THE CONFESSIONS

「 ワクチン 接種の有無を尋ねるのは、適切なのか? 」:ある動画プロデューサーの告白

米国人の半分以上が新型コロナウィルスのワクチン接種を受けられることになる日はそう遠くない(保留となっていたパンデミック対応が、ジョー・バイデン新米大統領の政権下で変わろうとしている)。従業員がワクチンを接種するというオプションを持つようになれば、共有ワークスペースへの復帰がどのようなものになるか、議論が巻き起こりそうだ。

ワクチン接種者と非接種者とで感染に違いが出るかが不確かなことに加え、ワクチンの接種そのものに関する従業員の安心感のレベルによって、状況はさらに複雑になるだろう。このことは、従業員をオフィスに復帰させるにあたって、現実的な対応に影響を与える可能性がある。

安全の保証がないなかで共有の労働環境に戻ることに労働者の多くは不安を感じていると、人材ならびに労働力管理ソリューション企業UKGの労働力研究所(The Workforce Institute)でエグゼクティブディレクターを務める医学博士のクリス・ミューレン氏は述べる。

「その理由の多くは雇用主との信頼関係に起因している」と、ミューレン氏はいう。

従業員の52%は、パンデミック前よりも現在の組織のほうが信頼度が高くなっていると報告しているが、UKGが2020年12月に発表した4000人の従業員を対象とした調査によると、38%の従業員が、収益よりも従業員の利益を優先させる組織を信頼しないと回答している。

匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、デジタルメディア企業のコーディネートプロデューサーから、パンデミックのさなかにおける動画監督としての作業について、そしてチームの全員がワクチンを接種したあとの仕事内容について語ってもらった。

なお、以下のインタビューは内容を明瞭にするため若干の編集とまとめを行っている。

◆ ◆ ◆

──通常どれくらいのプロジェクトを抱えていて、そのうち現在、直接撮影している本数は?

私は通常、一度に少なくとも6つのプロジェクトに関わっていて、そのうちの90~95%はリモートで撮影されている。月に1~2本は直接撮影に出向くが、本当に少ない人数のスタッフ、たぶん3~4人で、全員が事前に検査を受けて行っている。料理シリーズは私が監督し(直接撮影し)ている。キッチンが必要だし、少し質の高いコンテンツを制作しようとする我々の取り組みでもある。

オフィスのなかにスタジオがあり、これもいいことだと思う。きちんと清掃して清潔にされていることがわかるからだ。社内スタッフは全員、常に検査を受けるようにして、健康管理をしている。全員がすでに一緒に働いているので、セットに入る人数も制限できる。

──ワクチンが広く流通するようになったら、仕事の仕方はパンデミック以前のように戻ると思うか?

ずっと考えているが、ワクチンが完全に普及しても、検査や清掃など、安全を確保するためのプロトコルをすべて実施することになると思う。セットがどれだけ汚れているかを考えたところで、私の見方は変わった。リスクを冒す理由はない。

ウイルスが根絶されたとしても、元の状態に戻るとは考えられない。学んだ事は忘れない。セットのなかで考え直したこともある。たとえば、控え室に多くの人を詰め込む必要があるのか? (ケータリングサービスを)皆で分け合う必要があるのか? などだ。十分に注意をしつつ、まずは下調べをして、すべてが安全であることを確認してから、ゆっくりと(直接撮影の追加を)していくことになるだろう。スケールアップするときと同様、またスケールダウンしなくてはならないときにも、コスト面で大きな影響が出るからだ。

──直接撮影の場合と比べて動画の質が落ちてしまうことを考慮したうえで、これまで行ってきた程度にリモート制作を続けることは可能か?

デジタルメディアの世界では、(リモート制作を続けることは)間違いなく理にかなっていると思う。商業の世界とテレビの世界では話が違う。彼らには(リモートで)質の高いコンテンツを制作するという選択肢はないが、デジタルの世界では、非常に理にかなっていると思う。

──コスト面での大きな影響、とはどういう意味か?

(リモート撮影と直接撮影とではかかるコストに)大きな違いがある。タレントにいくら払うかによるが、ドロップキットを使ったリモート撮影の場合、基本価格として、総費用は5000ドル(約52万円)くらいだろう。直接撮影で、スタッフを追加している場合は3万ドル(約315万円)になる。

(新型コロナウィルスの)テストにかかる費用は予算の20~30%だ。全員を一斉に検疫しなければならないとしたら、また別のコスト面での大きな影響が出る。感染対策責任者がセットに入らなければならないし、撮影の前後に清掃をしなければならない。終わることなく、こうしたことが積み重なっていくに違いない。

──ワクチンをまだ接種していない、あるいはワクチンを接種したがらない従業員より、接種済みの従業員をスタジオに戻すことを優先すると思うか?

ワクチン接種の有無で人の雇用を決めることが法的に正しいかはわからない。でも、そのあたりの話をすることはどうなのか? ワクチンを接種したかどうかを尋ねることは適切だろうか? この件について、いま誰かと話したり、尋ねたりするのは少しタブーのような気がする。

特にディレクターはセットにいる必要がないので、多くがリモートで電話をかけ(続け)てくると思う。しかし、セットのなかには、(カメラを操作する人間など)明らかにリモートではできない役割もある。

私がいつも話している最大のことは、たくさんの計画や、多くのお金と思考を検査に費やし、現在の米疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインの下で我々が活動していると確認されているということだ。ときには、(検査をするときに)時間的なズレが出ることもある。撮影に入る2日前に検査を受けてもいいし、現場に向かう車のなかで検査を受けてもいい。だが、検査後に陽性とわかるまでには時間がかかる。「あなたは安全」というような、白か黒かの線引きはない。

──できるようになったらあなた自身もワクチンを接種するか?

まだ決めかねている。難しい状況だ。身近にいる人々、特に、家族や友人が安全であることを確かめたい。周囲の人の安全の確保が私にとって最大の要因だが、難しい決断であることに違いはない。無私の決断になることは間違いない。

[原文:‘We’ll never go back to the way things were’: Confessions of a producer on in-person shoots

KAYLEIGH BARBER(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:長田真)