いまでは笑い話だが、コロナ禍以前は、会議室に突然子どもが入ってくるなど、まったくもってあり得ないことだった。そこで、米DIGIDAYは今回、幼子がいるなかでのリモートワークが引き起こす、思わず笑える/イライラしてしまう瞬間について訊ねた。以下はその傑作選だ。なお、発言には多少編集を加えてある。
いまでは笑い話だが、コロナ禍以前は、会議室に突然子どもが入ってくるなど、まったくもってあり得ないことだった。仕事と私生活の線引きはしっかりとされているのが当たり前だった。だが、それからわずか1年、事態はすっかり様変わりしている。
くり返すロックダウン、長期休校、保育支援の慢性的不足――そんな状態が1年近く続いているが、戦いに疲れながらも、親たちはいまだ、1日24時間/週7日、フルタイムのリモートワークと子どもの世話/ホームスクーリングの両立に悪戦苦闘している。
そこで、米DIGIDAYは今回、幼子がいるなかでのリモートワークが引き起こす、思わず笑える/イライラしてしまう瞬間について訊ねた。以下はその傑作選だ。なお、発言には多少編集を加えてある。
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マイクをオフにしたはずなのに
ディジタス(Digitas)CEO、ダニ・バッシル氏
「報告の最中に、椅子が壊れたことがある。まさにぐしゃっと。その瞬間、私は画面から消えた。「きゃああっ」という叫び声とともに。で、再び画面に登場した、何ごともなかったかのような顔で。クライアントへのプレゼン中に、すぐ横で犬が吐いちゃったことも。それと、よくあるのが、娘のキキ(1歳)がヘッドフォンのコードをつかんでいて、私はそれに気づいていなくて、喋っている人の声がいきなり聞こえなくなる、とか」。
「でもやっぱり、最高傑作はこれね。3匹いる犬が一斉に吠えまくっていて、キキが全力で泣いていて、しかも玄関の呼び鈴が鳴って、私はビデオ通話中のクライアントに「申し訳ございません」と言って、席を外した。で、マイクをオフにしたつもりで、思いきり怒鳴っちゃった。『このバカ犬! お黙りっ!!』。ちゃんとオフにしたはずだったんだけど、なってなくて。しかも、そこまでしてわざわざ玄関に行ったのに、それは待っていたAmazonの配達じゃなくて、引っ越しの挨拶に来た近所の人だった…」。
「オフィスに早く戻りたいかって? もちろんよ」。
5年生の娘がトカゲに逆上
スキンケア企業セント・ジェーン・ビューティ(Saint Jane Beauty)創業者/CEO、ケイシー・ジョージソン氏
「うちのホームオフィスは、Zoomで授業を受けている3人の娘との「コワーキングスペース」。「シーっ、ママ、いま大事なお話し中なの」は、会社のチームのみんなには、もうお馴染みの台詞ね。珍事はいくつもある。そばでZoom授業を受けていた5年生の娘がいきなり窓を割っちゃったり(窓にトカゲがいたらしい…)、セフォラ(Sephora)との打ち合わせ中に、最近飼い始めた子犬のロッキーが私のスリッパにおしっこをしちゃったり。娘の算数の授業中はいつも何かしら緊急事態が起きるし、インターネットの接続はよく切れる。でも、チームのみんなはもう慣れたもので、少々のことでは動じない。混沌のなかをどうにか進んでいるいま、みんなの忍耐と理解は本当にありがたい」。
でんぐり返しと同時のことで…
メディアコム(MediaCom)U.K.COO、ルーク・ボジート氏
「ある雨の日、僕はいつものように自宅で仕事と勉強に取り組み、Teamsでの最後の通話を終えて、リビングに向かった。するとそこには、一日中家に閉じ込められたせいで溜まりに溜まったエネルギーを爆発させている8歳の息子が。そこはソファといろいろなクッションを並べて作った遊び場になっていて、息子はそこら中で跳ね回っていた。僕は四つん這いになって、床に散らばっていたデジタル機器の数々を拾おうとした。でもそれはあいにく、[息子]サムのでんぐり返しと同時のことで、彼のかかとが見事、僕の左目を直撃。目の回りには、しっかりと黒いあざが」。
「それからというもの、ビデオ通話のたびに、初めの5分は毎回、何が起きたのか説明しないとならなくなった。しかも、僕はメディアコム(MediaCom)が持っている[安心安全が売りの]セーフルームでそれをしていたわけで…やれやれ」。
新しい言葉を覚える子どもたち
ワンダー・ビューティ(Wander Beauty) CEO/創業者、ディヴィア・ググナニ氏
「私のオフィスライフと子どもたちのスクールライフとの境界線が曖昧になった。それはつまり、私の仕事の電話を子どもたちが日常的に耳にするということで、彼らはあっという間に新しい言葉を覚えてしまった……フ**クとか、シ*トとかも。結局、私は自分の口に検閲をかけるのを完全にあきらめた。露骨な表現が出てくる歌も、わが家のダンスパーティでは解禁です」。
「最近、娘(6歳)が大きくなったらCEOにはなりたくないと言いだした。理由は、『ママはいつもおしごと、おしごと、おしごとで、おはなし、おはなし、おはなしばっかり。おあそびのじかんがぜんぜんないの。あたしは、おあそびのじかんがすきだから』。[息子の]アシュヴィン(8歳)はアシュヴィンで、フルタイムの仕事には絶対に就きたくない、やることが多すぎるから、と。少し前に、ビデオ通話で就職希望者の面接をした際、その応募者はパートタイム希望で、コロナ禍で子どもの世話が大変だから、やることが多すぎるフルタイムとの両立は無理だと言っていた。息子はそれを聞いていたわけです!」
猛暑が続いた、ある夏の日
電通メディアU.K. CEO、ハミッシュ・ニックリン氏
「私には7歳と9歳の娘がいます。猛暑が続いた昨年の夏、ふたりはよく庭の子ども用プールや水まきホースで遊んでいた――ほぼいつも、何も身につけない状態で。ある日の午後、世界各国のメディアチームとの大きなビデオミーティングを終えようとした瞬間、下の娘がいきなり書斎に飛び込んで来た。もちろん、真っ裸で。そして、頭のてっぺんから出るような大声で、『パパー、もうあっつあつー!(I’m so hot!)』。いまの会社にはコロナ禍中に入ったので、その時は2カ月も経っていなかったし、ミーティング参加者の誰とも、実際にはまだ会ったことがない。それは通話を終える文字どおり直前のことで、だから誰かに見られたのかどうかいまだにわからない。不安です…」。
「パパっ、ゆき、ゆき!」
パブリッシャーテックサプライヤー、ワンプラスエックス(1plusX)セールス部門VP、マルコ・ドーメン氏
「深夜、家族に迷惑をかけず、邪魔もされずにクライアントとビデオ通話ができるようにと、自宅の地下にホームオフィスを構えています。ある晩、クライアントとの通話中のこと。6歳になる娘が目を覚まして、抱っこしてもらいたいと思ったらしく、地下のオフィスまで下りてきた。幸い、通話中の相手は理解のある方々で、それで10分ほど小休止を取りましょう、ということにしてくれた……『抱っこ休憩』を。それと、2週間ほど前、大雪が降ったときのこと。ひっきりなしに続くビデオ通話の最中、突然、オフィスの扉がバタンと開いたと思ったら、ふたりの子どもが大声を上げて駆け込んできた。『パパっ、ゆき、ゆき! おそとでゆきだるまつくって!』。コロナ禍の前は、まさかそんな状況が現実になるとは、思いも寄りませんでした。でもいまは、24時間年中無休で、仕事と家庭がごちゃまぜの状態。どうにか両立しようと、奮闘の毎日です」。
ショックで固まるクライアント
ピュブリシス・グループ傘下スパーク・ファウンドリー(Spark Foundry)CIO、リー・ライス氏
「重要なバーチャルピッチ当日、準備は万全だった。自分の番が近づくなか、私は数字をもう一度見返した。いざ、勝負! 自信に溢れた満面の笑みをクライアントに向けて、私はミュート解除ボタンを押した。でもその瞬間、私のマイクが発信したのは、データや数字を雄弁に紹介する私の声ではなく、血も凍るかと思うほどの絶叫。金切り声の主は1歳半の娘で、お昼寝から目覚めた途端、見事なまでにご機嫌斜めで大泣きを始めてしまったんです。ありがたいことに、クライアントは最初こそショックで固まっていたけれど、すぐに状況を理解して、笑ってくれて、おかげで打ち解けることができたから、結果的には良かったのですが」。
「息子(4歳)も少しですが、ミーティングの役に立ってくれたことがあります。相手はとあるメディアオーナーで、最初は困惑していたけれど、オチも何もない息子のノックノックジョーク[なぞなぞ/駄洒落]に付き合ってくれた。息子のおかげで、みんなが明るい気持になれていることだけは、たしかです」。
トイレから出てきた息子が
ハヴァス・メディア・グループ(Havas Media Group)U.K.&アイルランドCEO、パトリック・アフレック氏
「これは鮮明に覚えている。ビデオ通話で幹部チームと業務に関する打ち合わせ中のこと。息子(5歳)がトイレ――間に合わせのホームオフィスの真向かい――から出てきたと思ったら、大声で『ねえ、パパあー、こっちきて、おしりふいて-!』。その後、出席者全員、会議への集中に難儀したのは、言うまでもありません」。
娘の友だちとのビデオ通話
メディアコム(MediaCom)グローバルコミュニケーション部門ディレクター、ガイ・メルザック氏
「ロックダウン~解除~再びロックダウンという11カ月が過ぎ、娘(5歳)が学校の友だちに会えないせいで、孤独感を募らせるようになった。そこで、親しい子たちとオンラインで会えるように、毎週ビデオ通話の時間を設けることにした。ただし、ほぼ毎回、親の狙いどおりには行きません」。
「私たちがいくら呼んでも、娘は聞こえないふりをして、弟(3歳)と遊んでいる。もしくは、通話が始まった途端、ひとりで勝手に『ショー&テル[自分の好きなテーマについて、クラスメートの前で話す授業]』のまねごとを始める。しかも持ってくるのは、どこから見つけてきたのか、もう何年も触っていない玩具とか、ごく当たり前の日用品――最近では、たとえば水切り用のざる――とか。カメラの前に来てくれたとしても、モニターの向こうにいるお友だちを完全に無視して、部屋のなかをうろうろ。通話を切る時間になっても、さようならも言いたがらないし。それでいて、切ったら切ったで、今度は30分くらいわんわん泣きどおし。さっきまで話そうともしなかったお友だちに会いたい、と」。
可笑しくもあるし、末恐ろしくも
スターコム(Starcom) ストラテジーディレクター、エルスペス・スペルジニ氏
「5歳になる娘が最近、ベッドに入る時間を引き延ばす作戦として気に入っているのが、私のデスクに座って、夫のヘッドセットをつけて、電話会議に出ているフリをする、という遊び。判読不能の何かを書きながら(私が仕事で取るメモの筆跡に、ぞっとするほどそっくり!)、私の口調をまねて「ダーレン、そっちのがめんをシェアして」とか、「Jamboard(ジャムボード)にアクセスできないの」……それもまた、可笑しくもあるし、末恐ろしくもあります」。
iPad禁止の約束を
メディアコム・システム・アクセセレーション&コネクテッド・エグゼクション(MediaCom Systems Acceleration and Connected Execution)マネージングディレクター、フェリシティ・ロング氏
「ロックダウン中の金曜日は毎週、3歳と6歳の息子を預ける所がないので、まさにドタバタです。奮闘の始まりは朝8時。まずは、子どもたちを速歩きの散歩に連れて行く。無尽蔵のエネルギーを少しでも消費させられれば、との願いを込めて(ただし毎回、ほとんど役に立たない)。昔は、iPad禁止の約束をちゃんと守らせていたのに、いまはもう、どんなに引っ張っても午前11時でギブアップ」。
「駄々をこねるのを少しでもしずめようと、仕方なくお菓子をあげることもあるし、頼みの綱はマクドナルドのドライブスルー(以前は車で出かけたときの特別なご褒美だったのですが)。で、その埋め合わせというか、罪滅ぼしの意味も込めて、トランポリンを買って、庭で遊ばせたり。ただありがたいことに、同僚はみんな理解があって、ビデオ通話をしながら台所に立つのも許してもらっています。上司もそうで、元気の有り余った息子たちが『終了! 終了!』の大合唱を始めるといつも、君の都合の良い時間にかけ直すから、と優しく言ってくれる。最近は、身体に良くないのはわかっているのですが、かなり遅くまで起きているようになった。深夜、誰からもあれこれ訊かれなくて済むひとりの時間は、心からほっとできるので」。
JESSICA DAVIES(翻訳:SI Japan、編集:長田真)