コンサル企業の戦略に習う、エージェンシー持ち株グループ

コンサルティング企業はまだ、エージェンシーの持ち株グループに長い影を落としている。

広告業界は2年前、コンサルティング企業の脅威を軽視した。だが、現在は話が別だ。3つの最大手持ち株グループのCEOはいま、傘下の企業をコンサルティング企業にもっと似せようと努めている。どのように脅威にさらされているかをめぐってアナリストや投資家に問いつめられるなかで、WPPのマーク・リード氏、オムニコム(Omnicom)のジョン・レン氏、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)のアーサー・サドゥーン氏の各氏は、2019年第1四半期の収支報告で、コンサルティング企業――それも特にアクセンチュア(Accenture)――に繰り返し言及した。

データに踏み込むWPP

リード氏は4月26日、WPPの収支報告で、アクセンチュアやデロイト(Deloitte)などが事業に与えている脅威を認めた。「コンサルティング企業とますます競争するようになるだろう。コンサルティング企業は依然として、我々の事業の中心というより辺縁にいる。我々が勝つことが多いが、コンサルティング企業が勝つこともあるだろう」と、リード氏は語った。

リード氏は、WPPをアクセンチュア・インタラクティブ(Accenture Interactive)PwCデジタル・サービス(PwC Digital Services)IBM iXデロイトデジタル(Deloitte Digital)のバックボーンとして長年考えられてきた類の、データ管理・分析事業における競争力と位置づけた。WPPは、カンター(Kantar)の事業の一部を売却しようとしているところだが、独自のファーストパーティの顧客データを保有する夢をまだ抱いている。カンターが保有するデータは、パネルや調査から引き出されているのに対し、ワンダーマン・データ(Wunderman Data)に蓄積されているデータは、詳細な国勢調査ベースのレベルで個人名にリンクされたパーミッションベースのデータだ。

このようなサービスは、2019年第1四半期の純売上高の15.6%を占めた。WPPの課題は、そうした機能をグループ全体でもっと広く利用できるようにすることであり、顧客データ管理プラットフォームをクラウドに移行する現在の取り組みによって、それに着手しつつある。

新たな収益機会に?

「我々には、米国の約2億5000万世帯のデータと、人口統計からSKU(最小管理単位)レベルの購入など約3000のデータセットがあり、そういったデータをほかのソースに統合する能力がある」と、リード氏は収支報告で述べた。

多くの国際的な広告主は、保有データとサードパーティのデータの両方を利用して、新たなオーディエンスセグメントを特定し、メディア投資を分析する方法に困っている。だから、そうしたデータからCRMやロイヤルティスキームに関する情報を得られる方法がわかれば、WPPにとっての新たな収益機会を生み出せる。

これは、コンサルティング企業の戦略に由来する動きだ。アクセンチュア・インタラクティブもデロイトデジタルも以前、データ管理プラットフォームのオンボーディングに支援が必要なシニアマーケターに独自の能力を売り込むことの利点を強調し、投入するデータの構築方法について助言した。広告は、コンサルティング企業にとって利益率の高い製品と見なされていないので、コンサルティング企業はデータ分析のようなもっと利益になるパッケージとともにバンドルするのが一般的だ。

オムニコムは企業投資へ

オムニコムは、それとは異なる道を進み、コンサルティング企業に投資してきた。2018年には、経営・技術コンサルティング企業のクレダラ(Credara)を買収し、マーケティングサービス・技術企業レボ・デジタル(Levo Digital)の過半数の株式を取得した。現在は、同様の買収を求めている。

4月16日に行われたオムニコムの収支報告で、レン氏は、そうした企業によって、同グループがコンサルティング企業の得意分野に進出できるようになる仕組みを概説した。「こうした慣行が発展するにつれて、企業に対応する最先端のソリューションを顧客に提供する機会が増えると期待している」。

それは、2014年に行われたピュブリシスグループによる37億ドル(約4000億円)でのサピエント(Sapient)買収のような大きな取引にはつながらないだろう。そうした取引は過去のものだとレン氏は述べ、同グループはクレダラのようなもっと小規模な企業に注目し続けると、アナリストに語った。買収された当時、クレダラは300人の従業員がおり、年間売上高が約8000万ドル(約87億円)だった。

コマースを狙うピュブリシス

コマースは、持ち株グループがコンサルタント企業により近づきたいと考えているもうひとつの分野だ。だが、コンサルタント企業に正面から立ち向かってではないだろう。オンラインでの販売が増えるなかで、エージェンシーからすれば、ショッパー(購入者)マーケティング予算は、いまでは容易に獲得できる。以前は、Amazonのせいで進出できなかった分野だ。ペプシコ(PepsiCo)のような消費財分野では特に、広告主が、オンライン販売の促進を目的としたメディア予算の支出先を見直しつつある。

ピュブリシスグループのCEOであるサドゥーン氏が、今月、エプシロン(Epsilon)の買収計画についてアナリストに質問されたとき、消費財ブランドの広告主に何度も言及したのはそのためだ。エプシロンは、アフィリエイトマーケティングネットワークとサードパーティデータのマーケットプレイス、小売データの共同活用システム、アドテクプラットフォームから成る。そういったデータソースを利用できるので、ピュブリシスグループの幹部は、たいていはコンサルタント企業の領域である分析と測定を軸にサービスを構築しはじめることができる。

「ファーストパーティデータは、消費財の世界にとってますます重要になりつつある」と、サドゥーン氏はアナリストに語った。「エプシロンのような企業があれば、大変革をもたらして、消費者と結びつくことの役に立てると、消費財ブランドの顧客に言われたことがある。だから、取引データがそれほど重要なのだ」。

対立姿勢のグループ・エム

グループ・エム(GroupM)は、もっと思い切った手段に訴えて、コンサルタント企業がもたらすと認識されている利害の対立に対処しつつある。メディアバイイング部門は、アクセンチュア・インタラクティブが価格引き下げに利用するのを懸念し、監査においてもうメディアの価格データの一部をアクセンチュアと共有していない。オランダでは、アクセンチュアによる3月のストーム(Storm)買収により、すでにエージェンシー数社が動揺している。メディアプレイン(Mediaplain)の共同オーナーであるC・C・ヘイグ氏は、エージェンシーと競合する立場を取りながらエージェンシーの数字を監査するコンサルティング企業について警告する公開書簡を公開した。

「アクセンチュアがエージェンシーになる決意をするなら、エージェンシーのマッチングや調査、評価をやめるべきだ。あるいは、もっと良いアイデアがあるかもしれない。必要に応じて、独立した団体にアクセンチュア・デジタル(Accenture Digital)のカスタマーオフィスの関係を調べさせよう」と、ヘイグ氏は書簡に書いている。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)