GoogleとFacebookの2社で米国のデジタル広告市場でデュオポリー(2社による独占)を敷いていると言われる。特に2社で市場の成長を独占していて、その他の媒体社、アドテクなどは「マイナス成長」だという衝撃的な推計が議論の的になった。これについて統計や分析手段をめぐって議論がされているが、さまざまな意見を調べた結果、デュオポリーはおおむね間違いなさそうだ。
GoogleとFacebookの2社で米国のデジタル広告市場でデュオポリー(2社による独占)を敷いていると言われる。特に2社で市場の成長を独占していて、その他の媒体社、アドテクなどは「マイナス成長」だという衝撃的な推計が議論の的になった。これについて統計や分析手段をめぐって議論がされているが、さまざまな意見を調べた結果、デュオポリーはおおむね間違いなさそうだ。
米国のデジタル媒体社の団体「デジタルコンテントネクスト」のジェイソン・キント氏は11月初旬、IAB/PwCがまとめたインターネット広告リポート(2016年上半期)とGoogleとFacebookの決算を比べて、以下のような推計を出した。
Googleが市場成長の60%、Facebookが40%を占める。「その他」の成長シェアが前年同期比マイナス3%に陥ったと主張するキント氏の図
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これがもとからある「デュオポリー説」に関する議論に火を付けた。飛び交ったさまざまな推計、主張をまとめた。
― キント氏はGoogleが市場の成長の6割、Facebookが4割に達しており、「その他」の成長シェアは−3%だと主張した。
― この推計のもとになったリポートに携わったデイビッド・シルバーマン氏は統計とGoogle、Facebookの決算結果を比べても正確な指標を得られないと指摘した。
― ピボタルリサーチのアナリスト、ブライアン・ウィザー氏はキント氏と同じアプローチでGoogleとFacebookの2社で2016年のデジタル広告市場の成長のほぼすべてを占める、「その他」はマイナス5%と主張した。
― 今春、モルガン・スタンレーのアナリスト、ブライアン・ノバック氏は2社がデジタル広告市場の成長の85%を取り込んでいると指摘していた。
― Zenith Media、Magna Globalも2社は成長の85%から100%を取り込んでいると指摘
― 米DIGIDAYのロス・ ベニス記者は市場のロングテール(少額の売上)が含まれていないことを指摘。会計上異なる項目を比較している可能性にも言及した。
昨年末までにベンチャーキャピタルがアドテクとデジタルメディアへの投資をストップしていることや、GoogleとFacebookの広告収益が拡大を続けていることなどは「デュオポリー説」を支持する要因とみることができる。
ユーザー数、データ量、専売的なプラットフォームを勘案すると、2社が強いのは間違いがなさそうだ。
日本でも同様の粗い比較を試みると、電通の「2015年日本の広告費」では、インターネット広告媒体費は9194億円。ヤフージャパンの決算報告書によると、2015年の広告事業にあたるマーケティングソリューション事業の売上高は2773億円で、市場の30%程度を占めることになる。その他の部分はGoogleの日本での売上高がどの程度なのか、などによるところだ。デジタル広告市場の概況については日本の方がある程度透明性が低いかもしれない。
Written by 吉田拓史
Photo by William Warby(CreativeCommons)