「コロナショックが悪化したら、リタゲ中心にシフトする」:あるメディアバイヤーの告白

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、マーケターは予算配分の再考を強いられている

匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回は、あるD2C(Direct-to-consumer)ブランド(業種についても非公表)のバイヤーに、新型コロナウイルスが同社のマーケティングプランにどのような影響を与えているのかについて語ってもらった。コンバージョンの低下に見舞われている同社は、Facebook広告に割く予算を削減している。その一方で、ほかのチャネルへの変更やマーケティングの中断、年内の予算の再配分に向けた確固たる計画を立てる前に、ほかにやるべきことがあるかどうか、様子をうかがってもいる。

なお、読みやすさを考慮して、以下のインタビューには編集が加えられている。

――新型コロナウイルスの影響で、ブランドに対する消費者の行動はどのように変わっているか?

変化は間違いなくある。需要は大きく低下している。とくに2月の最終週がそうだった。ニュースが広がるにしたがって、少しずつ悪くなっている。とくに顕著なのがコンバージョンだ。広告に対するエンゲージメントは安定している。この状況下でエンゲージメント率はよく持ちこたえている。だが、消費者のあいだで、商品の自宅への配達に対する抵抗感が高まっており、(当社の製品を購入する)行動を取れないでいるようだ。(コンバージョン率は)15%ほど下がっているが、新型コロナウイルス感染症に対する警戒以外に理由は思い浮かばない。選挙の効果もなかったのかもしれない。いま現在、消費者の側にものを買うことへのためらいがあることは間違いない。

――15%の低下について詳しく教えてほしい

訪問者の大半のコンバージョン(が15%下がっている)。この状態が1週間ほど続いている。

――そのような低下を経験しているわけだが、メディア費の使い方については見直しているか? たとえば、デジタル広告を減らしているなど

若干の削減を実施している。3月に関しては攻めの目標を掲げていたが、その計画に狂いが生じることは間違いないだろう。ダメージをやわらげるために、もっとも支出が多いキャンペーンについては、10%の削減を実施している。仮に状況がさらに悪化するとしたら、ファネルのいちばん上にある、目的に乏しいブランド認知やプロスペクティングキャンペーンの部分的休止を真っ先に検討し、当面は効率を目的とするリターゲティングキャンペーンにフォーカスするだろう。まだそのような状態にはなっていないが、もしそうなれば、業務にこの優先順位をつけるだろう。真っ先にカットするのはブランド認知キャンペーンだ。短期で同種のリターンをあげられないことは目に見えているからだ。消費者の買う気が失せているのに、新しいブランドに触れさせるべきなのか、私には何とも言えない。

――その資金を完全に保留するつもりなのか? それを再配分して、年内に消化するつもりは?

まだそこには至っていない。新型コロナウイルスの状況がどこに向かうのか、どれほどの影響を人々の日常生活に与えるのか、誰もよくわかっていない。だが、仮にこれがあと1~2週間続くとしたら、資金を第4四半期に再配分することになるだろう。第4四半期は我々が好調な時期だ。あきらめてしまうようなことはないだろうが、世の中、どうにもならないこともある。景気後退や(ウイルスの)アウトブレイクは起こるし、リポジショニングが必要なことも起こる。だったら、状況が好転したときのために、資金を蓄えておいたほうがいい。

――いま現在、消費者の購買意欲は下がっているように感じているか?

我々にとっては、ほかでもない売上の低下がそれを示している。消費者はほかの不安も抱えている。必需品の買いだめに走ったり、漠然と慎重になったりしているのかもしれない。短期の不透明感が、人々を節約に走らせるのではないか。我々はそう推測しているが、本当のところは誰にもわからない。だが、この売上の低下は、アメリカのメディア、国民が新型コロナウイルスに注目し、コストコやCVSの行列のニュースを見聞きして、早めの準備をはじめた時期と強く符合しているように思える。

――緊急時対応プランについて、ほかのバイヤーたちと話し合っているか?

SlackやFacebookにさまざまなグループがあり、このことについてさまざまなレベルで話し合われている。だが実のところ、できることはそれほど多くない。出費を抑え、資金をほかに移すことはできるが、いまのところは、誰もが時期尚早という見方をしている。とにかく、これを乗り越え、今後より効率的に使えるようになったときのためにメディア費を取っておくしかない。しきい値は常にある。おそらく、20¬~30%を削減しても、まだいくらかの余裕はある。そこまで売上は下がらないし、効率性は獲得できる。そうはいっても、状況がパンデミック化しなければ、新型コロナウイルスがどれほどの被害をもたらしうるのかは誰にもわからない。新型コロナウイルス感染症がアメリカで完全なアウトブレイク型パニックを引き起こしても大丈夫な人などいないと思う。

――実際には、どこを削減しているのか? 「ブランドア認知」と言っていたが、そこにはテレビ広告費の削減も含まれるのか?

テレビのスケジュールは変更していない。テレビなどのオフラインチャネルは前もって予約されるため、即座のカットには適していない。ほかの何よりもFacebook広告を中断するのが適切だと、我々は思っている。コストが15%上がるのは痛いが、大打撃というほどでもない。資金に乏しいブランドよりもうまく嵐を乗り切れる余裕が我々にはある。これこそが多額の資金を調達してきたことの大きなメリットだ。もし低下率が30%になれば、よりロングテールなチャネルの計画も変更するだろう。

――こうした売上の減少や減速のほかに、新型コロナウイルスがマーケティングに影響を及ぼしていることはあるか?

いまのところはない。我々は時代に左右されるようなことは何ひとつしていない。縮小している大型キャンペーンがあったりというわけではない。

――あなたの会社はベンチャーキャピタルの支援を受けているわけだが、新型コロナウイルスの影響で短期目標を達成できないかもしれないということを支援者にどのように説明するかについて考えているか?

いま現在、ものを買うことに関して、アメリカの国民のあいだに一定の不安感があることは確かだ。それが1カ月なら問題ない。当社の支援者はみな、「コロナウイルスのせいでおかしなことになったものだ」といって、問題にしないだろう。

それが業績の悪い四半期や、5~6カ月続く不調にまで広がってしまったら、もっと大きな問題になる。だがいまのところ、できることは何もないので、パニックになっている人は誰もいない。もしこの状態が長引くようなら、景気後退を乗り切るときとまったく同じ戦略をとることになる。つまり、資本の蓄積を開始し、獲得をめざすターゲットを減らし、たとえ成長速度が落ち、敗者復活戦に望みを託すことになっても、何としてでもその場に踏みとどまるのだ。

――あなた自身は不安を感じているか?

もちろん。皆が不安になっている。仮に景気後退がこのペースで来るとしたら、上から下までのシステム全体が、2008年ほどではないが、大きなショックを受けるだろう。バイヤーも消費者も、その中間にいる誰もが、だ。過去1年半のあいだに、全員がこれに対する計画を立てているべきだった。景気後退は来る、そのための準備をと、誰もが言っていた。銀行に十分な資金を蓄え、需要が50%低下した場合の対応策も準備しておくべきだ。我々は緊急時対策プランを用意している。かなり思い切った計画だ。成長を遅らせ、短期的には我が社にマイナスの効果をもたらすだろう。だが、そうすれば生き延びられる。市場は必ずリバウンドする。だが、このコロナショックで景気後退が起きたらどうするのかをいま考えているのなら、おそらくはもう手遅れだろう。

Kristina Monllos (原文 / 訳:ガリレオ)