FUTURE OF WORK

ワクチン接種の「義務化」に悩む、マーケティング幹部たち:「上に立つ者は常に共感を忘れずに」

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欧米では、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。このワクチン接種に対する従業員たちの心の内を十分に把握しているCEOがいるとすれば、それはデヴィッド・ニウ氏にほかならない。

ニウ氏がシアトルを拠点に運営するタイニーパルス(TINYpulse)は、企業の従業員に職場の問題についてアンケート調査を行うプラットフォームを運営しており、デロイト(Deloitte)やユニリーバ(Unilever)などを顧客に抱えている。同氏の考えでは、雇用主がワクチン接種とその後のオフィス復帰を計画するうえで、従業員の同意は不可欠だという。

「経営陣は、従業員が各自の意見を表明する機会を確保しなければならない」と、ニウ氏は付け加えた。

懐疑的な態度の従業員たち

目下のところ、経営幹部は安全な職場環境の確保を説くが、従業員たちはいまだ懐疑的な態度を崩さない。市場調査会社のウエイクフィールドリサーチ(Wakefield Research)がハネウェル(Honeywell)の委託で就労者2500人を対象に行った世界規模の調査では、「自分の勤務するオフィスが完全に安全であるとは思わない」と答えた人が回答者の70%にのぼった。さらに、現在リモートで働いている人々の24%が「必要な安全対策が講じられない場合、通勤を再開するよりは新しい仕事を探す」と回答している。

英国を拠点とするマーケティングエージェンシー、ヘッジホッグデジタル(Hedgehog Digital)の創業者で、同社の役員を務めるアラン・スパージョン氏は、従業員のワクチン接種を義務化しないと断言している。彼の主張はこうだ。「ワクチン接種を強制して、なんらかの副反応が生じれば、健康被害の補償など、大きな訴訟問題に発展しかねない」。また、宗教的信条、食生活や健康上の理由などで、ワクチン接種に反対する意見もあるだろう。

米国でも、ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)が報じているように、Facebook、マリオット(Marriott)、ディスカバー・ファイナンシャル・サービシーズ(Discover Financial Services)を含む大手企業が、ワクチンの予防接種を奨励はするが、義務化はしないと表明している。米国連邦政府機関の雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission: EEOC)が策定したガイダンスでは、雇用主は、健康上の懸念や宗教的信条に一定の配慮を行ったうえで、従業員にワクチンの接種を義務づけることができると規定している。

企業たちは従業員説得を強化

雇用主たちは、予防接種を促すインセンティブを提供する一方、ワクチンの安全性について従業員を説得する試みを強化している。

たとえば、ニューヨークで事業用の不動産を仲介するスクエアフット(SquareFoot)は、必要な措置を講じたうえで、昨年7月半ばに本社オフィスを再開した。同社は現在、従業員のワクチン接種を奨励するための有給休暇や、会社によるコスト負担を検討している。また、企業の医療顧問を務める人々は、ワクチン接種後に発熱その他の副反応が生じた場合、一部就労者の欠勤にもあらかじめ備える必要があると助言している。

スクエアフットのマイケル・コラチーノ社長はこう述べている。「パンデミックが勃発して以来、私たちは終始、人にはそれぞれ異なる要求や懸念や責任があることを認めて、誰に対しても忍耐と理解をもって接してきた。ワクチン接種を不安に思う人がいるなら、どのようなサポートが最善なのか、個別に話をするつもりだ。私たちはいま、国難に直面している。上に立つ者は常に共感を忘れず、すべての人々が納得できる解決策を導き出さねばならない」。

マイアミに拠点を置くビジネスコンサルティング会社、LLCフォーメーションズ(LLC Formations)のブラッドリー・スティーヴンス最高経営責任者(CEO)は、ワクチン未接種の従業員にワクチンの投与を行うため、オフィスの一角に臨時の診療所を設置するという。同氏は、さまざまな理由で接種を望まない人々がいることに理解を示し、そのようなケースには臨機応変に対応したいという。全従業員に対してワクチン接種を受けるように説得を試みるのもひとつの方法だ。スティーヴンス氏は「説得に応じない人々には、ワクチンを接種するまでオフィスへの出勤を認めず、そのあいだは欠勤扱いとすることを勧告すべき」とも述べている。

米国では法的に義務付け可能

同様に、ミネアポリスに拠点を置くデジタルマーケティングエージェンシー、301マディソンコンサルティング(301 Madison Consulting)のケイル・ローケンCEOも、安全な職場環境を維持し、従業員が安心して出社できるようにするには、全従業員のワクチン接種は「必要不可欠」だと述べている。同社では、接種にかかる費用を会社で負担し、従業員に有給休暇を付与することを検討している。また、オフィスへの復帰にあたり、全従業員にワクチン接種歴の証明書を提供するよう求めるとしている。ワクチン接種を受けない者に、出社は認めないということだ。

ローケン氏は、反ワクチン派に対しては、ことさらに厳しい態度を見せる。「ワクチン接種に反対する人々は、同じ職場で働くほかの従業員やスタッフにとっては危険でしかない」と同氏は言い切る。「この大変な1年を経験したあとでは、彼らのようなリスクは取るに値しない」。そういう人々にはリモートで働いてもらえばよいと同氏はつけ加えた。

ホリー・ヘルストロム氏は、ニューヨークを拠点とするコミュニケーション会社、ロゴスコンサルティンググループ(Logos Consulting Group)の共同経営者であると同時に、コロンビア大学の非常勤教授として、アメリカ合衆国憲法修正第1条に関連する従業員の権利について教えている。ヘルストロム氏によると、米国の民間企業は従業員にワクチン接種を義務づけることが法的に認められているという。

「雇用主は、喫煙や飲酒など、健康に関連する生活習慣に基づいて、従業員を解雇することができるし、実際に解雇することもあった」と、ヘルストロム氏は語る。「新型コロナウイルスのワクチン接種が義務づけられている企業で接種を拒否すれば、その人は解雇される可能性があるし、雇用主にはその人を解雇する法的権利が認められている」。

[原文:With many employees wary, company leaders prepare their return-to-office coronavirus vaccine policies

TONY CASE(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)