「 燃え尽き症候群 」対策が進む、米・エージェンシー業界:「風向きが変わった」

エージェンシーの多くは、燃え尽き症候群を報告する若い従業員たちの増加を目の当たりにしている。

彼らは顧客にいつも満足してもらえるようにペースの速い労働環境、長い勤務時間、厳しい予算、そして過酷な期限に直面しており、燃え尽き症候群は買い手市場から生まれる症状であると考える人がいる。また、若い従業員、特にミレニアル世代は、仕事モードからの切り替えまたは、仕事と生活の境界を設定する方法を知らないから燃え尽きてしまうのだろうと信じている人もいる。燃え尽き症候群がどのように表れるか、そして従業員たちがどのようにそれを報告しているのかは、エージェンシー、そして従業員によって異なる。

クリエイティブ・エージェンシー、ウィーアーマジック(We’re Magnetic)のプレジデント、ジェシカ・レズニック氏は、若手従業員の燃え尽き症候群を認識することがマネージメントにおける良い教訓になったという。ある若いクリエイティブは、プロジェクトを完了させるために休みを取らず、休暇をあきらめようとした。だが、レズニック氏は彼女に休暇を取るように説得した。「仕事よりも自分のことを優先するよう、これまで誰からも強いられたことがなかったことに関して、彼女から心動かされるメモを受け取った」と、レズニック氏は述べた。「それは私にとって、この従業員を監督することに関する真実を垣間見た瞬間だった。彼女は自分の心のバランスを取ることができなくなっていた。彼女には休みを強制する上司が必要だった。私が休むように説得し、彼女は自分が燃え尽き症候群だと自己診断する事態にまでは至らなかった」。

ミレニアル世代の燃え尽き症候群は、今年の大きな話題となっている。同時に、エージェンシーの情報筋は、業界のメンタルヘルスと燃え尽き症候群への対応方法に文化的な転換があったという。燃え尽き症候群に対抗するため、午後7時以降はeメールに返信しない、週末にSlackは使わないなど、エージェンシーたちは新しい方針を採用している。DIGIDAY+の調査によると、エージェンシー従業員の32%がメンタルヘルスについて心配しているといい、そういった方針に従うことは理にかなっている。

「15年前であれば、エージェンシーは燃え尽き症候群という考えを受け付けなかった。風向きは良い方向に変わり、現在我々は肉体的および精神的な健康に注意を払っている。自分のスタッフに注意を払っていれば、燃え尽き症候群の兆候がわかる」とインディペンデントスタジオ、ザンベジ(Zambezi)のプレジデント兼CEOであるジーン・フリーマン氏は語った。

燃え尽き症候群を報告する従業員を見守り、耳を傾けることの重要性を付け加えながら、エージェンシーの情報筋は、従業員を観察し、彼らが自己診断する前に燃え尽き症候群を発見することが重要であると説く。エージェンシーが時間を設けて従業員の燃え尽き症候群を認識しなければ、その症状は簡単にほかの人間に広まり、エージェンシーの文化に悪影響を及ぼす可能性がある。

「すべての管理者は、絶えず燃え尽き症候群を監視しなければならない。ある者が自己診断を迫られる前に、互いに助け合うためにできることはたくさんある」と、ピュブリシス・ヘルス&サーチ・ウェルネス(Publicis Health & Saatchi Wellness)のグローバルCCO、キャシー・ディレイニー氏は書いている。そして同氏は、7月前半にも燃え尽き症候群の事例を取り扱ったことを付け加えた。

燃え尽き症候群の兆候を探す

通常、燃え尽き症候群に苦しんでいる従業員は、疲れ切っているとは明かさないが、ストレスを感じ、精神的に参っている、または休憩を必要としていることを上司や人事部に伝えようとする。そのような従業員からの申し出に対処することは、従業員たちが上司に話をする際、もっとリラックスできる、より強いエージェンシー文化を育むことに役立ち、さらには定着率にも貢献するだろうとデジタルブランドエージェンシー、ウィー・アー・ファイン(We Are Fine)の人材および人材運用ディレクター、リズ・ハウ氏は述べている。同エージェンシーは、従業員に対して緊急事態を除き、業務時間外のやり取りは必要ないと伝えるよう検討していると付け加えた。

「吐き気と過敏症が燃え尽き症候群のもっとも顕著なサインだが、倦怠感もその大きな兆候のひとつだ。士気とやる気の低下、そして自分のチームと目の前の仕事への冷笑的な姿勢も指標になる」と、フォースマン・アンド・ボーデンフォー(Forsman&Bodenfors)の人材グローバルボードメンバー、ミシェル・プロタ氏は述べた。

エージェンシーの情報筋によると、ジェネレーションXやジェネレーションZ世代よりもミレニアル世代に影響を与える傾向を示す燃え尽き症候の増加原因の一端は、時間を問わずすべてのeメールまたはSlackに返答することを強いられていると、従業員たちに感じさせる常時接続のスマートフォン文化の台頭によるのかもしれないという。

ひとりに限ったことではない

DNAシアトル(DNA Seattle)の人材と文化の責任者であるシャーリーン・ショート氏は、予防と兆候の発見に積極的な役割を果たすことは、長い目で見ればエージェンシーの助けになると語る。従業員、特に大きな新事業のピッチやプレゼンに数週間を費やしてきた従業員に、調子はどうであるかを尋ねることは、恥じ入ることなく燃え尽き症候群を報告できるようにするのに役立つだろう。従業員と上司、そして人事部とのあいだで開かれた対話を続けることは、従業員の日常業務を切り替え、単調な業務によって燃え尽き症候群が引き起こされないようにするのにひと役買うかもしれない。

「チームのメンバーに調子はどうなのか、どんな支援が必要なのかを単純に尋ねるだけで、すべてうまくいくかもしれない」と、プロタ氏は述べている。フォースマン・アンド・ボーデンフォーは、従業員が昼休みを取ることを可能にするため、午後12時15分から午後1時までの時間帯は社内会議を禁止する方針を最近導入した。

エージェンシーは、燃え尽き症候群の従業員を解雇することについては慎重になるべきだ。燃え尽き症候群を無視することはエージェンシー文化へ弊害をもたらす可能性があるからだ。燃え尽き症候群はオフィスの雰囲気に影響を与えるだけでなく、エージェンシー業務の協調的な性質を考慮すると、創造性と定着率を損なう可能性もある。

「燃え尽き症候群は伝染性だ。ある従業員の気分が変わると、一緒に仕事をしたり、同じ空間にいたりする人々に大きな影響を与える可能性がある。新鮮なアイデアが仕事の基本となるクリエイティブな分野では、誰かひとりがモチベーションと楽観性を欠いてしまうと、チーム全体に悪影響が及ぶ」と、ディレイニー氏は書いている。

Kristina Monllos(原文 / 訳:Conyac