匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回はエージェンシーにおけるPRのプロに打ち明けてもらった。クライアントは好意的に報道してもらいたがる。そして、何の努力もなしに無料でそうしてもらうことを望む。PRのプロになると、こうした非現実的な期待にうまく対処せねばならない。
クライアントは好意的に報道してもらいたがる。そして、何の努力もなしに無料でそうしてもらうことを望む。PRのプロになると、こうした非現実的な期待にうまく対処せねばならない。
匿名による「告白」シリーズでは今回、好意的な報道をしてもらうために行われる仕事をクライアントがいかにわかっていないかについて、また、メディア企業が報道の対象になるのが苦手である理由について、エージェンシーにおけるPRのプロに打ち明けてもらった。
以下、一問一答形式でお届けする。一部読みやすくするため編集してある。
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――外部のエージェンシーということで、もっともつらいことは?
弁解がましくなることなく、クライアントに幾度となく状況報告しなくてはいけないと知ることだ。エージェンシーが朝から晩まで何をしているのかをクライアントはわかっていない。どんなサービスプロバイダーに対しても懐疑はつきものだ。知っているのは結果ばかりで、結果に注ぎ込まれている作業のことはわかっていない。大ニュースというめったにない場合を除けば、記者に電話をして「こんな大きな話が入ったのだけど」というだけでは成功させられないことを、クライアントはたいていわかっていないのだ。うまくいった取り組みには時間がかからなかったものと思われることがある。
――スタートアップとの仕事に特有の課題はあるのか?
スタートアップは、人材、投資家、顧客を引き付けるためには、報道してもらうことが必要だと思ってくれる傾向がある。しかし、10年選手の会社なのに、注目されたいという願望から、自分たちがやっていることは、すべてとても興味深いものであるかのように振る舞うクライアントに当たるとツラい。無駄な期待なのに。
――ソーシャルインフルエンサーはクライアントの計画のどこにはまるか?
ソーシャルメディア上のブロガーを巡る米連邦取引委員会(FTC)のガイドラインは、いわゆる「オピニオン」の妥当性を監督するうえでとても重要なものになるだろう。インフルエンサーマーケティングをうまくやるには、インフルエンサーにお金を支払ったうえで、そのことを明示するしか方法がないことをクライアントは理解する必要がある。「お金を出してやらせたという風に見られたくない。我々について書きたいという人を探し、善意から書いてくれるように説得しようじゃないか」というのがクライアントの反応だ。
――紙媒体を望むクライアントはまだいるのか?
もちろん。その方がスゴいことに思えるから。希少価値なんだ。紙媒体でないと真剣に取り上げられていないというような感覚がある。ただ、言わなければクライアントが紙媒体に目を向ける可能性は低くなっている。
――わかってほしいけど記者たちがわかってくれないことは?
イエスというのが、実は記者たちの利益だということ。その記事を書くことで、複製物ではない興味深いコンテンツができ、同時に、この先、報いてくれるかもしれない会社との関係が構築される。記者たちは記者同士の競争に非常に関心があり、その枠外にあるかもしれないものに「ノー」という。
――ニュースが四六時中報じられるようになったいまも、記者たちはスクープを気にしているのか?
記者たちがスクープを気にしなくなってくれたら素晴らしいことだ。(クライアントの)チャンスが増えるからね。Facebookならば、ブログに投稿するという方法が可能で、エコシステム全体が報じてくれるだろう。Facebookを目指しているようなところは、新製品がある場合、取り上げてもらうには独占記事を提供するしか方法がない。
――なぜメディア企業はニュース報道の対象になるのを嫌がるのだろう?
悩ませる側であることに慣れていると、餌食になるのはとても耐えがたい。ブルームバーグ(Bloomberg)は最大のニュース編集室を持ちながらジャーナリストを嫌うことで有名だ。また、ルパート・マードック氏はメディア企業を所有していながら、記者会見を開かない。
一方、(タイム・ワーナー[Time Warner]のCEOであるジェフ・)ブックス氏は厳しい質問にも自ら対応している。同氏は、AT&Tとの合併を成立させるためには透明性が不可欠だと理解している。
ニュース関係者は、自分たちに関する報道を少しも許容しないでいられる。ニュースに関与しているのならば、せめてスペースの一部は自分たちのことを伝えるのに使うべきだと、僕は関係者に言っている。だが、全般的にそんなことはできていない。
――デジタルの測定問題には、どのように対処している?
非常に大きな課題のひとつだ。だから、仕事につぎ込んだ労力を測定するのが重要なのだ。成功は記者の関心で測定できる。
公開した記事がヒットしたとしても、すべてのオーディエンスがその記事を読んだというわけではないことはクライアントもわかっている。我々には、『これだけの人が記事を読みましたよ』といえるような指標がまだない。ただ、パブリッシャーが記事ごとの実際の読者数を公開したとき、それはクライアントにとってまさに失望の日になるはずだ。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)