FUTURE OF WORK

オフィスワーク再開にあたり、「社長室」を捨てるCEOたち

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ホームサービスブランドのアンジー(Angi)、ホームアドバイザー(HomeAdvisor)、ハンディ(Handy)を手がけるアンジーは、オフィスの再開に向けて、米国にある3つのオフィスのうち、ふたつの面積を縮小した。それに伴い、CEOのオイシン・ハンラハン氏を含む全幹部の専用オフィスを廃止し、オープンプラン、コラボレーションスペースの拡大、会議室の増設を採用した。

ハンラハン氏は、このプランは「フラットな組織に適したもので、より親しみやすく、経営陣とビジネスを運営するスタッフとのあいだの障壁を取り除くことができる」と説明している。

パンデミック以前から、多くのCEOたちは、自らが親しみやすく協力的な存在であることをアピールするかのように、プライベートなオフィススペースを廃し、従業員たちと同じ場所で仕事をするようになっていた。有名なところでは、マイケル・ブルームバーグ氏が、自らの会社のトップとしても、またニューヨーク市長としても、オープンオフィス内で仕事をしていた。多くのエージェンシーや企業では、ぜいたくな役員室の時代はとうに終わりを告げているが、オフィスのあり方が大きく変化しつつあるいま、改めてこうしたトレンドが見られている。

「皆で集まる」ことの重要性

インディアナ州インディアナポリスにあるエージェンシーで、ベライゾン(Verizon)、ジレット(Gillette)、全米大学体育協会(NCAA)などの仕事を手がけたザ・ベースメント(The Basement)で、CEOを務めるコンラッド・エドワーズ氏によると、クリエイティブの世界では、コラボレーションを生む空間の重要性が増しているという。「コラボレーションのスペースは欠くことができない」。

1年以上にわたるリモートワークを経て、ザ・ベースメントのスタッフは、遠く離れていても生産性を発揮できることを証明した。それでも、チームメンバーの多くは、人と人との交流を求めているとエドワーズ氏は話す。「皆で集まることへのニーズは、我々の職場環境を今後どのようにしていくかを判断するための、大きな指針となっている。新しいスペースにたくさんのプライベートオフィスを設けることは、目的に反し、その相乗効果を失わせることになる」。

エドワーズ氏によると、現在ザ・ベースメントはほかの企業同様、いつオフィスワークを再開するかを決めかねているという。背景には、新型コロナウイルスのデルタ株の感染が拡大している点が挙げられる。ただそれでも、「最大限の柔軟性」を特徴とするスペースの実現を構想しているという。

ハイブリッドな働き方への対応

同じくエージェンシーのマッキニー(McKinney)は、パンデミックの直前、すでにロサンゼルスに新たな拠点を見つけていた。これは、ウェストアダムズ地区にあるアーティストが、かつてスタジオとして使っていたスペースで、全面的に改装する必要があった。同社はその作業を、ロックダウン期間のさなかに行ったのだという。その際、最重要課題となったのは、やはりコラボレーションのためのスペースを確保すること、そして幹部のプライベートオフィスを廃止することだった。この方針は、ノースカロライナ州ダーラムにある同社の本拠にも適用され、CEOのジョー・マグリオ氏のオフィスは、コラボレーションスペースと、ゲームルームを兼ねたスペースに変えられた。

マッキニーにとって重要だったのは、ザ・ベースメントと同様に、応用の利くスペースをデザインすることだった。ESPNやサムスン(Samsung)、シャーウィン・ウィリアムズ(Sherwin-Williams)を顧客にもつマッキニーのマネージングディレクター、シルベイン・トロン氏は、「ハイブリッドな働き方が注目されるなか、週に数日しか使用しない専用オフィスよりも、柔軟性のあるスペースを優先すべきであることがわかった」と述べている。同社は共同作業スペースを増やすだけでなく、先進的なテクノロジーを備えた会議室や通話ブースを設置し、3つのオフィス(もうひとつのオフィスはニューヨークにある)が常につながっているようにした。

オフィスは企業文化の接着剤

多くのエージェンシーにとって、いわゆる社長室といったリーダー専用のオフィスは、もはや非常に古風な存在になっている。「オフィスは物理的にヒエラルキーを象徴するものだ。リーダー専用のオフィスが存在することは、どんな意見も重要であるという我々のあり方と、完全に逆行している」と語るのは、サンフランシスコに拠点を置き、Apple、Google、GM(General Motors)などを顧客にもつエージェンシー、イレブン(Eleven)のパートナー兼マネージングディレクターを務めるミシェル・P・シリオ氏だ。イレブンでは何年も前に、経理部長と人事部長の部屋を除いて、プライベートオフィスを廃止している。「この10年間、同社のエグゼクティブチームは、インターンやライター、ストラテジスト、プロデューサーと同じ空間で働いている」とシリオ氏はいう。

昨今、多くのエージェンシーが、今後のオフィスのあり方を模索している。しかしシリオ氏によると、イレブンはすでにフラットな組織構造と、それを反映したオフィスを構築できていたため、パンデミックのピークを乗り切ることができたと強調する。

イレブンにおいて、オフィスはいわば「企業文化の接着剤」になっていると、シリオ氏は語った。

[原文:Bosses without offices: CEOs ditch private spaces for their return to the workplace

TONY CASE(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:村上莞)