CDO(最高デジタル責任者)という新しいエグゼクティブについて議論が進んでいる。数年前にはCIO(最高情報責任者)という役職の必要性が浮上し、導入する企業も多かったが、より包括的な企業のデジタル化の時代を迎え、CDOの必要性が求められている。
CDO(最高デジタル責任者)という新しいエグゼクティブについて議論が進んでいる。数年前にはCIO(最高情報責任者)という役職が浮上し、導入する企業も多かったが、より包括的な企業のデジタル化の時代を迎え、CDOの必要性が求められている。
損保ジャパン日本興亜ホールディングス(SOMPO)が導入して話題になったCDOはどのように機能するか。米「CDO Club」CEOのデイビット・マシソン氏、CDO Club Japan代表&創立者 加茂 純氏、Domo ジャパンカントリーマネージャー川崎 友和氏にインタビューした。
フルデジタル化を断行するCDO
マシソン氏はCIOとCDOの違いは明白だ、と語った。「CIOはインドのアウトソースと連絡することが主要な職務だろう。ITが当たり前につれて、CIOの役割は縮小している。CDOはサイロをまたいで企業機構をデジタル化していく」。
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「我々は必ずしも『CDO』という言葉にこだわっているわけではない。P&Gのような大手消費財メーカーはマーケティングドリブン。CMO率いるマーケティングチームにデジタル施策の強い権限を渡している。IT部門とマーケティング部門が対立することは、P&Gにとって致死的だ」。
「デジタルトランスフォーメーションを実現する人間こそ我々が規定する『CDO』だ。企業はフルにデジタルトランスフォーメーションを実施する時期を迎えている。さもなければ生き残れない。ディスラプター(破壊者)は新しいディスラプターに破壊されており、その破壊の頻度は上がっている」。
マシソン氏は顧客があなたの企業の競合になる時代だ、と語る。「Airbnbは完全にホスピタリティ産業をディスラプトした。彼らはホテルがすることを一切行わない。顧客が部屋を提供し、顧客がそこに泊まる。つまり顧客はホテルの競合になっているのだ。CDOはAirbnbのようなマインドセットをもたないといけない」。
人工知能とリアルタイムデータ解析
「2007年にiPhoneが出てパワーバランスが変わってきた。そしていまや人工知能 / 機械学習がトレンドだ。Watsonのような人工知能の力で画像からガンを発見したり、言語をほんやくしたりできるようになる。人工知能 / 機械学習をどれだけしなやかに使いこなせるかで差が大きくつく」。
「リアルタイムでのデータ分析が重要になる。小売店がその日の天候などをもとにその日の来店者数を予測する、ということが可能になる。気象条件で顧客のニーズも変わるのを見越してレイアウト変更をすることもできる」。
だが、必ずしもデジタルのなかでデジタル変革を起こす必要はないと、マシソン氏は語った。「Amazonは高級生鮮食品スーパーのホールフーズを買収した。Amazonは物理的な店舗を獲得し、消費者のもとにオンタイムで生鮮食品を届ける手段を手にした。これはフィジカルなビジネスをデジタル化する際にきわめて参考になるアプローチだ」。
日本の大企業の先行例はSOMPOか
CDO Club Japan代表 加茂純氏は日本ではCDOの適用がまだまだ遅いと指摘している。「日本ではまだはじまったばかり。CDOタイトルの人は10人に満たない。ニュービジネスのヘッド、デジタルマーケティングのヘッドという形で増えている。CEOや役員から使命を受けている。エグゼクティブ層はグローバルで話をして『急がなくてはいけない』と考えているようだ」。
「SOMPOの執行役員 / CDOの楢崎浩一は『完全に保険のことを考えなくていい。デジタル化について考えろ』と社長から名を受けている。日本企業のカルチャーを勘案すると外部から招く例が多くなるだろう」
BIソフトウェアDomoのジャパンカントリーマネージャー川崎氏は「ITからビジネス側に移り、めざましく活躍するケースが出ている。JALではIT分野の方がソーシャルでの顧客体験向上に成功した。外部から来るパターンに加えて、内部から着任する場合はITとビジネスのハイブリッドモデリングが必要になってくる」と語った。
Domo ジャパンカントリーマネージャー川崎 友和氏(左)「CDO Club」CEOのデイビット・マシソン氏(中央)、CDO Club Japan代表&創立者 加茂 純氏(右)、
「ビジネス側は『これをこうしたらうまく』というのは分かるが、それをどう実現すればいいのか、データは何処にあるのかは分からない。技術の方は実現方法やデータがどこにあるのかは分かるが、それがビジネスをどう変えるかイメージをもたない。ITとビジネス部門がエンゲージするところをCDOが担うことになる」。
加茂氏は「ただ、欧米と違うのはそこに戦略がまだ加えられていない点だ。データを観て戦略を瞬時に判断することが、社長の仕事。CDOが協力してデータをつくってCEOが判断するというサイクルを作らないといけない」と語った。
Written by 吉田拓史 / Takushi Yoshida
Photo by GettyImage