コンサル企業、カンヌを占拠:エージェンシーは撤退ムード

カンヌライオンズでは、毎年、やり玉に挙げられる参加者が変わる。まずはクライアント、続いてメディア企業、次がアドテク企業で、その次がメディアエージェンシーだった。今年はどうやらコンサルタントの年になりそうだ。

コンサルタント各社は今年、6月18日に開催するカンヌライオンズにおいて、巨大なインパクトを残す準備を整えている。コンサルタントは明らかに、昨年もかなりの存在感を示しており、そんな彼らの積極的姿勢は、従来のエージェンシーたちのそれときわめて対照的に映る。後者はこれまでの姿勢を見直し、人員を削減し、豪華な宴も控えるところが多いばかりか、参加自体を見送るところまであるからだ。カンヌライオンズのオーガナイザー、アセンシャル(Ascential)は昨日、投資家らに対し、多くのアドエージェンシーが参加を見合わせており(たとえば、ピュブリシス・グループ[Publicis Groupe]も不参加を表明した)、「難しい取引環境」になることが予想される、と語った。

勢い増すコンサルタント

エージェンシーが一斉に後退する一方、コンサルタントは勢力を増している。IBM iXはクロワゼット通りに、昨年の倍の広さを誇るカバナ(客室から直接ビーチなどに出られるホテルの客室)を押さえており、そことメイン会場パレの2箇所で商談を行なう。アクセンチュア・インタラクティヴ(Accenture Interactive)も過去最大の年にしようと意気込んでいる。10人のシニアエクゼクティブを現地に送り込むとともに、クルーザー上でいくつもの会合とパーティを開き、カンヌハーバーを独占するつもりだ。彼らはまた、ほぼ全カテゴリーに審査員を配し、作品のエントリーもしている。さらに、カンヌのステージにも上がり、パレでセッションを6回開催する(そのひとつが、同社マネージングディレクター、アナトリー・ロイトマン氏とピュブリシス・グループのグローバルチーフクリエイティブにして、現地入りするピュブリシスの代表のひとり、ニック・ロウ氏との対談だ)。

今年はカンヌに昨年の倍額を投資すると、ロイトマン氏は語る。昨年、アクセンチュアはメレディス・エクセレレーテッド・マーケティング(Meredith Xcelerated Marketing)、ジナーシュラーダー(SinnerSchrader)、クリアヘッド(Clearhead)、モンキーズ(The Monkeys)など、複数のエージェンシーを獲得しており、今回の焦点は、クリエイティブ同士、そしてクリエイティブとクライアントとの顔合わせだという。

「我々が現地入りするかどうかは、話題にすら上らなかった」と、ロイトマン氏。

大きく様変わりするカンヌ

業界は実際、大きく様変わりしようとしており、コンサルタント会社がカンヌで存在感を増す一方、多くのエージェンシーが消極的姿勢を見せている現状は、その象徴と言える。世界有数のエージェンシーコングロマリット、ピュブリシスは昨年、AIプラットフォーム、マルセル(Marcel)の開発をはじめとする、ほかの収益源にフォーカスするとして、カンヌへの参加見送りを公式に発表した。従来型のエージェンシーは総体的に、マージンの減少に歯止めが効かないなか、収益減を発表している。

一方、コンサルタント会社にしてみれば、これは「リセット」不要の状況だと、デロイト・デジタル(Deloitte Digital)のCMOであるアリシア・ハッチ氏は言う。ハッチ氏が今年のカンヌに送り込む人員は70名。主眼はアソシエーション・オブ・ナショナル・アドヴァタイザーズ(Association of National Advertisers)と共同で、複数回開催するCMOラウンドテーブルで、シニアエグゼクティブを集め、コンテンツクリエーションとインハウスエージェンシーの台頭について語り合わせる。「私たちは未来しか見ていない」とハッチ氏。「業界が変わっていくなか、カンヌも変わろうとしている。私たちにしてみれば、それはそれで構わない。『参加を見送るか?』よりむしろ、『どこにフォーカスするか?』を考えればいい」。

デロイトはマジェスティックとカールトンを1室ずつ押さえており、昨年に続いてヤング・ライオンズ・スクール(Young Lions School)を後援し、今年はゲストスピーカー用ラウンジにも出資している。

控え目なエージェンシー

対照的に、エージェンシー側の動きは明らかに控え目だ。たとえば、情報筋によれば、オムニコム・メディア・グループ(Omnicom Media Group)のOMDはオアシスのカバナを取り止め、人員も昨年の半数に減らすなど、規模の縮小に踏み切った。

「2017年の状況に鑑み、摩耗を回避するため、縮小を決めた」とOMDのCEO ジョン・オズボーン氏は言う。「今年は、クライアント個々の関心や優先事項とより密接に結びついた経験のキュレートにフォーカスする。現地のマンパワーを抑えられる一方、弊社のクライアントにはこれまでどおり価値を提供できる戦略だ」。

オグルヴィ(Ogilvy)も同じく派手な振る舞いを控え、人員を減らし、パーティ中心ではなく、会合や対話に主眼を置くという。「以前とは存在感の示し方を変える」と、同社の代表は言う。Jウォルター・トンプソン(J. Walter Thompson)主催のビーチにおける金曜の夜会をはじめ、いくつかの主要パーティも今年は開かれない。

エージェンシーたちの本音

昨年のフェス現場にいたあるエージェンー幹部は、縮小に向かうこの流れの一因はピュブリシスにあると指摘する。同社の不参加が報じられると、安堵のため息がはっきり聞こえたという。「誰かが先に動いてくれて、それでほかの連中も、自分たちも手を引いていい、というお許しをもらえた気がしたんだ」。

「撤退が毎回大きく報じられるなか、これまでの結果を受けて、『本当に重要なものは? 私たちがカンヌで得ようとしているものは?』と、業界がついに声を上げた。それは間違いない」と、360iの社長であるアビー・クラーセン氏は語る。彼女が今年のカンヌに送る部隊も少人数であり、これは同社が以前から執っている方針に沿ったものだ。「エージェンシーはどこに投資するかの選択に基づいて内部チームにメッセージを送る。カンヌは値が張る。盛大なパーティを開き、有名セレブを招くには多額の費用がかかる。そして当然、そのお金は技術者や技術、育成開発への投資といった、ほかの目的には使えない」。

Shareen Pathak(原文 / 訳:SI Japan)