「エージェンシーの多様性に、目立った変化は起きてない」:とあるエージェンシー幹部の告白

エージェンシーの多様性不足は、よく話題にされてきた。それでもまだ、明白な変化は見られないようだ。

匿名であることと引き換えに率直に語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、社内で多様性に関する取り組みを主導してきた、エージェンシーの黒人幹部に話を聞いた。彼はエージェンシーの多様性に関する取り組みについては透明性が不足しているという。

以下、会話の詳細だ。読みやすさを優先して、一部編集してある。

――多様性に関する取り組みをめぐっては、エージェンシーは口先だけの支持が多い。現状はどうか?

取り組みは行われている。だが、多様性に関する取り組みで過大に重視されるのは、受け入れる人材のことだけで、すでにいる人材を育てることではない。すでにいる人材を育てることによって、この会社で成功して昇進するチャンスを与えることができる。エージェンシーの名前を指定して、ウェブサイトの経営陣紹介ページにアクセスすると、男性アイドルグループのバックストリート・ボーイズか女性アイドルグループのスパイス・ガールズのように見える。これらのエージェンシーすべてで有色人種のリーダーはほとんどいない。それが恥じることではないかのようだ。有色人種の従業員としてもっとも残念なのは、私のあこがれの対象がまったくいない点だ。異性愛者の白人男性のリーダーや異性愛者の白人女性のリーダーの姿に自分自身を投影できない。そういうのはあこがれの対象ではない。

――それでは、一部のエージェンシーに有色人種の従業員がいても、リーダーの地位に就いていることは少ないのか?

「我々の会社はかなり多様性がある」とエージェンシーが言うことはできるが、有色人種の割合や黒人の割合、ラテン系の割合、アジア系アメリカ人の割合を示させようとすると、それも変わる。女性について語っているのなら、有色人種の女性が何人いるのか? そのうち何人が意思決定に大きな役割を果たしているのか? 「ああ、知ってのとおり、我が社は女性が約55%を占める」と言われたとする。女性の割合が55%というのはすばらしい。だが、そのうち何人が采配を振るっているのか?

――それが、特定の数字の共有において透明性が不足していると考えている点か?

透明性が大いに不足している。私が話題にしたそれらの割合? そうした割合を公開しているエージェンシーはない。だから、広告業界はテック業界に多くの人材を取られている。テック業界、Apple、Twitter、Facebook、Google、もっと小規模なテック企業でさえ、多様性問題に対して非常に透明性があるので、世界に見てもらえるように数字を公開している。少なくとも、テック企業は「見てくれ。現状はこれほどひどい。我々は今後、これに取り組んでいく」といった感じなので、個人的には立派だと思う。

――エージェンシー界はそれについて何をすべきだと思うか?

透明性は、はじまりに過ぎない。こうした情報をすべて公開する。そうすれば、行動と実行が伴ってくる。エージェンシーは口先だけの支持や問題の指摘は得意だが、問題を修正する実際の行動についてはどうか? そもそも行動を起こしているとしても、非常に遅いペースだ。エージェンシーは退職者面談を詳細に分析する必要がある。従業員の退社理由を調べることが必要だ。次に受け入れる人材がそうした理由で会社を去らないように、従業員の退社理由を解明しよう。

――多くのエージェンシーが多様性担当最高幹部の役職を設けている。それが役に立っているのか?

多くのすばらしいプログラムや取り組みが行われているので、目立った変化がもたらされると考えるだろう。だが、目立った変化はこれまで起きていない。この業界に入りたい有色人種の若者の数は増えていない。彼らは皆、広告に携わりたがっている。自分のような外見の者が上級幹部にいないにもかかわらず、まだ、そうしたいと思っている。実際に広告業界に入ると、自分が歩んできた人生に共感したり同情したりできる者が誰もいないので、大きなカルチャーショックを受ける。

――なぜ変化を促すのに透明性が非常に重要なのか?

こうしたことすべての重要性を人々に理解させるのが、困難な場合がある。これは、「白人の男性や女性に出て行ってもらいたい」という問題ではない。そういう問題ではけっしてない。空間を共有したいだけだ。我々全員が顔にあたるのを感じられるほど、十分に日光があると言っているだけだ。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)