エージェンシーを通さずに、インスタグラムやソーシャルメディア上の有名人と、直接クリエイティブの製作を行うブランドの数が増えている。これまでインフルエンサーは、エージェンシーのディレクションによって、コンテンツ生産マシーンのように扱われていたが、いまは違うのだ。
エージェンシーを通さずに、インスタグラムやソーシャルメディア上の有名人と、直接クリエイティブの製作を行うブランドの数が増えている。これまでのインフルエンサーは、エージェンシーからのディレクションによって、コンテンツ生産マシーンのように扱われていたが、いまは違うのだ。
従来エージェンシーは、インフルエンサーの元を訪れて、写真やビデオの種類を詳細に記したストーリーボードを見せ、リクエストするということを行っていた。それに対して、クリエーターたちは自分のチャンネルに投稿するという形で応える。そういう流れだった。
しかし最近は、インフルエンサーを直接クリエイティブスタッフとして活用するブランドが増えている。RFP(提案依頼書)を見せ、彼らにキャンペーン全体のプランニングと遂行を委ね、広告にしているのだ。
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より安く、より早い製作体制
これは業界の流れを変えつつある。より安く、より早いこの製作体系でもって、インフルエンサーたちがコンテンツ部門として、エージェンシーの代替機能を担っている。今年行われたスーパーボウルでは、その直前の金曜日にビールブランド・バドライト(Bud Light)を抱えるアンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch)は、ハッシュオフ(Hashoff)という会社にコンタクトをとった。ハッシュオフはインフルエンサー測定企業である。
ハッシュオフとアンハイザー・ブッシュはともにFacebookとインスタグラムにおける20人のマイクロインフルエンサーを特定した。そしてインフルエンサーたちは画像とビデオを合計で40本製作。バドライトはこれを、スーパーボウルが開催される週末に利用した。その結果、86万6000のオーガニックビューを集めている。
バドライトはNFLのドラフトが行われる週末にも同じことを行った。下にあるのはバドライトが広告として使用した投稿の例だ。
ハッシュオフのCEOであるジョエル・ライト氏は言う。「マーケットはいま、大きな動きを見せており、そこにおいてブランドたちは、テクノロジーを使ってインフルエンサーたちと関係性を築くことができている。そして、その関係性を継続的なものにしたいと、考え方は進化しつつある」。
リテールチャンネルでも再利用
インスタナチュラル(InstaNatural)は、オンラインをメインに販売するスキンケアブランドだ。彼らは完全にエージェンシーを避けて、インフルエンサーを起用してきたと、CMOのエセルバート・ウィリアムズ氏は言う。
ソーシャル上の有名人によって作られたインスタナチュラルのコンテンツは、あらゆるところで見られる。ソーシャルのチャンネルはもちろん、ほかのリテールのチャンネルでもそうだ。たとえば、@villemo20による下の投稿は、インスタナチュラルのスキンケアプロダクトだが、これをAmazon上でも利用した。

インスタナチュラルのインフルエンサー画像
「インフルエンサーたちは消費者たちの体験という面で、ソーシャル上の信頼を勝ち取るために非常に重要だ。インフルエンサーたちと直接協働することで、ブランド体験に関して、より強いコントロールを持つことができている。また彼らともより深い関係性を築いている」と、ウィリアムズ氏は語る。
依頼するには事前調査が重要
ブランドのインフルエンサー協働を支援し、そしてクリエイティブチームとして機能させる企業デルモンド(Delmondo)のCEOニック・シセロ氏は、ブランドとの仕事では、必ずリサーチが必要になるという。どんなタイプのインフルエンサーとマッチングするべきか検討しなくてはいけないからだ。そこからインフルエンサーへ提供するブリーフを製作する。そして、クリエイターたちはストーリーボードの形で返答し、最終的にはコンテンツの製作となる。
デルモンドは現在、大手コンピューターブランドのためにインフルエンサーを検討中だ。今回はインスタグラムとSnapchatにおけるペイド広告として配信されるコンテンツを作る予定となっている。
インフルエンサーをこのような方法で利用しているブランドは、ほかにもある。その好例が、ショーン・マクブライド氏だろう。彼はSnapchat上で人気を集めるクリエイターだ(Shondurasとして知られている)。先月、彼はバイアコムのマーケティンググループのクリエイティブ戦略コンサルタントとなる契約を結んだ。
マクブライド氏はオリジナルコンテンツを製作するとともに、バイアコムのソーシャル上のすべての広告キャンペーンに対してコンサルタント業務を行うとバラエティは報じている。彼が取り組んだ企画提案には「Shonduras承認」のスタンプが付くことになる。
関係者をコンパクトにしたい
インスタナチュラルのウィリアムズ氏は、エージェンシー手数料を無くすことができるためインフルエンサーたちは多くの場合コストが安くつくと言う。そして同じくらい重要なのが、ブランド体験やコンテンツへのコントロールをより強く握ることができることだろう。
「エージェンシーが釣り上げる高額設定、クリエイティブの手数料といったもののなかで、ブランドたちは直接(インフルエンサーたちと)取引をすることで節約ができている」と、デルモンドのシセロ氏は言う。
ロレアル・パリスの英国ジェネラルマネージャーであるエイドリアン・コスカス氏によると、インフルエンサーたちはクリエイティブプロセスにおいて、非常に重要なパートであるという。ブランドたちがエージェンシーを使うときのように、コスカス氏はインフルエンサーたちをトラッキングするチームを抱えている。彼らのトゥルー・マッチ・プロダクトは、年間23人のインフルエンサーたちと契約をする。
「インフルエンサーたちにすると、フィードにただブランドを使う以上の責任を担うことができる。私はエージェンシーを通したくない。そして私たちは直接のコンタクトをもっている。それが一番の差別化を行えるポイントだ。もしエージェンシーを通して仕事をしたら、しかもさらにインフルエンサーたちのエージェンシーも関わってきてとなると、関わる人数が多くなりすぎる。それによって、コミュニケーションと予算を失うことにもなる」と、コスカス氏は締めくくった。
Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)
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