今年は、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つための施策が敷かれたまま、年末を迎えた。12月の中盤といえば忘年会だが、それも今年はすっかり鳴りを潜めている。代わりに、企業はZoomで祝杯をあげ、従業員の自宅に「お歳暮」を送り、場合によっては、誰からも一番歓迎される贈り物、「特別休暇」を進呈している。
メディアやエージェンシーで働く者たちの肝臓よ、喜べ。2020年の年末、かの恐るべき忘年会攻勢は訪れぬであろう。
今年は、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つための施策が敷かれたまま、年末を迎えた。12月の中盤といえば、例年なら大量の酒をあおる贅沢な(そしてときに危険な)忘年会シーズンたけなわだが、そんな年の瀬の風物詩も今年はすっかり鳴りを潜めている。代わりに、企業はZoomで祝杯をあげ、従業員の自宅に「お歳暮」を送り、場合によっては、誰からも一番歓迎される贈り物、「特別休暇」を進呈している。
Zoom活用するパブリッシャー
ボックスメディア(Vox Media)とBuzzFeedは、大規模なオフィスパーティを見送り、チームごとの小さな集まりをZoomで開くことにしている。ボックスでは部門横断的なチームがバーチャルパティ開催のためのヒントや提案を集め、手引書を作成した。メレディス(Meredith)は、全社的な納会をZoomで開く予定で、同社の広報担当者によると、その場で各部署の業績を称えるという。ビジネスインサイダー(Business Insider)では例年、年の瀬になるとオフィスをホリデー仕様に飾りつける。今年は、手品の得意なコメディアンを司会にすえて、オンラインパーティを開催し、抽選で賞品を配るなどするという。
Advertisement
今年、メディア企業はさまざまな変化と適応を迫られたが、ある意味、例年とは異なる納会や忘年会もそのひとつと言えるだろう。同時に、リモートワークがより一般的な働き方として定着しつつあるなか、メディアやエージェンシーが来年以降も直面するであろうより大きな課題の一端でもある。
「従業員たちは常よりも深い孤立感を感じている」。そう指摘するのは、職場文化の改善を支援するコンサルティング会社、パーパスフルカルチャーグループ(Purposeful Culture Group)のS・クリス・エドモンズ最高経営責任者(CEO)だ。「1年のこの時期、どの企業も従業員の努力を称えたくなるようだが、私に言わせれば、従業員への謝意を表すのに、慌ただしい感謝祭を待つ必要などない」。
体験を贈るエージェンシー
年末のパーティはたいてい1日限定で行われるが、今年は何日かに分けて開催する企業もあるようだ。
たとえば、毎年ホリデーシーズンの社内パーティに全力を傾けるマーティンエージェンシー(Martin Agency)の場合、昨年はバンドを雇い、野外テントをレンタルし、オフィス内の各フロアにそれぞれ異なるテーマを設け、従業員とその同伴者にカクテルを振る舞った。同社は今年、もう少し体験型の催しを予定している。
今週を皮切りに、マーティンエージェンシーの従業員たちには箱入りのギフトが贈られる。チーフカルチャーオフィサーのカーミーナ・ドラモンド氏によると、中身は同社の仕事と価値観を反映するもので、経営陣の面々が選んだという。12月の数日を「マーティンの日」に定め、贈り物の箱をひとつずつ開けていく。そして12月10日には、全従業員がZoom経由で集まり、「ミステリーギフト」を開封する趣向という。
ドラモンド氏は、まだギフトボックスを受け取っていない従業員がいるとして、中身の詳細については明かさず、ただ「すばらしい会話、インスピレーション、楽しくて役に立つもの、私たちが私たちであることの喜びのようなもの」とだけ語った。
今年の年末にかぎらず、ホリデーシーズンに感じるストレスを、贈り物のヒントにする企業もある。たとえば、エージェンシーのディマッシモゴールドシュタイン(DiMassimo Goldstein)は、今年は従業員の多くが帰省を控えることから、全員に「七面鳥手当」を支給した。また先週には、クライアントが提供するオンラインフィットネスや体重管理のアプリなどを無料で利用できる「コロナ禍中の年末年始を健康に過ごすためのメンタルヘルス救急セット」を配布した。
年末の福利厚生は「投資」である
このまま、オンラインパーティが対面でのパーティに恒久的に取って代わることは考えにくい。いずれ誰もが安全に顔を合わせられる日々は戻るだろう。それでも、従業員の働きを正しく評価しようという傾向が強まれば、今後、彼らに対する謝意の表し方も変わるのかもしれない。
多くのエージェンシーが悪戦苦闘した今年、マーティンエージェンシーは新規のクライアントを獲得し、利益を出した。この業績にかんがみて、同社は今年最後の2週間を休みにするという。
今後、より多くの企業が、贈答品であれ特別休暇であれ、年末年始の福利厚生を「投資」として再検討することを迫られるだろう。エドモンズ氏いわく、「どんな文化も、投資なくして恩恵はない」。
[原文:Care packages replace canapés as Coronavirus cancels media holiday party extravagances]
MAX WILLENS(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)