今週は中華デジタル経済の巨大さに関して。アリババグループの展開するマネーマーケットファンド(MMF)の運用額がJPモルガンのMMFを超え、1655億ドル(約18兆2000億円)で世界一になった。ライドシェアDidi Ch […]
今週は中華デジタル経済の巨大さに関して。アリババグループの展開するマネーマーケットファンド(MMF)の運用額がJPモルガンのMMFを超え、1655億ドル(約18兆2000億円)で世界一になった。ライドシェアDidi Chuxing(滴滴出行)はソフトバンク、ジョージ・ソロス氏などから55億ドル(約6000億円)を調達した。
この2件ともアリババ、テンセントというアジアの巨大企業に関連しており、スケールがあまりにも大きく、今年はアジア新興国などにどれだけ楔を打ってくるか注目したい。
奇しくも日本では東洋経済オンラインの「もしアマゾンが本気で『金融事業』を始めたら」(泉田 良輔 :GFリサーチ合同会社 代表)がNewspicksなどで話題になっている。「Amazonは金融機関の脅威になりうる」と指摘されている。
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コマース企業が金融業界に脅威を与えることは、中国ですでにアリババが高いレベルで実現している。アリババグループが展開するマネーマーケットファンド(MMF)「余額宝(ユエバオ)」の運用額は4月27日、1655億ドルを超えたと調査会社が示した。JPモルガンの米連邦政府MMFの1524億ドル(約16兆5000億円)を超えて世界1位の規模となっている。
China’s Yu’E Bao now world’s largest #MMFund ($) https://t.co/zCf7tv5Igf pic.twitter.com/gKpHaYwi9l
— Sean M Tuffy (@SMTuffy) April 28, 2017
1位余額宝:1655億ドル、2位JPモルガン米連邦政府MMF:1524億ドル、3位フィデリティ「ガバメントキャッシュリザーブ」:1348億ドル……。
余額宝はアリペイから1元(約16円)から利用できる金融商品で、資金の出し入れも適宜できるため、利率の高い「預金」の感覚で利用されている。人々はスマホの操作で簡単にお金を余額宝に載せる。独特の金融感をもち、937兆円を預金口座に置いている日本人とは全く異なる感覚だ。
7 日間の収益率を年率に換算した「7日年化収益率」。1時期6%の利回りだったが一時2%台まで下落。現在は4%程度。預金するより断然利率が高い。
国有銀行のサービスや預金利率が低かったことに加え、中国最大級企業アリババの信用力やモバイルアプリで行える利便性が、ファンドが世界最大規模に拡大した要因のようだ。アリババは独自のクレジットスコアをつくることに成功しており、ほかにもさまざまな金融サービスを提供する。
滴滴出行がアジア最大のスタートアップ
滴滴出行は4月30日に資金調達を確定させた。評価額は500億ドル(約5兆5000億円)で、シャオミ(小米)を超えアジア最大のスタートアップ(未上場)になった。Uber Chinaを吸収合併した際の340億ドル(約3兆7000億円)から約40%の上昇。Uberの直近の評価額は690億ドル(約7兆7000億円)であり、滴滴出行は肉薄する。
滴滴出行は中国市場からUberを追い出し、極めて支配的な立場で、テンセントとアリババが45億ドル(約5000億円)ずつ投資する「大中華連合ライドシェア」。Uberがセクシャルハラスメント騒動とGoogleとの訴訟などに足をとられているあいだにどれだけ前に進めるか。
滴滴出行の展開は2点考えられる。(1)東南アジア、南アメリカなどUberが浸透していない地域への展開、(2)自動運転車への投資。自動運転車のカギであるAIに関しては、テンセントが、米シアトルに元マイクロソフト人材を中心にAI研究所を設立。今後この分野にも注力されるだろう。
滴滴出行に投資したソフトバンクはインドではフリップカートとスナップディールの合併の「仲人」を務め、アリババが強く背中を推すモバイル決済「Paytm(ペイティエム)」への投資も現在交渉のさなかだ。サウジアラビアなどと組成したファンドとともに、日本企業のなかでこの分野で唯一ただならぬ存在感を示している投資会社だ。
以下、その他の注目トピック。
▼Twitterがブルームバーグと提携、番組をライブ配信
Twitterは、経済・金融情報メディアBloombergと提携して、24時間年中無休でニュースを配信するとWSJが報じた。Bloombergのライブレポート番組をライブストリーミング配信する。
▼Alphabet好決算、広告伸びる
Alphabetの第1四半期決算では、収益は22.2%増の247億5000万ドル(2兆7100億円)。純利益は54億3000万ドル。傘下Googleの広告収益は18.8%増加し、214億1000万ドル(2兆3500億円)。先週のサマリーで触れたように、デジタル広告がGoogleとFacebookに席巻されていることを裏付ける内容だ。
▼Amazon好決算、インド好調か
Amazonの第1四半期決算では収益は357億ドル(約)、収益成長率は前年比22.6%増。CEOのジェフ・ベゾス氏はインド事業に楽観的な見方を示した。「我々のインドチームは急速に活動を前進させており、Amazon Primeが9カ月前に開始以来、品目を75%増加させた」。
▼Googleのアドブロック
開発が取り沙汰されているGoogleのChromeアドブロック。Chromeのブラウザとしてのパフォーマンスはほかに比べかなり高い。6割を超えるシェアはより高くなる可能性がある。Googleがブラウザ内の広告表示を支配できる可能性を提示している。
▼FBが元NYTベテランをニュースプロダクト部門長に
元ニューヨーク・タイムズ ニュースプロダクトバイスプレジデントのアレックス・ハディルマン氏が、Facebookのニュース製品部門長に昇進し、パブリッシャーの収益化を助け、偽ニュースと闘うという。Facebookはニュースパートナーシップ部門長にも元NBCニュース司会者を起用。ニュース関連部門にリベラル色の強い人材を置いている。
▼P&Gが5年で広告費20億ドル削減計画
世界最大級の広告予算をもつP&Gは第1四半期決算の後、100億ドル(約1兆1000億円)のコスト削減計画を打ち出した。その一環で広告費に関しては20億ドルを削減すると発表した。P&Gが設定している内訳はメディア費10億ドル、広告会社フィー5億ドル、店舗プロモーション5億ドル。
Written by 吉田拓史/ Takushi Yoshida
Photograph by GettyImage