「プログラマティックは手間なしと、連中は思ってる」:ある広告持株会社のエージェンシー幹部による告白

よく知られているとおり、エージェンシーのホールディンググループモデルに対する風当たりが強まっている

匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらうDigidayの告白シリーズ。今回は、グループ/社内政治や古い体制のせいで、現場のチームが不要なプレッシャーを受けていると嘆く、あるエージェンシー幹部に話をうかがった。

なお、読みやすさを考慮して、発言は多少編集してある。

――エージェンシーのホールディンググループモデルのせいで、どんなプレッシャーを受けている?

例として、プログラマティックの話をしよう。クライアントとエージェンシー間の交渉はたいていトップレベルで行なわれるが、具体的に何ができるのかを把握している者は、その場にいない。いわゆるお偉方同士が費用やサービス、チームの人数といったことを協議するだけで、労力がどれだけ必要となるのかについては、ろくに考えてもいない。

――それでどんな問題が生じる?

お偉方も現場に入って、1週間も働いてみればいい。そうすれば、キャンペーンのセットアップやレポート、最適化にどれだけの労力が必要なのかが身に染みてわかる。細かい諸々を見れば、ウィークリーレポートを出すのに2時間かかるのは一目瞭然だ。オールウェイズオンのウィークリーキャンペーンをやっていれば、レポードだけで年に104時間だし、資金もバカにならない。それに1時間あたりの料金を掛けて、プログラマティックフィーを5%取るとして、元が取れるか? おそらく無理だ。プログラマティックサービスの提供に何が必要なのか、クライアントはまるでわかっていない。

――プログラマティックは、すべてが自動で行なわれると、彼らは思っているのだろうか?

そのとおり。ボタンを1つ押すだけで、 キャンペーンが自動的にインターネットで展開されるとでも思っているんだろう。

――それは交渉段階でエージェンシーが説明すべきことではないのか?

これはよくあることなんだが、クライアントと折衝をする関連会社のエージェンシーは、とにかく話をまとめたい。だから費用が障害なら、「まずは契約書を交わしましょう。あとは我々で何とかしますから」と、調子のいいことを言う。で、肝心のプログラマティックの仕事は、プロジェクトを実行するグループ内の別のエージェンシーに、つまり下請けに回す。

――実際に仕事をするエージェンシーが受けるプレッシャーは?

とてつもない。数々の期待を一身に背負わされるからだ。実際には何が必要で、そのサービスを提供するのにスタッフが何人要るのか、契約をした連中は何も考えていない。しかも、計画の実行に不可欠なものがちゃんと手に入るのかどうかさえ、現場のチームには見えない、不透明なんだ。そのせいでチーム内の結束は危うくなるし、資金にまつわる問題も生じる。

――資金にまつわる問題とは?

我々がプロジェクトを実行するエージェンシーの場合、そのパフォーマンスの責任はすべて我々が負う。けれど、資金となると話は別で、[契約を姉妹会社のエージェンシーが結んだ場合は]、どこから、どのようにして資金が提供されているのか、我々にはまったくわからない。さらにややこしいことに、資金を提供しているのがクライアントと交渉をした部署の場合は、そこの取り分の問題も出てくる。たとえば、そこが金を少しでも多く取りたくて、人件費に倍の値段をふっかけることもありえる。一方、我々にはそのからくりが一切見えず、増えた人件費だけ支払わされる。

――誰がそれを決めている?

というか、そもそも論理的根拠に基づいたものじゃない。ファイナンスディレクターが諸経費の概算に基づいて、これくらいかかるだろうと、憶測で決めているだけだ。 しかも、その金は[我々に]そっくりそのままは回ってこない。我々も同じ会社の一部なのに、ひどい話だろ。そして、それはつまり、どのサービスサプライヤーも長らく金を受け取れない、という事態にもつながる。その[関連/姉妹]部署はクライアントから支払いを受けるから、金を持っているくせに。

――そういうことはよくある?

2つのエージェンシー間でサービス対価の支払いに何カ月もかかっている話は複数耳にしているし、いくつかは責任者がすでに退社しているという事態に陥っている。その仕事を引き継いだ別のエージェンシーチームは、前任の件だからと、金はあるのに払おうとしない。

――エージェンシーモデルに対する風当たりが強まっているのなら、存続しているのはなぜだと思う?

要するに、政治とマージンだよ。どこも最終的には、自社の損益計算書を見ることになる。だから、同じ傘の下にいても、誰もが自分のことしか考えない。クライアントのために最善を尽くすという基本概念と矛盾しているとさえいえる。たとえ、最初の交渉がまとまった直後に、「ここからどうやって儲けられるか」という話をしたとしても、そんなのは戯言に過ぎない。

――サステナブルには思えないのだが、是正は可能?

エージェンシーがするべきことは、まず、クライアントが何を求めているのか、そしてそれを提供するために現実的に何が必要なのかを把握する。そのうえで、自らの求める透明性のレベルにどうしたら到達できるのか、クライアントにきちんと伝えること。完全な透明性を求めるなら、クライアントと相応の信頼関係を築く。そして、そのプロジェクトに具体的にどの程度の労力を注ぎ込むことになるのか、そして最終的にどんなアウトプットが得られるのか、クライアントに明確に伝えられるようにならないとダメだ。

Jessica Davies(原文 / 訳:SI Japan)