マーケティングの インハウス 化、儲かるのはコンサル企業

エージェンシーの損失は、コンサルティング企業の利益だ。

アクセンチュアインタラクティブ(Accenture Interactive)やPwC、デロイトデジタル(Deloitte Digital)などのコンサルティング企業はどこもいま、こんな文言をマーケター向けピッチの中心的信条のひとつにしている。「マーケティングの主導権を取り戻したければ、私たちがお手伝いしますよ」だ。彼らコンサルティング企業を活気づけているのは、最高マーケティング責任者(CMO)の壁を超えて築かれるより強固な関係と、彼らは単なるベンダーではなく、物事を客観視できるパートナーであるという一般認識だ。おかげで、彼らは広告主にとっての「トップ・オブ・マインド」な地位を維持できる絶好のポジションを獲得している。

たとえば、アクセンチュアインタラクティブの担当者によると、新たに発足した同社のプログラマティックサービス部門では、「インハウス化」がコアコンピテンシーのひとつとなっている。その業務の一端が、広告主がメディア能力を取り戻すための支援で、プログラマティック戦略の構築や、技術のインソース化、運用モデルの変更、社内能力の開発などに力を貸しているという。

コンサルティング企業の強み

アクセンチュアは現在、HPやラディソン・ホテル・グループ(Radisson Hotel Group)などの企業と取引を行っている。ラディソンにとってアクセンチュアは、カスタマージャーニーの主導権をサードパーティのパートナーから取り戻すための手段のひとつだった。そして、アクセンチュアなら同社が望む結果をもたらしてくれるはずと安心して頼れる存在だった。

HPでCMOを務めるアントニオ・ルシオ氏は、主導権の奪回という総括的ミッションの一環として、外部能力の本格的な一掃を声高に求めてきた人物だ。その大半は、エージェンシーではなく、ブランドが主導権を握り、顧客に対する最終的な責任を負わなければならないというマインドセットの変化によって実現できると、ルシオ氏はいう。「今日、マーケティングを行うためには(中略)ディープアナリティクスやインサイト能力、クリエイティブコンテンツ、プログラマティックバイイング能力が必要だ。ブランドはクライアントとして、これら領域の4つか5つについて、社内で能力を育成すべきだ」と、同氏は5月に配信された米DIGIDAYのポッドキャスト「スターリングアウト(Starting Out)」で語った。

「こうしたケースでコンサルティング企業がもっとも力を発揮するのは、組織の構築・再構築やデジタルトランスフォーメーションなどの領域だ」と語るのは、コンサルティング企業アーク・アドバイザーズ(Ark Advisors)のパートナー、アン・ビロック氏だ。「企業がプログラマティックやコンテンツ、あるいはデジタルやプロダクションを社内で行う場合、経営幹部が彼らとコネのあるコンサルティング企業に頼めば、新たにインハウス化された機能の組織・プロセスの構築を手伝ってもらえる」。

興味深い疑問への回答

業界にとっての興味深い疑問を、ビロック氏は次のように述べる。「インハウス化の決断が下される前にコンサルティング企業は口を挟んでいるのか、それとも彼らは最初からこの決断の当事者なのか」だ。

あるエージェンシーの幹部(現在、某コンサルティング企業から仕事のオファーを受けているため、匿名希望)によれば、ほとんどの場合が後者だという。コンサルティング企業各社は透明性や広告主の実権を求める声の高まりによって活気づいており、全米広告主協会(以下、ANA)が2016年に発表した、エージェンシービジネスにまん延するさまざまな問題や、デジタル広告のエコシステム内でいまも続く詐欺行為を明らかにする衝撃的なレポートの波にも乗っているという。

そのピッチの多くは、6月中~下旬に開かれた国際クリエイティビティフェスティバル「カンヌライオンズ(Cannes Lions)」でも披露された。一流ホテル「マジェスティック」の最上階にあるスイートルームを占拠したデロイトデジタルについて言えば、その論点は明確だった。彼らはエージェンシーに取って代わるために、ここにいるのではない。CMOにサービスを提供するために、ここにいるのだ。「伝えたいのは、我々はブランドに最適化を行うために、ここにいるということだ。ブランドがインハウス化などのさまざまな能力を持てるようになる手伝いをしている。エコシステム全体に力を貸しているのだ」と、デロイトデジタルでマネージングディレクターを務めるトッド・パリス氏は話す。

エージェンシーよりも強い立場

デロイトデジタルはクライアントに力を貸し、顧客やオーディエンスのデータ、拡張現実(AR)、メディアバイイング、イベントなど、より多くのことを社内で行えるようにしている。同社CMOのアリシア・ハッチ氏は、コンサルティング企業がエージェンシーよりも強い立場にあるのはこのためだと語る。

「クライアントがマーケティング能力をインハウス化するのを手伝うとは、単に各チームをひとつ屋根の下に集めればいいというものではない」と、同氏はいう。「インハウス化とは、企業の最終損益にも影響を及しかねない、ビジネス上の戦略的決断だ。我々は、インハウス化がクライアントにとって正しい決断なのかを判断し、彼らに適した技術や人材を見つけ、インハウス化の取り組みを成功させて、それを持続可能なものにするために、大規模な組織の再編を彼らが行うのを手伝える」。

パリス氏も、デロイトのようなコンサルティング企業の存在理由は必ずしもエージェンシーの役割を引き受けるためではないことを認めている。しかし同氏は、カスタマーエクスペリエンスを自分たちが掌握する必要性を認識する企業のあいだで、著しい変化が起こっているとも述べている。

「機会の観点から、ブランドもCMOも『オーナーは自分だ、データやカスタマーエクスペリエンスを思い通りにできるのは自分だ』と認識するようになった」と、パリス氏はいう。

絶好のポジション

ANAでシニアバイスプレジデント(SVP)を務めるビル・ドゥガン氏は、同協会の次のレポートでは、マーケティング能力の一部をインハウス化したと答えるマーケターの割合は約65%に達するのではないか、と述べる。コストやスピード、透明性の点で、インハウス化は企業にとって魅力的だ。

「エージェンシーと違って、コンサルティング企業は単発のプロジェクトに慣れている」と、ドゥガン氏はいう。「たとえば社内で眠っている能力を見つけ出すことに関しては、彼らのほうがいい場所にいる。また、コンサルティング企業はCMOだけでなく、CEOやCFO(最高財務責任者)の言葉にも注意を払う。その点でも、彼らのほうが力量は上なのだ」。

また、マーケティングはコンサルティング企業が行うサービスのひとつにすぎない。彼らはすでに、親会社の顧客ベースにいるメジャーマーケターをクライアントに抱えており、技術や会計監査、リスク管理、さらにはパートナー選びやエージェンシーの見直しなど、さまざまな事業プロセスの問題解決を手伝っている。つまり、彼らはすでに多くの場合、広告主の支出の一部となっており、たとえばプログラマティック能力の育成などといったプロジェクトを引き受けられる、絶好のポジションにいるのだ。

「客観的」で結果を重視

ソーシャルメディアエージェンシーのビッグ・フィニッシュ・デジタル(Big Finish Digital)の共同創業者で、コンテンツマーケティングエージェンシーのトリュフ・ピッグ(Truffle Pig)でプレジデントを務めていたポール・マーカム氏は、コンサルティング企業がしばしば勝利するのは、ブランドはコンサルティング企業のほうが「客観的」で、結果を重視するとみなしているからだと述べる。つまりCFOは、コンサルティング企業のサービスを活用するというCMOの決断を後押しできるのだ。「また、ITやシステムインテグレーション、ワークフローの最適化、研修など、インハウス化の主要な要素はすべて、コンサルティング企業のコアコンピテンシーだ」と、マーカム氏は語る。同氏は、自身のエージェンシーが提供するサービスモデルの拡大を重視しており、この新たな労働形態で競合するには、変化を起こす必要があることも認識している。

コンサルティング企業は、少なくともブランドに対しては、データはもちろん、ビジネスアナリティクスやROI(投資利益率)をより重視する。したがって、マーケターが自社の支出がどうなっているのかについて理解を深めたいと思っているだけの場合であろうと、その一部に対する主導権を取り戻したいと思っている場合であろうと、コンサルティング企業のほうが信頼性が高く、これを行う能力も高いとみなされると、マーカム氏は語る。

HPのメディア部門でグローバルヘッドを務めるダン・サルズマン氏は、HPも社内の能力開発に重点的に取り組みつつあるが、同社にとって、とりわけクリエイティブにおいて、エージェンシーは依然として重要であると述べる。「優れたクリエイティブ能力はブランドの外にあるという状況は今後も変わらないと、我々は考えている」と、同氏はいう。「そして、その能力は今日のコンサルティング企業の強みではないとも。だから我々は、原点に立ち返ってクリエイティブに投資するようエージェンシーに求めている」。

「ブランドのための最適化を自由に行える環境をつくりたいと思っている」とパリス氏はいう。「我々のインセンティブはCMOのそれと直接つながっている。我々なら、マーケティング組織のなかで意見に耳を傾けながら仕事をこなせる」と同氏は語った。

Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)