いわゆる「大退職(Great Resignation)」が多くの雇用主に迫るなか、彼らは人材を保持するだけでなく、企業文化を維持することも求めている。少なくとも、オランダのクリエイティブ・エージェンシーTBWA\NEBOKOの場合はそうだ。同社マネージングディレクターのパトリシア・パーラドシング氏に訊いた。
パンデミックが人々の働き方を変えてからほぼ2年が経過したが、企業やエージェンシーは今も、新たなスタンダードに向けて最善を尽くしている。仕事の未来が形づくられ続けるなか、マーケティング・広告代理店たちは何がうまくいくかを見極めるための試行錯誤を繰り返しているように見える。ハイブリッド勤務やロケーションモデルを活用する実験から、同僚とのミーティングを促進する会社主催の旅行まで、何がうまくいくかを見るためにあらゆることを試みている。
いわゆる「大退職(Great Resignation)」が多くの雇用主に迫るなか、彼らは人材を保持するだけでなく、企業文化を維持することも求めている。少なくとも、オランダのクリエイティブ・エージェンシーTBWA\NEBOKOの場合はそうだ。マネージングディレクターのパトリシア・パーラドシング氏によると、対面形式でのコラボレーションのためにオフィスに戻るのが最善の方法だという。
米DIGIDAYは最近パーラドシング氏に、オランダで部分的なロックダウンが再開されているなかでの対面勤務への復帰と、彼らの企業文化において「メンターシップ」がどのように結びついているかについて話を聞いた。
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以下、会話内容に読みやすさのために軽く編集を加えてある。
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――会社文化にエネルギーを再び注ぐためのあなたのアプローチについて教えてほしい。なぜ対面形式の勤務を選んだのか、そしてどのようにしてその結論に達したのか?
特に若手には学ぶ必要があるので出社して欲しい。彼らはガイダンスとコーチングが必要だ。そこで、我々の文化に触れてもらうために、若い社員とシニア職の社員に一緒に来てもらうことにした。私たちはかなり規模拡大をし、ロックダウンしているあいだにも多くの新しい人材が入ってきたが、彼らはこのエージェンシーの文化を知らない。エージェンシーの文化は、一生懸命働くだけでなく、熱心に遊ぶことでもある。最近では、みんな家にいるので、「熱心に遊ぶこと」は本当に困難だった。もちろん、バーチャルでのハッピーアワーもやったが、それは一緒に働いている人たちのエネルギーを直接得たり感じたりすることとはまったく違う。今のところ、その点がリモートで作業するうえでもっとも難しい。どのように適応し、人々、特に新しい人々に文化を与えるのか、という問題だ。
文化の大部分はエージェンシーのエネルギーだ。私たちは本当に人を中心としたビジネスをしている。仕事を得られるような企画提案は、壮大でクリエイティブなアイデアを思いつくことではない。ポイントは人と人との相性にある。お互いに(同じ空間に)いないのであれば、それは本当に厳しい。私たちは対面で会うためだけに人々をオフィスに招待したりもした。希望する人はマスクをしてもらったうえで、本当に重要なのはエネルギーを感じることだ。私自身についても学んだことがある。私は画面上でのやり取りがあまり得意ではない。人々には私のエネルギーを感じてもらう必要がある。企画提案をするとき、クライアントは私のエネルギーと熱意を感じる必要がある。なぜならクリエイティビティにはエネルギーが必要だからだ。
――スタッフとの会話にどのように取り組んでいるのか? 彼らはオフィスに戻る準備ができているか?
私たちは人々に自由な選択を与えているが、なかには非常に(コロナウイルスを)恐れている人もいる。オランダでは、予防接種を受けているかどうかを聞くことができない。私たちはオフィスに来たい人は来てもいいよ、と伝えた。オフィスに来る際は各自コードをスキャンしなければならない。それによって、誰がオフィスにいるかがわかる。私たちは、ちょうど「ソフトな(オフィスの)オープン」をした。私たちは、誰がオフィスに来たか、誰が来なかったかモニタリングした。人は私たちの仕事の本質であり、そのためにも私たちは1対1の会話を持った。私たちは従業員が必要であり、それだけでなく彼らの動機、願望、障壁が何であるかを理解する必要がある。なぜ彼らはオフィスに来ないのか、オフィス勤務をしてもらうには何を私たちは提供できるのか?
――ということは、(オフィス勤務)は要件というよりも、提案のようなものか? オフィスにやって来るスタッフに対するCOVID-19予防対策はあるのか?
私たちはオランダ政府の規則に従った。だから、政府が家で仕事をするように、と言っているときは、みんな家にいることを勧める。私たちが従業員に伝えているのは、(自宅勤務が続いて)精神的に調子が良くない場合は、オフィスに来ても構わない、私たちが支援する、ということだ。来てくれれば、ほかの人々と繋がる支援をし、上司と一緒に外を歩く機会を作り、一緒にコーヒーを飲んで帰宅することができる。今の状況は本当に難しい。
私たちはただ、人々が快適に感じられるようにしたかった。私たちは、人々にオフィスに来るように義務付けるべきではないと思う。若手のスタッフたちには、エージェンシーの雰囲気を感じるのは良いことだから、是非オフィスに来てみると良い、と言っている。そしてシニア職のスタッフたちには、もし会社に若手がいたら、オフィスに来て、ガイダンスを与え、支援をし、コーチングをしてくれと頼んだ。
――多くの調査結果で、ほとんどの従業員が柔軟な職場環境を望んでいることがわかっている。企業文化を維持するための答えが対面での仕事形式だ、と自信を持って言えるのはなぜか?
私たちは良いエネルギーを持っているクリエイティブエージェンシーだ。クリエイティブである必要がある場合、人々は物理的に一緒にいるときにより良い結果が得られると感じる。建物の目的も変わる。人々と交流し、クリエイティブな制作を行い、コーヒーを飲むために人々はオフィスに来る。パワーポイントのスライドを作ったり、社内プロジェクトの作業を行う必要がある場合は、自宅で行う方が効率的だ。しかし、クリエイティブとつながりのために、彼らはオフィスにやってくるだろう。(そのためであれば)人々は実際に、オフィスにやって来て働くのだ。
KIMEKO MCCOY(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)