「経営層へのアプローチも、『 CX 重視』で行くべきだ」:すかいらーく、グッドパッチ、サマリーのCX戦略

「顧客体験(CX/Customer Experience)」の重要性が認知されはじめたいま、経営判断をもとにCX戦略を練る必要が出てきた。

CXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」を運営するプレイド(PLAID)は4月17日、東京・虎ノ門ヒルズにて「CX DIVE」を開催。この1dayイベントでは、ブランドやエージェンシーをはじめ、さまざまな業界・業種から1000人以上が来場した。

そのなかで、経営視点を踏まえたCX戦略ついて議論が交わされたのが、Goodpatch(グッドパッチ)、すかいらーくホールディングス、サマリーポケットのエグゼクティブが登壇したパネルディスカション「経営者はCXをどう考えているか」だ。

「国内市場が縮小しているなか、いま求められているのはイノベーション」と、Goodpatch代表取締役社長/CEOの土屋尚史氏は、同セッションで語る。同氏は、UI/UXを中心に、はやくから国内において顧客体験の重要性を提唱してきた人物だ。「イノベーションに寄与するのが、顧客体験の向上だ。CXが注目されているのは、こうした背景がある」。

左から、グッドパッチの井上氏、すかいらーくの和田氏、の山本氏

左から、グッドパッチの土屋氏、すかいらーくの和田氏、サマリーの山本氏

   

感覚的な要素とデータのバランス

CX向上に欠かせないのが、データの活用だ。すかいらーくホールディングス 取締役常務執行役員 CMO 兼 CTOを務める和田千弘氏は、「飲食業界は、他業界に比べてデータ活用が遅れていたが、最近ようやく具体的な取り組みが見られはじめている」と語る。すかいらーくも、同氏が社外取締役としてジョインした(現在は社内取締役として、CMOとCTOを兼務)2018年から、店舗を中心にさまざまなCX向上施策を打ち出してきた。

そのひとつが動画分析だ。一部の店舗に専用のカメラを設置し、店舗滞在時間や、空席や配膳を待つ顧客の様子を動画にして記録。これを分析し、テーブルの配置や装飾など、店舗のレイアウト改善に活かしているという。「ベーシックな手法ではあるが、顧客が店舗内のどこで不快感を覚えるのか、逆にどこで喜ぶのかといった、エモーショナルなデータを集めるには、非常に効果的な手段だ」。

また、同社では商品すべてのNPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向を知るための指標)の取得も、アンケート形式で実施。それらを商品開発に活かすだけでなく、店舗体験の改善にも活かしているという。「商品は基本、どの店舗でも同じものを提供しているので、店舗ごとの差分を見れば、どの店舗がより良い体験を創出できているかを可視化することができる」。

その一方で、「CX向上を、データにすべて頼るのは危険だと思っている。感覚的な要素と、データのバランスが大事だ」と、サブスクリプション型の収納サービス「サマリーポケット」を提供するサマリーのFounder&CEO、山本憲資氏は語る。これに対し、すかいらーくの和田氏は「それは非常に重要なポイント。たとえば我々も、アプリのUI/UXデザインを決める際には、データに基づいた、機能としての使いやすさに加え、どれだけ顧客のエモーションを動かせるかというテストも実施するようにしている」と応えた。

インハウス化の推進

すかいらーくのこうした取り組みを支えているのが、11人のデータアナリストと、10人のデザイナーからなるインハウスチームだ。また、エンジニアに関しても、今後内製で開発が実施できるように組織作りを進めていくという。

グッドパッチの土屋氏は、「デザイナーやデータアナリストなど、特にプロダクト改善に関わる人材の内製化は、顧客体験の向上や、改善を推進するのに欠かせない」と続ける。「ことデザイナーに関しては、海外ではすでに社内にデザイナー組織を設ける企業が出てきている。日本にもその波は来るだろう」。

デザインという視点から、これまで多くの企業のCX戦略をサポートしてきたグットパッチでは、現在クライアント支援のほか、デザイナー特化型のキャリア支援サービス「ReDesigner(リデザイナー)」を展開。インハウスデザイナーの紹介や育成にも取り組んている。

「だが、顧客体験が重要視されるようになった昨今、プロダクトの企画段階から、デザイナーが関わる状況を、企業内で整備することが必要だ」。

経営層へのアプローチもCX重視

データや感覚に基づいた顧客体験の向上や改善、そしてインハウス化も、CX向上には欠かせない。しかし一般的に、経営層からなかなか理解が得られず頓挫してしまう。こんなケースも少なくない。グッドパッチの土屋氏は「経営層の多くは、むしろ現場よりもCXの重要性に気付いている。だが、いざ実施するとなると、投資対効果などの具体的なイメージがつかず、尻込みしてしまうケースが多いようだ」と語る。

では、いかにイメージを経営層に伝えれば良いのか。こうした課題に対し、すかいらーくの和田氏は、「施策のイメージを、参加者も書き込めるようなラフなイラストにして説明する」のが効果的だと語る。実際同氏は、経営層とのミーティングにはこの手法を用いているという。

と和田氏

「自分が『参加している』という意識が納得感に繋がる」と語る和田氏

   

「会議やミーティングでも、ただストレートに提案を伝えるのではなく、どのような体験をすれば、経営層に納得感を持ってもらえるかを考えなければならない。経営会議も、CX重視でいくべきだ」。

Written by Kan Murakami
Photo by CX DIVE