのクリエイティブ
なお、堤氏は電通報で、AICOのコピー作品について、たまに笑えるものもあるけども、「ほとんどはまだぶっ飛び過ぎて使えないものが多い」と語る。その笑えるコピーの例として「コトバの パスタ ゆとりが はじまります。」、なんともいえない味わいがあるコピーの例として「コトバがソラマメに落ちた。」などを紹介していた。
ちなみに、上記作品のクレジットを確認すると、「キャッチコピー・タグライン=堤藤成さん」となっている。「この広告のコトバは、人工知能が書きました。」「人口知能と、人の知能で、ひらめきをもっと。」という、一番目立つコピー文言のクリエイティブは、その言葉通りの意味となっているようだ。
電通報によると、これに「調子に乗った」プロジェクトチームは、AICOとともに「宣伝会議賞」にも挑戦。個別のアルゴリズムを擁して、約100本のクリエイティブを応募したが、こちらは惨敗という結果になったようだ。
夢が広がる活用方法
先日DIGIDAYでは、米食品企業のドール(Dole)が、人工知能開発企業アドゴリズムズ(Adgorithms)によって作られたAI、アルバート(Albert)にすべての広告のバイイング、最適化、そしてプレイスメントを処理させたことを報じた。それと同様に、リスティング広告やネイテイブ型のプログラマティック広告なら、テキスト部分のクリエイティブをAICOに任せられるかもしれない。一度に2万通りのアイデアをひねり出せるAICOとアルバートがタッグを組めば、さぞかしA/Bテストも捗るだろう。
ちなみに、本システムの活用方法について、電通のプレスリリースでは「TPO に合わせてリアルタイムにメッセージを変化させることができ、インターネット広告や屋外・交通広告などでよりパーソナライズした次世代型の広告配信が可能」になるとしている。
Written by 長田真
Photo by GettyImages