ここ数年、デロイトやアクセンチュアなど、豊富なデータを有するコンサルティング企業がエージェンシーの専門領域に進出してきている。匿名で真実を赤裸々に語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、あるメディアエージェンシーのエグゼクティブが、コンサルティング企業は明白かつ眼前の危険だと話してくれた。
昨今のエージェンシーにとって競合相手は同業者に限らない。ここ数年、豊富なデータを有するコンサルティング企業が彼らの専門領域に進出してきているのだ。
たとえば、デロイト(Deloitte)は数々のクリエイティブエージェンシーを買収し、アクセンチュアデジタル(Accenture Digital)は2016年、アドエイジ(AdAge)でもっとも成長の早い最大のデジタルエージェンシーに指名された。匿名で真実を赤裸々に語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、あるメディアエージェンシーのエグゼクティブが、コンサルティング企業は明白かつ眼前の危機だと話してくれた。
このエグゼクティブ曰く、エージェンシーがコンサルティング企業を見て見ぬ振りできる時期は過ぎ去っており、それを続けるものは自らの破滅に急ぐだけだという。インタビューの回答内容は明解にするため若干編集を加えてある。
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――いったい何が起こっているのか?
いま、目の前で起きていることは、かつて見たことがないものだ。我々は非従来型のエージェンシー業務全般において、組織改革に精通した大手コンサルティング会社という、非常に手ごわい競合相手に出くわしている。彼らはRFP(提案依頼書)にも定期的に姿を現し、提案を勝ち取るケースも多い。
現在、小規模なエージェンシーは彼らとぶつかっていないかもしれない。追求するプロジェクトの種類が違うからだ。しかし、我々が追い求めるタイプのプロジェクトに関していえば、彼らはどの交渉テーブルにも着いている。いまはまだ、彼らを目にしていないエージェンシーにも間もなくそういうときが来るだろう。
――この状況は加速している?
この12カ月以上、エージェンシーのマーケットプレイスは根本的な変貌を続けている。我々はいま、その真っ只中におり、私の予想ではこれがあと2年は続く。
生き残るエージェンシーもあれば、買収されるものも出てきて、いま我々も知っているようにマーケットの再編成が多発するだろう。道中には多くの屍が転がり、同様に数多くの統合が見られるはずだ。業界の企業リストは2年後には、様変わりすると思う。
我々自身も昨年(2016年)非常に大きなプロジェクトをコンサルティング企業に取られてしまった。彼らは我々のすぐ後ろに迫っている。さらに彼らは自らに足りないものを補う、Cレベル(経営幹部レベル)の人間関係と資金、そしてリソースを有しているのだ。
――コンサルティング企業が成功している理由とは?
我々は、これらのコンサルティング企業が、金でビジネスを買収しはじめていると確信している。彼らは取引上、自分たちのサービスを格安もしくは無料、無収益で提供しているのだ。
彼らにとって、今日の収益性はどうでもよく、未来の可能性を見据えている。現段階の彼らの戦略は、ある程度まで超アグレッシブになって、取引を「未来を構築するためのブロック」として利用するというものだ。社交界にたとえるなら、彼らはいま上質なドレスは着ていなくとも、ダンスフロアにたどり着くべく資金を支払っているのだ。
――エージェンシーはこの脅威を過小評価している?
いまはまだ、コンサルティング企業にそれほどの脅威は感じないかもしれない。なぜなら彼らは、エージェンシーが長年積み上げてきた信頼という実績がないからだ。
しかし、これは時間の問題に過ぎない。彼らが買収を完了して、ギャップを補完したうえで、自社ブランドのDNAに買収した企業を統合していく術を見出すまでの話だ。我々は彼らがやろうとしていることを長年やってきているのかもしれないが、だからといって我々が追いつかれないようにアグレッシブに取り組んでいくことを放棄することにはならない。
彼らは我々のすぐ後ろにおり、Cレベルの人間関係や資金、そしてリソースを使って自分たちが持たないものを埋めようとしている。不可避なものに備えようとしない者は先見の明がなく、自らの慢心にとらわれているのだ。
――エージェンシーがなすべきこととは?
大手持ち株会社には所有資産を把握し、調整を加えはじめているものもある。現在所有する企業のポートフォリオの合理化を進め、それらを多様で魅力的なサービスを生み出すようにまとめていかなければ、今後2年間で大きく後れを取っていくと気づき、自覚しているのだ。
――それはどういった意味か?
持ち株会社は所有する多くの資産がポートフォリオ間で競合していることを知り、そうしたブランドが共同で各プロジェクトが継続可能なプロセスを開発していくよう措置を講じている。さらにエージェンシーはとりわけ戦略面および技術面での競争力を強化していく必要がある。
――小規模なエージェンシーの場合は?
小規模なエージェンシーは、もし彼らが独立系の良質な会社であれば吸収されることになるだろう。マーケットプレイスは根本から変貌し、業界内のエージェンシー数は減少する。
中規模エージェンシーにアドバイスするなら、技術的な競争力を獲得、強化する方法を見つけるべき。このような大規模なデジタル変換プロジェクトを迎え撃つには、強力な競争力が不可欠だからだ。そして、地域型や地元限定の企業はパートナーシップやジョイントベンチャーを組む相手を見つけるべきだ。実際に我々が目にする取引の多くは世界規模だからだ。
――この先待ち受けるものは?
エージェンシーは、コンサルティングと広告を融合したコンバージェンス型のビジネスモデルを追求していかなければならない。その道のりは茨のでこぼこ道かもしれないが、それが我々の目の前に広がる道ということだ。