匿名を条件に業界について赤裸々に語ってもらう、DIGIDAYの告白シリーズ。今回は、アメリカのとある広告エージェンシーの幹部が、インターンシップはしばしば多様性の確保というよりも縁故採用まみれであることを告白する。多くのエージェンシーがクライアントの子供のために枠を確保しているような状況だ。
人材は、エージェンシーにおいて渦中の問題だ。多様性に富んだ労働力を十分に確保できていないことで批判を浴びている現在は、特に注目されている。
この業界に入る場合に、もっとも確実な方法のひとつがインターンシップを利用することであることは変わりがない。インターンシップは、この業界の複数の仕事に実際に取り組み、貴重な経験を得る機会を若い人々に提供するもので、誰もが欲しがる体験だ。通常、採用対象としてリストアップされている学校以外の学生を雇用し、さまざまな考え方を取り入れることによって、従業員層を多様化する効果的な方法であるとも考えられている。
匿名を条件に業界について赤裸々に語ってもらう、告白シリーズ。今回は、アメリカのとある広告エージェンシーの幹部が、インターンシップはしばしば多様性の確保というよりも縁故採用まみれであることを告白する。同国の多くのエージェンシーがクライアントの子供のために枠を確保しているような状況だという。以下が彼らの本音だ。
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――エージェンシーにおいて、インターンシップはどのような役割を果たしているのか?
ほとんどのエージェンシーがインターンシップ制度を設けている。しかし、これまで働いてきたすべてのエージェンシーは、インターンシップ制度を設けているが、基本的にクライアントのお子様のために、その枠を事前に割り当てていた。
――どういった形で?
私が働いていた、ある大手持ち株会社のエージェンシーは、正式なインターンシップのプログラムを設けていた。それは素晴らしいことだと思う。8カ月前に申し込みをして、インターン生はニューヨークに行き、ホテルの部屋を割り当てられ、数多くのクライアントと仕事をする。この機会を得るのは不可能に近かった。
――それは、なぜ?
なぜなら、割当枠はすべてクライアントのお子様に独占されていたからだ。典型的な縁故採用といえる。
――あなたの会社も、そうするように依頼されたか?
会社によって違った。インターンシップ制度を設けている比較的小規模なクリエイティブブティックで働いていたときは依頼された。なんだかんだとクライアントが電話してきて、こう言う。「頼みを聞いてほしい。私の息子が5月にマサチューセッツ大学を卒業する。息子は広告あるいはメディア、広報の職に就きたいと言っている。どこかインターンシップをできるところを見つける手助けをしてもらえないだろうか?」。
――そういった場合、あなたはどうするのだろうか?
エージェンシーに関わることなので、ノーとは言えない。当社のグローバルCEO(最高経営責任者)がやってきてこう言ったものだ。「クライアントのご息女と会ってやれ」。この女性がやってきたら、歓待した。彼女をエスコートして人事担当者に会わせた。多くの社員とも会わせた。これが通常の応募者なら、良くてもコーヒーを飲みながら話をする程度だ。彼女に会って素敵な令嬢だと分かったが、そのあとにCEOに戻って報告する必要があるようだったので、そうした。CMO(最高マーケティング責任者)がCEOを呼び、彼女はインターンシップの機会を得た。
――そのあとは?
「ふむ。良い方ですね」と言う感じで。そのあとに、ご子息令嬢に会い、本人がやりたいことを聞く。話の内容次第で、ブランドあるいは別のエージェンシーの友人を紹介するということもある。あるいは、自分の会社でインターンシップの機会を提供することもよくある。クライアントのお子様にそれまでで最高のインターンシップの機会を提供した記憶もある。なぜなら、そのお子様の親御様であるクライアントが長年当社をご愛顧してくださっていたからだ。そして、そのクライアントが今後も長くお付き合いしてくれると分かっていたので、そのような最高の機会を提供した。問題が起こるのは、そのお子様が、仕事ができない場合だ。
――何か間違ったことをしていると思ったか?
このように、人助けをしたと考えている。まったく問題外の人物なら、そうはしない。しかし、大抵の場合、手助けをする。クライアントのお子様が小規模なエージェンシーのインターンシッププログラムに来て問題となるのは、お子様が会社の内部事情を知ってしまうことにある。つまり、クライアントのお子様がインターンシップに来ると、我々がお子様の父親に関して話している内容をすべて聞いてしまうことになるということだ。
――ホテルの部屋を割り当てると言ったが?
クライアントは、以前はスーパーボウル(Super Bowl)のチケットを取ってくれと頼んできたものだったことから考えても、おかしな状況だ。この文化は変わってきている。現在は、自分の子供を雇ってほしいと頼んでくる。大手エージェンシーのこのインターンシッププログラムは構造化されており、正直に言って、これはビジネスだ。CMOのお子様はニューヨークに飛び、マディソンアベニュー(Madison Avenue)エージェンシーで1カ月働いて、さまざまなグループで仕事をする。これらは、誰もが体験したいインターンシップだ。
――その効果は?
言葉で表すのは難しいが、私は最初のエージェンシーに雇われるまで自分を売り込まなければならず、先方と1対1の面接を受けて、あなたには経験がないという理由で雇ってもらえなかった。力のある親御様が電話をした場合は、状況は大きく変わる。トップダウンの命令が下される。インターンシッププログラムに特権を持ったお子様が押し寄せると、コミュニティカレッジの候補者やさまざまな背景を持つ候補者に参加してもらえない。人材の多様性に影響が及ぶ。この業界に入ってもらえなくなる。