この先もしばらくは在宅勤務が続きそうないま、ジェンダーロール[性差による役割分担]の均衡が大きく崩れ、ワークライフバランスは完全に崩壊した。匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらう告白シリーズ。今回は、新米母として、そしてベンチャー企業の社長として、仕事と生活のバランス維持に奮闘する元マーケターに話を訊いた。
コロナ禍のせいで、この先もしばらくは在宅勤務が日常になりそうないま、ジェンダーロール[性差による役割分担]の均衡が大きく崩れ、ワークライフバランスは完全に崩壊している。
以前DIGIDAYで報じたとおり、なかでもとりわけ、家族の世話に追われる働く女性がそれを痛切に感じているようだ。匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらう告白シリーズ。今回は、新米母として、そしてベンチャー企業の社長として、仕事と生活のバランス維持に奮闘する広告業界の元マーケターに話をうかがった。
なお、読みやすさと長さを考慮し、発言には多少編集を加えてある。
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ーー最近、継母になられたとのことだが、コロナ禍とリモートワークが続くなか、率直な感想は?
するべき仕事をするために子どもをある程度シャットアウトしなくてはならないのだが、その罪悪感が本当にひどい。娘と一緒にいてやれないと、自分はなんてひどい母親なんだろうと思うし、仕事がちゃんとできていないと、今度はプロとして失格な気がしてしまう……。
で、このコロナだ。どこにも行けないし、ほかに何もできないし、休憩も何もあったものじゃない。正直、きつい……思っていたよりもずっと。
[解雇される前は]専門分野に特化した小さな会社にいた。当時、そこは人手も予算も足りていなかったし、[従業員に対する]支援もなかった。それはつまり、たとえば職場を30分離れると、それを埋め合わせるのに、戻ったらそれこそ3時間余計に働かされる、ということ。これは私がいた会社だけじゃなくて、よくある状況だと思う。で、多くの人が口にしないことでもある。要するに、「いいですよ、1時間休んでください。ただし、その1時間分、これだけやってもらいますから」という話。コロナ禍の最中、その会社[での]激務のせいで、50ポンド近く[約22キロ]も痩せた。
ーー何があれば、多少は楽だったと思う?
周囲の助けだ。そういうのがもっとあれば、どんなに良かったかと思う。「あなたの状況はよくわかります」と口で言うのは簡単だけど、そう思うだけで、何かしてくれているの? という話だ。「心の健康に問題があるのなら力になりたいのですが、どうして欲しいですか?」とか「こちらがセラピストです」とかいう言葉が助けになる。困っている人には、そういう当たり前のことがとっても助けになるものだと思う。
解雇される少し前くらいから、完全に干されている気分だった。担当していた仕事とクライアントをほかの人に回されて、私はただ放って置かれた。困っている私に手を差し伸べようとか、そういう気持はまるで感じられなかった。
前の会社には、たしかに多様性はあった。そこは良かったのだが、サポートについては、ゼロに等しかった。親身になって従業員をケアしたり、一対一で相談に乗ってくれたり、ということは一切なし。でも、今みたいなメチャクチャな時こそ、そういうものがとても大事なんだと思う。
ーー家族の世話をする立場に急に置かれた女性、といった特殊な経験を語ることは、ワークライフバランスやいわゆる燃え尽き症候群の観点から、重要だと?
自分がその立場になってみないとわからないことはあるはずだ、これもそうだといえるだろう。母親になるというのがどういうことなのか、深く考えたことはなかった。多くの女性は妊娠中に心の準備をするんだろうけれど、私みたいな場合もある。心の準備をする時間は、まるでなかった。女性はみんな、新米ママとか、継母とか、[里親とかに]関係なく、企業の顔としてもっと前に出るべきだと思う。私たちには[男性とは]違う視点があるのだから。
ーー解雇されたあと、ベンチャー企業を立ち上げたわけですが、母親としての経験が役立っている部分は?
従業員に対する見方ね。会社の力になってくれる人、ビジネスの発展に協力してくれる人、この会社に、そしてここで働ける機会に感謝してくれる人、として見られるようになった。ただの労働者じゃなくて、ひとりひとり、とても大切な存在なんだと思えるようになったのは、母親としての経験が大きい気がする。
つまり、もっと人道主義的になれたというか。誰もがいつでも楽しく毎日を送っているわけじゃない。誰にでも調子の悪い日はある。でも、当時[前の会社]の仕事は、とにもかくにも成果が第一。もちろん、私だって成功はしたい。でも、従業員からそれを絞り出すようなことをしても、そこには行けないと思う。
ーーほかに重要視していることは?
仕事の前に、まずは自分のメンタルをきちんと整えるようにしている――自分自身をしっかりとケアするのが第一で、仕事はその次。ボロボロになるまで働いている状態で、役に立つものが生み出せるわけがない。それじゃあ、自分自身も、自分の仕事もダメにしているだけだから。
KIMEKO MCCOY(翻訳:SI Japan、編集:長田真)