THE CONFESSIONS

「良き指導者がいないと、リモートワークは本当に困難だ」:ある クリエイティブ の告白

WFH(Work from Home)が始まってから約1年になろうかという現在、同僚との繋がりが見つけられず、職場に関する愚痴も言えない状態が常態化したせいで、ストレスや不安に苛まれているクリエイティブもいる。同僚との連帯感の喪失や組織構造の欠如、成功の客観的尺度の不足のせいで、広告業界のとあるクリエイティブは途方に暮れている。

匿名性を保障する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白シリーズ」。今回は、なぜコロナ禍が良き指導者の重要性を浮き彫りにしたのか、そして組織構造の不在がなぜ孤独を生むのか、そのクリエイティブが心の内を明かしてくれた。

なお、読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。

ーー広告業界で良き指導者を見つけるのは、以前から難しい?

とても難しいし、女性の指導者を探すとなると、なおさらそう。この業界や職種ならではの問題や状況を切り抜けるための助言が求められるから。指導と呼べるものを何ひとつ見つけられずに苦労している知り合いもいる。

広告業界は過酷な世界で、とくにクリエイティブな職に就いている人は迷いやすい。みんなのコンセンサス(総意)が、もしくはインフラストラクチャーと言ってもいいけれど、そういう部分が欠けているし、私たちの仕事の大半はかなり主体的だから。

で、仕事の性質が主体的ということはつまり、私たちがまともに波を受けることを意味する。たちの悪いマネージャー、できの悪いブリーフ、しっかりした構造/体制の欠如――それもこれも、私たちクリエイティブが往々にして責めを負わされる問題に繋がりうる。自分の立ち位置を知るのも、自分の価値を知るのも、自分の仕事が良いのか悪いのかを知るのも、いつどこで線を引いたらいいのかを知るのも、何もかもが難しい。

ーーそれで、良き指導者を探している?

そう、良い指導者に救われるのは、まさにそういう時だから。客観的な目を持って、しっかりと導いてくれる人が欲しい。豊富な経験を持つ人は、若手の助けになる。業界を深く理解しているし、仕事、社内の人たち、クライアントのことなど、さまざまな対応策を心得ている。

だからこそ、そういう人は事態を適切に判断し、状況を明確に捉え、全体像を見ることができる。そのうえで、どう切り抜けたらいいのか、助言ができるし、それを無事にやり遂げるのに必要な暗黙のルールや微妙な諸々も伝えられる。

私の場合、いまのエージェンシーに転職して、すぐに良い指導者を探しはじめた。最初の数カ月は、これまでのキャリアで一番きつかった。働き詰めで、思い詰めて、自信を完全に失って、何もかもが不安になっていた。

ーーコロナ禍とオフィスに行けない状態のせいで、良き指導者の存在/不在が、これまで以上に浮き彫りになった?

そうなったと思うし、その存在は以前にも増して重要になったと思う。たぶん、片方が悪くなれば、もう片方も悪くなる、ということじゃないかな。これまでは人と接するのが当たり前だったし、同僚と何でも、仕事を離れて個人的に話していた。でもいまは、そういう雑談はできないし、それが続くと、あるときふと、自分には腹を割って話しのできる人がいないことに気づく。

たしかに、Zoomやビデオコールはあるけれど、あれは仕事感がはるかに強いし、思っていることを安心して打ち明けられる場じゃない。で、そういう状況が続くと、自分には本当の意味で頼れる人は誰もいないんじゃないか、という気がしてくる。それと、良い指導者は社員の成長にも欠かせないと思う。

ーーあなたの場合、良き指導者探しは、どのようにして?

何人かにeメールで訊いてみた。友人や知人の口伝てで、個人的に知っている誰か[良い指導者になれる人]にたどり着こうとした[けれど、うまく行かなかった]。みんな自分の仕事に追われているし、それにこの業界には、eメールを山ほど[返信しないまま]放っておくという、悪い習慣もあるから、そのせいもあったと思う。

ーー良き指導者を得ることが、あなたにとってそこまで重要な理由は?

有害な文化的習慣を持っていて、性差別者的な部分も多少あるクリエイティブディレクターたちとの接し方がわからなくて、ひどく悩んでいたから。たとえば、ミーティングでは、頭ごなしに押さえつけられるし、女の子(ガール)呼ばわりされるし、上から目線であれこれ言われる。それと、大きなプロジェクトはたいてい、向こう[男性チーム]に行っていた。

だからこそ、そういう偏見のない人が、フィードバックと向き合ったり、問題を提起したりする最良の方法について、外部の視点で助言してくれる人が必要だった。誰にも、誰かに相談しなくちゃならないときがある。経験豊富な、もしくは外部の視点で導いてくれる人が必要なときがある。

ーー良き指導者が見つからなかったことで、広告業界や自身の今後に対する思いは変わった?

[良い指導者がいないと]どこか孤独な気がしてくるし、そういう困難にたったひとりで向き合っている気がしてくる。同僚に相談したくても、みんなたいてい同じ問題で苦しんでいる。私の職場もそうで、同僚の女性の多くが同じ問題を抱えている。つまり、これは業界全体の問題なのに、放っておかれている。誰も解決しようとしていない。

ーー良き指導者がこれまで以上に求められている広告業界において、知っておくべき重要なことは?

自分の人脈に手を伸ばすこと。指導者が必要な人も、指導できるキャパのある人も、周囲に手を伸ばすこと。知り合いに年下/キャリアの浅い人がいるなら、「どうしてる? 大丈夫? うまく行ってる? 何か相談したいことはない?」と、声をかけてあげること。ごくごく常識的な、当たり前のことに聞こえるかもしれない。でも、恥ずかしいことなんだけど、それができていないのが現状だから。

[原文:It’s tough ‘to know your worth’: Confessions of a creative feeling adrift without a mentor

KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)