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日本の有力メディア28社、コンテクスチュアル広告の販売へ : POCではCTRが3倍以上に

朝日新聞や読売新聞、講談社、J-WAVE、フジテレビなど、プレミアムなWebメディアの運営企業計28社によって設立された「コンテンツメディアコンソーシアム」が、ポストCookie時代に向けた、コンテクスチュアルターゲティング広告の販売を計画している。

スイスの有力データプラットフォーマーである1plusX(ワンプラスエックス)のシステムをコアに据えたこの商品では、1月末より第1回のPOC(概念実証)を開始。その結果、コンテンツメディアコンソーシアムで販売する現行のアドネットワークのクリック率と比較して、3倍以上の高い数値を叩き出しているという。

「コンテンツの力はすごく大きい。だが、それに触れるオーディエンスのインサイトも、それぞれ異なる。そうしたコンテンツとオーディエンスのあいだに生まれるストーリーを、我々は『コンテキスト(文脈)』と定義している」と、BIガレージ(BI.Garage)の取締役COOを務める小林篤史氏は説明する。同社はデジタルガレージの子会社で、コンテンツメディアコンソーシアムの事業を展開する企業だ。

「たとえば、高収入な在宅ワークの男性が、どこかの媒体で『コロナ危機と生産性』という記事を読んだとする。そうすると、自宅のワークスペース環境について意識が向くはずだ。それがコンテンツとオーディエンスのあいだに生まれるコンテキストだ」と、小林氏は補足する。「このメニューでは、その記事内に高級ワークチェアなどの広告を配信できる。つまり、そのコンテキストにターゲティングすることで、いままで以上の広告効果を発揮できるのだ」。

単なる「コンテンツマッチ」とは違う

いわゆるコンテンツマッチ自体は、以前から存在しており、特段新しい技術ではない。しかし、欧米において、GDPRやCCPAなど、個人情報保護を目的とした厳格な法律が次々と施行されていくなか、それに呼応してブラウザ側もサードパーティデータの規制に乗り出してきた。そんななか、推測データに頼らない、コンテクスチュアルターゲティングがあらためて注目を集めている

特にコンテンツメディアコンソーシアムおよびBIガレージが手を組んだ1plusXは、ただ広告をコンテンツにマッチさせるだけではない。AIを利用して、コンテンツの中身を理解し、AIを利用して、個々のオーディエンスのインサイトまでも理解する。そのうえで、「そのオーディエンスが、なぜそのコンテンツにたどり着いたのか?」というコンテキストを読み取り、それにマッチした広告を掲出するのだ。

「なかでもファーストパーティのクッキーデータとアクセスデータからオーディエンスを特定する技術が著しく向上している。3〜4年前だったら4〜5割程度の精度だったが、いまは8〜9割の精度で特定できる」と、小林氏は語る。「しかも、我々の場合、クロスデバイスで判断できるだけでなく、コンテンツメディアコンソーシアムに参加している28社のプレミアムパブリッシャーの媒体をまたいで特定可能だ」。

ちなみにBIガレージの親会社となるデジタルガレージは2月3日、1plusXと資本業務提携を締結。しかも、1plusXは、ドイツで同様に結成されたメディアコンソーシアム「アドアライアンス(Ad Alliance)」でも、コンテクスチュアルターゲティング広告に採用されているという。

vCTRが現行の3倍以上の数値に

1月における第1回のPOCは、コンテンツメディアコンソーシアムに参加しているうちの10社から16のメディアをまたいで実施。そのメディアには、ニュース系にビジネス系、エンタメ系からライフスタイル系まで、さまざま揃っている。POCに広告主の立場で参加したのは、大手の家電メーカー、コスメメーカー、飲料メーカーなど。その結果、ビューアブル時のクリック率は、現行のアドネットワークと比較して、3倍以上も高い数値で着地した。

「特にPCでは大幅にvCTRが向上した。0.12%だったものが、0.37%まで伸びた」と、小林氏は解説する。「今後、ターゲティングのプランニング精度と、ビューアブル率を高めることができれば、かなり効果が高い広告プラットフォームとなりうる」。

BIガレージでは、これから第2回のPOCを実施し、コンテクスチュアルターゲティングの精度を調整。さらに、態度変容調査や媒体間のデータ連携もトライアルしていく。

「3月初旬までには、プレ販売を開始し、5月以降に収集データ及び配信対象メディアの状況に応じて、正式販売を開始したい」と、小林氏は語る。「80メディア1億プロフィールまでの拡大が正式販売のひとつの基準と考えているが、最終的には参加いただいている全メディアに拡大していきたい。価格については効果とメディアの状況を加味したものを、プレ販売時は検討している」。

Written by 長田真
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