CPE(1エンゲージメントあたりのコスト)は、多くのエージェンシーとインフルエンサーネットワークから、比較的透明性の高い価格決定モデルとみなされている。 エージェンシーのRPAは先ごろ、ある大手消費財クライアントに対して […]
CPE(1エンゲージメントあたりのコスト)は、多くのエージェンシーとインフルエンサーネットワークから、比較的透明性の高い価格決定モデルとみなされている。
エージェンシーのRPAは先ごろ、ある大手消費財クライアントに対して、CPEのテストをはじめて実施した。具体的には、インスタグラムのクリエーター40名(フォロワー数は、2500の人もいれば、16万5000の人もいた)と提携して、2つのキャンペーンを展開したのだ。
この実験は期待を上回る成果を上げ、両キャンペーンで数万のエンゲージメント(いいね!、シェア、コメント、再投稿など)を獲得できたと、RPAでデジタル戦略担当マネージャーを務めるマイク・ドセット氏は語った。だが、業界全体から見れば、このような試みは珍しい。
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「まだよく分からないことが多い。CPEは、ほかのもっと確立されたチャネルで我々が行っているものと、ちょうど同じように、インフルエンサーマーケティングを測定するのに良いとっかかりとなる。だが、ブランドの多くは、いまでもフォロワー数を基準として、インフルエンサーに料金を支払っている」と、ドセット氏は言う。
この記事を執筆するために多くのマーケターと話をしたところ、CPEは理論的には素晴らしいが、実践においては難しい点があることがわかった。そのため、現在、もっとも広く普及している2つの価格決定モデルは、インフルエンサーへの支払額をインプレッションで計算するもの、フォロワー数に基づいてコンテンツごとに固定額として提示するものとなっている。
予算はすでに決まっている
インフルエンサーのマーケットプレイスを運営するポピュラー・ペイズ(Popular Pays)は2014年、CPEベースで同社のサービスをブランドやエージェンシーに販売開始した。しかし、1年と経たないうちにCPEベースをやめ、従来のCPI(1インプレッションあたりのコスト)に切り替えている。
ポピュラー・ペイの最高経営責任者(CEO)コルベット・ドラミー氏は、「我々としては、いまでもCPEベースの価格で販売できる。だが、その価格決定モデルを希望する企業は、1年以上現れなかった」という。
その主な理由は、CPEを利用してキャンペーンを構成することが難しいことにあると、同氏は説明する。たとえば、ブランドがインスタグラムのインフルエンサーと提携し、1本の投稿で5万件のいいね!を獲得するという目標を立てたとしよう。この投稿が実際には8万件のいいね!を獲得した場合、追加の3万件のいいね!に対する代金は誰が支払うのだろうか。広告エージェンシーが「ボーナスエンゲージメント」に対して代金を支払うことなど、通常はない。
「ブランドが追加の代金を払うか、インフルエンサーネットワークがそのリスクを吸収するかのどちらかだ。肝心なのは、キャンペーンの打診があったとき、予算はたいてい決まっている。ほとんどの場合、ブランドはCPEの適切な価格を知らなくても、CPM(表示1000回あたりの単価)の適切な価格は知っている」。
なによりも適切な人選が大事
エージェンシーのオーガニック・ディベロプメント(Organic Development)でマネージングディレクターを務めるキングスリー・テイラー氏も、この意見に賛成だ。同氏は、キャンペーンの効果を測定するにはCPMよりCPEのほうが確かな指標だと個人的には考えているものの、クライアントのためにエンゲージメントベースのインフルエンサーキャンペーンを実施したことは一度もない。
「CPEを使うと、インフルエンサーマーケティングと従来のメディアなどを活用したマーケティングミックスを直接的に比較することが、ブランドにとって難しくなる」と、テイラー氏は説明した。
インフルエンサーにとっても、CPEは収入を不安定にする。インフルエンサーマーケティングプラットフォームを手がけるコレクティブ・バイアス(Collective Bias)でマーケティングおよびコンテンツ担当シニアバイスプレジデントを務めるホリー・パブリカ氏によると、そのようなリスクを取らされることになれば、インフルエンサーはお金を出して、いいね!やシェアを買ったり、シェアの繰り返しを認めたりするなど、システムを悪用して、自分たちの信頼性やコンテンツの価値を損ねかねない戦略を採るかもしれない。
「ときには、インフルエンサーが、賞金や景品といったインセンティブをオーディエンスに与えてエンゲージを促す可能性もある」とパブリカ氏は述べ、インフルエンサーにCPEベースで料金を払うべきではないと語った。そうではなく、インフルエンサーネットワークがそのようなリスクを取り、キャンペーンに最適なインフルエンサーを手配できるように努める必要がある。また、クリエイティブな作品を制作して、スポンサードポストを公開するよう、インフルエンサーに促す必要があるのだ。
規制の増加が今後の懸念
インフルエンサーマーケティングは、今後5年間で50億~100億ドル(約5000億〜1兆円)規模の市場になると試算されている。だが、その人気が高まるにつれて、インフルエンサーマーケティングは規制の多い業界となりつつあり、米連邦取引委員会(FTC)は、徹底した情報開示をしないブランドに対する告訴を増やしている。
たとえば、2016年3月、FTCはゲーミングネットワークのマシニマ(Machinima)に対する最終勧告を承認し、「Xbox」のプロモーションに関わったYou Tubeインフルエンサーに対する支払い内容を公開するよう命じた。こうした最近の取り締まりは、法執行機関がさらにアクションを起こす可能性があることを示唆している。
CPEの採用が将来的に増えるかどうかはともかく、インフルエンサーマーケティングへの取り組みが、いいね!、インプレッション、ビューなどの成果に対して料金を支払う方向に向かうことは間違いない。ただし、どのような困難があろうと、CPEを利用するほうが、フォロワー数のみをベースとした固定料金を支払うよりはるかに良いと、ドラミー氏は述べている。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by Thinkstock / GettyImage