経営コンサルタント企業は、広告主とメディアエージェンシーのあいだで生じた信頼問題をチャンスと捉えている。広告購入よりもプランニング予算に重きを置きはじめている数々の広告主のプロジェクトに、強引に割り込もうとしているようだ。
経営コンサルタント企業は、広告主とメディアエージェンシーのあいだで生じた信頼問題をチャンスと捉えている。広告購入よりもプランニングに予算の重きを置きはじめている数々の広告主のプロジェクトに、強引に割り込もうとしているようだ。
昨今、メディア業界で透明性が欠如していることに対するわだかまりが強くなった。結果としてマネジメントコンサルタント企業の役割が大きくなり、マーケターの予算の使い方に手を貸すようになっている。
クライアントたちの需要
アクセンチュア・インタラクティブ(Accenture Interactive)のマネージングディレクター、ジョイディープ・バータチェリア氏によると、ここ数カ月のあいだにクライアントの多くが広告購入の進め方について手助けを求めてきているという。
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「クライントからのリクエストとしてよく聞くのは、『彼らが予算効率を上げるために、(メディアプランニングの)プロセスの透明性をもっと高くするにはどうすればよいのか?』というものだ」と、バータチェリア氏は語る。
結果として、アクセンチュア・インタラクティブのクライアントのいくつかはディスプレイ広告を出すかわりに、ターゲットを絞り込みやすい検索・動画広告に移行しはじめている。クライアントがデジタル広告への予算の使い方を見直しているということは、FacebookやGoogleがより戦略的なパートナーシップの育成に力を入れているのと同じことだ。そしてバータチェリア氏はこう付け加えた。「彼らは業界のキープレイヤーであるが、一方でクライアントがメディアに予算を費やした結果が悪かった場合、効率化のためにほかのサプライヤーに取って変えられてしまうだけだ」。
消費財メーカーのP&G (プロクター・アンド・ギャンブル)やユニリーバ(Unilever)も、2017年の直前の四半期で同様のことを行なった。メディアレーダー(MediaRadar)によると、P&Gは1月から5月までのあいだに978のサイトで広告を打ち出したが、これは2016年の同時期と比べて33%減少している。ユニリーバも同様に1月から5月までのあいだに540のサイトに広告を打ち出したが、2016年の同時期と比べて11%減少している。
それぞれの立場からの見方
マネジメントコンサルタント企業によれば、「なぜ広告がおかしなところに掲載されているのか」という疑問をもつマーケターが増えれば増えるほど、こうした広告の減少傾向は変わらず続くだろうということだ。ハイネケン(Heineken)はこうした懸念を払拭するために自前のアドサーバーとデータ管理プラットフォームを構築しているし、ホンダはこうした業務を独自のRPA(Robotic Process Automation:機械学習、人工知能等を活用した業務の効率化・自動化の取り組み)に任せている。
アクセンチュア・インタラクティブやデロイト・デジタル(Deloitte Digital)、そしてPwCもまた、CMOに対して同様のアプローチを取れば、メディアを購入する巨大なメディアバイイング・エージェンシーにとって大きな妨げとなって不利益を生むようなことはないと強調している。ブランドがもつ予算によって、プレミアムなプログラマティックの立ち上げに懸命に取り組むアクセンチュア・インタラクティブと、透明性に問題を抱えた業界で「客観的なメディアバイヤー」として自身の立ち位置を構えようとするデロイト・デジタルがいるなか、メディア取引業務のコンサルタント企業への委託は、少なからずプランニングの主要な部分を担っている。彼らは、広告主がメディア戦略、メディアの購入、そしてメディアの有効性について考えるときのより処になろうとしているのだ。
マーケターにアドバイスを行うメディアマネジメント企業、IDコムス(ID Comms)は、コンサルタント企業がグローバル及びローカルな広告主への提案や、ときにはメディアへの売り込みを行いながらプロジェクトの中心に入り込んできていることに気づいている。IDコムスは、こうした企業はメディアエージェンシーとしての役割を超えてしまうことで、広告主に対する指示にブレが生じる可能性があるという。
コンサル企業側からの反論
しかし、PwCのサム・トムリンソン氏によると、プロジェクトにおいてPwCの役割について微妙な相違が生じているという。「コンサルタント企業がメディアエージェンシーの畑を荒らしていると捉えられることが多いが、デジタル戦略に特化するならば、同じエージェンシーが我々コンサルティングの専門分野に土足で踏み込んできていると捉えることもできるのではないだろうか」。
デジタル出資を精査・吟味することで、PwCが「メディア・アシュアランス」とも呼んでいる監査業務を促進できる機会を得ることができる。2017年はじめにブランド棄損問題に関わるスキャンダルが起きたあとから、PwCはこうした監査依頼の増加を目の当たりにしてきた。
「CMOにとって、リベートは見落とせない大事なトピックだが、おそらく現在の大きな心配の種は、デジタル広告がちゃんと見られるべき人に届いているか、閲覧基準を満たしているか、そして広告がどんな種類のコンテンツの横に表示されているのか、ということだろう」と、トムリンソン氏は述べる。
「近しい友人のような存在」
ここしばらくのあいだ、エージェンシーの持ち株会社はビジネスモデルを、冷酷なまでにコモデティ化されたトレーディングバジェットから、より質の高いプランニングブリーフに変えようとしている。これはマネジメントコンサルタント企業も、これまで取り組んできたことであり、激しい競争から一歩抜き出るために、さらに力を入れはじめている部分だ。調査機関のコンバージェンス(COMvergence)による2017年8月までの調査で、アメリカにおける42のピッチのうち16のピッチが独立した。これらの16のアカウントの出費の合計額は20億ドル(約2200億円)以上に達した。
アクセンチュア・インタラクティブ、デロイト・デジタルやPwCのような企業は、広告主に対して効率性や商業的価値、ユーザーの興味やインベントリの品質といった案件に関するアドバイスを行う機会が増えている。彼らが強調しているのは、コンサルティング業務と比べて利ざやの小さい、メディアへの出資・運営に携わろうとしているわけではない、ということだ。
「現在こうした類のサービスにおいて、クライアントはデロイト・デジタルのようなコンサルタントに頼るケースが増えているが、これは我々が『熱意あるビジネスに命を吹き込む』ことを究極のゴールとした、あらゆる商品を取揃えたワンストップショップだからだ」と、デロイト・デジタルのCEO、アンディ・メイン氏はいう。「我々はメディアバイイング業界にとって脅威ではなく、むしろ近しい友人のような存在だといっても差し支えない。なぜならこの業界の助けとなる、ブランド再生のような大きなビジネス転換の計画に携わっているからだ」。
Seb Joseph(原文 / 訳:Conyac)
Image courtesy Accenture Interactive