TikTok(ティック・トック)の広告活用が、ますます広がりを見せている。TikTokの広告パートナー、サイバー・コミュニケーションズ(CCI)は2月12日、講談社の女性誌『ViVi』の公式TikTokアカウントを活用した共同開発広告商品の販売を開始した。この共同メニューを開発した、担当者ふたりに訊く。
TikTok(ティック・トック)の広告活用が、ますます広がりを見せている。
TikTokを運営するバイトダンス(ByteDance)は1月18日、広告配信プラットフォーム「TikTok Ads(ティック・トック・アズ)」を発表。さまざまなターゲティング機能や簡単に動画広告を作成できる機能を有するこのツールによって、これまでユーザー拡大のフェーズにあったTikTokは、マーケティングプラットフォームとしての真価を、これまで以上に発揮することになる。
また、TikTokは2018年7月より、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(以下、CCI)と広告パートナー契約を締結。以降CCIは、数多くの広告主のTikTok活用を支援し、そのノウハウをどこよりも早く蓄積してきた。
さらにCCIは2月12日、講談社の女性誌『ViVi』の公式TikTokアカウントを活用した、共同開発広告商品の販売を開始。TikTokの広告メニュー「#(ハッシュタグ)チャレンジ」とViViのコンテンツ制作を組み合わせた広告商品を展開していくという。この共同開発広告商品を手がけたのが、CCIでバイトダンスチームに属している大本彩加氏と、講談社「NET ViVi」編集長の岡田幸美氏だ。
「いま、TikTokで人気なのが、ファッションやメイクアップに関するコンテンツだ。TikTokの運営でも非常に力を入れている」と、CCIの大本氏は語る。それに対して、ViViの岡田氏は「ただ単に楽しそうとか、かわいいというだけではなく、そこに何か実用的なものをきちんと入れていくのが、既存メディアが作るべきTikTokコンテンツだと思っている」と続けた。
この共同開発広告商品の詳細について、ふたりに伺った。

向かって左より、CCIの大本氏、講談社の岡田氏
とても素直なユーザーたち
DIGIDAY(以下、DD) 昨年以来、一大旋風を巻き起こしているTikTok。日に日にその存在感が増しているのは実感できるのですが、まだ新しいソーシャルネットワークサービスです。ブランドのマーケティング担当者には、実態が掴みきれていない方も多いと思うのですが、まずTikTokはどんなSNSなんでしょう?
大本彩加氏(以下、大本) 基本的にTikTokは、数万種類のBGMや多様なエフェクトを活用して15秒の動画を投稿する、ショートムービープラットフォームです。
さらにいうと、TikTokユーザーは好き嫌いがはっきりしていて、とても素直。ほかのSNSに比べて、「おもしろい、かわいい、かっこいい、すてき」というものに対して、すごくストレートな反応を示し、エンゲージメントが高いところも特筆すべきところです。
DD なるほど、やはりほかのSNSと比べると、若々しさを感じさせますね。実際、雑誌『ViVi』の読者とも相性はいいのでしょうか?
岡田幸美氏(以下、岡田) ViVi読者も、普段からTikTokはよく見ています。ただ、TikTokへ頻繁に投稿するヘビーユーザーは、ViVi読者(10代後半から20代を想定)のなかでも若い世代が中心ですよね。少し大人な自分たちとしては、投稿はちょっと抵抗がある、という意識が強いのだと思います。
なので、雑誌『ViVi』のオフィシャルサイト「NET ViVi」のTikTok公式アカウントの運用をはじめるにあたっては、まずはダンス以外で見てもらえそうなアウトプットを探していきたいですね。そこを専属モデルと一緒に取り組むのが、はじめのトライかなと思っています。
大本 実際にいま、TikTokで人気が伸びているのは、ファッションやメイクアップ、旅行、グルメに関するコンテンツです。TikTokの運営側でも、そういった分野のコンテンツの投稿促進に、非常に力を入れていますね。
ちなみに、ViViのSNSフォロワー数は、各種SNSすべてを合わせて180万人。いわゆる赤文字系雑誌のなかでは、もっとも多いですし、発信力も高いんです。
SNSに強い『ViVi』編集部
DD SNSにも強い、女性誌なんですね、ViViは。
岡田 「NET ViVi」は、雑誌コンテンツのほか、オリジナルの記事もたくさん掲載しています。また、「NET ViVi」のすべての記事はSNSから配信していて、ViViが運用しているチャネルのハブ的な存在でもあります。読者の多くはSNS経由ということもあって、SNS運用にはかなり力を入れているんです。
運営しているSNSは、インスタグラム、Twitter、Facebook、LINE。そのほか、YouTubeに「vivichannel」、ameba FLESH LIVEに「ViVi.ch」という公式チャンネルを開設していて、定期的に生放送を配信しています。
DD そこに、今後TikTokも加わると。
岡田 そうですね。やはり、ViViには「世代メディア」という側面があります。つまり、読者とともに成熟していくのではなく、新しい読者をどんどん獲得し続けなくてはいけません。ちなみに、現在の「NET ViVi」ユーザーのボリュームゾーンは、雑誌『ViVi』読者よりもやや高め。我々が設定する20代前半の世代にアプローチし続けるためには、インスタグラムよりもさらに若い人たちが多く利用するTikTokもやるべきだ、と以前から考えていました。そんなときに、大本さんから今回のお話をいただいたんです。
大本 TikTokの広告パートナーとして、我々はViViに3つの大きな魅力を感じていました。1つめは、SNSが非常に強いということ。2つめは、母体である雑誌『ViVi』には、創刊から35年のあいだ積み重ねてきたブランド力があり、本誌に確実にファンが付き続けていること。3つめに、年に2回ほど「ViVi Night」というリアルイベントも主催していて、その動員力も高いことです。
しかも、それら3点が連携しており、いうなればViViブランドのメディアミックスとなって、すべての接点を繋ぐような企画を広告商品として揃えている。複数のタッチポイントが必要になる現在のマーケティングにおいて、突出した成功ブランドの1つだと思ったのです。
岡田 TikTokだけでなく、各種SNSは、タッチポイントを増やすためにも重要です。雑誌の顔ともいえる「ViViモデル(総フォロワー640万人)」に加え、ViVi公認インフルエンサーという位置づけの「ViViガール(総フォロワー160万人)」たちも各種SNSを展開しており、その総フォロワー数は800万人(2019年2月現在)にもなります。彼女たちのSNSも、ViViのブランディングに大きく寄与していますね。

「ViViには『世代メディア』という側面がある」と語る岡田氏
ViViが手がけるTikTok
DD やはり、それぞれのSNSごとに、ユーザー属性は違うんですか?
岡田 大きく違います。SNSごとに読者のタイプや好みが異なるので、大事な企画は何パターンも作り分けるんです。たとえば、写真とテキストで構成したものを動画化したり、視点を変えて編集しなおしたり…。若い世代は「めんどくさいことは嫌い/しない」が行動原理にあるので、面倒だと感じそうなポイントをあらかじめ解消する工夫は欠かせません。
大本 ViViのSNSを見ていると、それぞれのSNSの特性を踏まえて出し分けているのがよくわかります。
岡田 SNSのトレンドの移り変わりは本当に早い。それに対応するためにも、編集部員それぞれがSNSを担当して得た知見を、きちんと溜めて、シェアする、という作業を細かく行うようにしています。
DD しっかりと結果を残すためには、そういった努力は欠かせないですよね。ちなみに、ViVi読者のキャラクターは、どういったものなのでしょう?
岡田 ファッションに興味がある平均年齢21歳がコアの部分です。ただ、ViVi読者が支持しているのはファッションそのものというよりも、自分らしさを楽しむこと、何物にも媚びない姿、モテだけを意識しないスタイル、というスピリットの部分が大きいと感じています。
大本 トレンド好きでもありますよね。興味の幅が広くて、ノリがいいイメージもあります。
岡田 そうですね。トレンドを一番に知って、真っ先に手に入れたいというミーハーな子が多いです。ViViとは、その欲求に応えるメディアであるとも思っています。
そういった読者に向けて作るべきTikTokコンテンツは、ただ単に楽しそうとか、かわいいというだけではなく、そこに何か実用的なものきちんと入れていったものなのかなと思っています。私たちがコンテンツのバリエーションを見せることで、いまは見ているだけのViVi読者もアクティブに発信できるような、そういった展開をしていきたいですね。そのうえで、タイアップなどにもしっかり取り組んでいきたいです。
ダンスばかりではない
DD いよいよ核心に触れてきました。では、TikTokのタイアップはどのように展開していくお考えですか?
岡田 まずは、読者が楽しめる表現を優先して出すことが大事。広告主さんにもいろいろご希望があることは理解していますが、最終的には広告主さんにもきっとプラスになると信じています。TikTokではその意識が、より強く求められるのではないでしょうか。
若年層向けコンテンツの制作は、「これがウケる」というインサイトをきちんと言語化して、広告主に説明する作業に多くの労力が必要です。説明スキルを磨くために、日々努力していますね。ただ、最終的には、多少違和感があったとしても、ご理解いただくしかないのですが。
大本 キーになるのはコミュニケーションだと思います。ユーザーとコミュニケーションを取るためのコンテンツを提供することで、それが企業でも、広告主でも、メディアでも、忌避することなく受け入れてくれるはずだと考えています。
DD タイアップでTikTokユーザーに受けるポイントを理解するのは大変そうですね。
岡田 大変ですね。日々TikTokを見て触っていますが、おすすめに流れてくる動画は、使うごとに自分に最適化されてくる…。なので、常に想定ユーザーの気持ちで触らないといけないのが大変です。
大本 AIが常に回っていて、コンテキストで個人に最適化するので。ついうっかり、犬猫の動画ばかり見ちゃうと、犬猫の動画がかなり多いフィードになります。
岡田 おすすめ画面は個々に最適化されるという理解が広まっていないので、それぞれ自分が見ているものをベースに「TikTokってこういうもの」という話になってしまうことが多い。建設的な話し合いを進めるための基礎として、「対象ユーザーが見ているTikTok」とはどういうものか、その認識をまず一致させるのが難しいです。
大本 40代男性にとってのTikTokと、18歳女性にとってのTikTokはまったく別世界なんですよね。18歳のViVi読者が見ているTikTokは、モデルがウォーキングをしていたりとか、原宿で流行っているお店が載っていたり。あと、韓国旅行とか変顔メイクも多いと思います。かわいい女の子がダンスしているだけではないんですよ。

「40代男性にとってのTikTokと、18歳女性にとってのTikTokはまったく別世界」と大本氏
「案件」を知るユーザーたち
DD そんな世界が広がっていたとは…。そうなると、ますます広告は、受け入れてもらえなさそうな印象がします。
大本 びっくりしたんですが、若いユーザーのみなさんは、広告のことを「案件」って呼ぶんですよね。
岡田 ViViの読者たちも「案件」は使っていますよ。フィードを眺めていると、「案件きた」とかいって。別に業界に関わりがあるような子ではなく、ごく普通の子たちです。
大本 その一方で、広告であってもレスポンスがいいものもあって、そこが非常に面白いと思います。
岡田 広告だから一律にダメというわけではないんですよね。
大本 そうなんです。ユーザーは、そこから発信されるコンテンツが自分にとって有益かどうか、不快ではないか、を見ているように思います。「広告だから嫌」ではなくて、「押しつけが強くて全然楽しませてくれる気がないから嫌」という感じでしょうか。
DD これまた、新しい発見だ…。不思議な感じがしますねぇ。ちなみに、TikTok向けに、CCIとViViが共同で開発予定の広告商品とは?
大本 いま考えているのは、「TikTok #チャレンジ」です。企業がお手本動画を作って、それをもとに投稿してもらう、いわゆるUGC(ユーザー生成コンテンツ)マーケティングです。そのお手本動画をViViモデルやViViガールが登場するViViテイストで作っていただいて、クライアントのアカウントから発信し、ユーザーに真似してもらう、ということを考えています。
岡田 何事も早くはじめたほうがリターンは大きい。ViViブランド全体の底上げのためにも、いろいろ取り組んでいきたいです。SNSで話題になると、紙の実売も上がりますし。
大本 TikTokは気になるけど、どう活用していったらいいのかわからないと、二の足を踏んでいる企業はたくさんいらっしゃると思います。CCIとしては、今回のViViの事例を踏まえて、ほかの業種で参入を検討している企業にもどんどん広げていきたいと考えています。
▼大本 彩加(写真左)
株式会社サイバー・コミュニケーションズ
2016年CCI入社。インターネット広告営業を経て、2018年よりTik Tokの広告商品開発を担当。
▼岡田 幸美(写真右)
講談社 「NET ViVi」編集長
2005年講談社入社。ViVi編集部でファッションを担当後、FRaU編集長→NETViVi編集長。
Sponsored by サイバー・コミュニケーションズ
Written by 内藤貴志
Photo by 合田和弘