「 奴隷解放記念日 」を再認識する、エージェンシー業界:一方、対応に不満足な黒人従業員も

6月19日は、米国における黒人奴隷解放記念日「ジューンティーンス(Juneteenth)」だ。時の大統領、エイブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言に署名したのは1863年1月1日だが、最後まで残ったテキサス州の黒人奴隷が解放されたのはその2年半後、1865年6月19日だった。

2020年は、多くの米エージェンシー/企業が、ジューンティーンスの意義を再認識する年となった。これまでは、エージェンシー/企業が全社を挙げて、この日を祝うことは、あまりなかったからだ。

だが今年は、オムニコム(Omnicom)や電通のほか、IPGやWPP、ピュブリシス・グループ(Publicis Groupe)のエージェンシーなど、主な大手がジューンティースを休日にした。オバーランド(Oberland)やダガー(Dagger)といった独立系エージェンシーも、同日を毎年、内省と祝福の休日にすると決めた。

エージェンシーだけではない。保険大手オールステート(Allstate)、運輸ネットワークのリフト(Lyft)、大手スポーツ用品メーカーのナイキ(Nike)、フードデリバリーのポストメイツ(Postmates)、音楽ストリーミングサービスのSpotify(スポティファイ)、SNS大手のTwitter、モバイル決済のスクエア(Square)といった企業も、今年はジューンティースを休日にしている。また、大手家電量販店ベストバイ(Best Buy)などは「有給ボランティアデー」を設け、6月19日または今年中のいつかに全従業員が取得できるようにした。ほかにも、終業時間を早めたり(銀行持株会社J.P.モルガン・チェース[Morgan Chase])、不要なミーティングを控えるよう従業員に促したり(Google)、同日を「連帯の日」として、従業員が米国における人種差別主義者の歴史を学び、人種差別主義/差別との戦いを誓う日にしたりするなど、多くの企業がさまざまな取り組みをはじめている。

「意識を表明する強力な手段」

黒人従業員や幹部はしかし、意識の高まりは第一歩として素晴らしいが、休日にして終わりにするのではなく、さらに先へと歩を進めていかなければ意味がないと主張する。

「ジューンティーンスの意義の再認識は、企業が意識を表明するための強力な手段ではある」と、米大手エージェンシーVMLY&Rのアドバイザリー部門マネージングディレクター、マイロン・キング氏は指摘する。「弊社は何年も前からこの[多様性、平等、受容への]道を歩んできた。つまり、我々にしてみれば、この再認識は人種間の平等を目指し、弊社の従業員を苦しめ、社会全体を苦しめている構造的不公平の解決に取り組む姿勢を改めて示す一手段に過ぎない。これは弊社の行動の一部であり、そのすべてではない」。

新型コロナウィルス感染症による死者の急増、そして先頃起きた、ジョージ・フロイド氏、ブレオナ・テイラー氏、アーマウド・アーベリー氏の殺害を受けて、VMLY&Rは社員に対して何ができるのか、あらためて考えた。そして、「対処と内省の日が必要だと感じた」と、キング氏は語る。

職場改善のための12のステップ

同じことは、テキサス州オースティンを拠点とする広告エージェンシー、GSD&Mにも言える。同社は6月19日に休暇を取るよう、従業員に以前から促していたが、はじめて今年は、同日を独立記念日やメモリアルデー(戦没者追悼記念日)と同じ扱いにしたと、同社のダイバーシティ&インクルージョン部門VPキアヤ・フランシス氏は語る。

「事実、新型コロナウィルスが蔓延し、ジョージ・フロイド氏が殺害され、各地で抗議運動が起き、そして国民が人種/人種差別の再定義を強く望んだことで、ジューンティースは企業が黒人従業員への誠意を、そして社会変革を支持する姿勢を公に示す、米史上初の祝日として、その存在意義を高めることになった」と、フランシス氏は分析する。

ジューンティーンスを巡る今年の動きは、黒人エージェンシー社員600人が署名した公開書簡の発表を受けてのものでもある。これは大手エージェンシー、ペリスコープ(Periscope)のグループストラテジー部門ディレクター、ネイサン・ヤング氏とコンサルティング会社エアリアリスト(Aerialist)のトップ、ベネット・D・ベネット氏の主導で出されたエージェンシー宛ての公開状であり、黒人やその他有色人種が働きやすい職場環境に改善するための12のステップが記されていた(6月第3週、ヤングとベネットの両氏は業界の才能ある黒人を支援する非営利団体600&ライジング[ Rising]も設立している)。

「一から作り直さなければならない」

変化への希求を公にする従業員の動きを受けて、エージェンシー側にも意識の変化が生じつつあり、ジューンティーンスの認識拡大はその表れだ、と見る向きもある。その一方、それだけでは不十分であり、エージェンシーには6月19日を休日にするだけでなく、社の運営や採用に関する慣例の抜本的改革に取り組む真摯な姿勢が必要とされるとの声も、黒人社員のあいだでは聞かれる。

「[ジューンティーンスを祝うことで]会社は要するに、我々は君たち[黒人従業員]のことをちゃんと見ている、と言っているに過ぎない」と、今年はじめてジューンティーンスを休日にした独立系エージェンシーに勤める黒人クリエイティブは語る。「まずはなんといっても、インクルージョン(受容)の実現だ。才能ある黒人を雇う。黒人のクリエイティブディレクターやCCOを雇う。成長の機会を与える。黒人映画監督やプロデューサーを起用する。そうしないと何も始まらない。いまは、すべての経路が黒人を伝染病か何かのように排除している」。

フリーランスのためのマーケットプレイス、ウィ・アー・ロージー(We Are Rosie)のコンテンツ&コミュニティエンゲージメント部門トップ、A・ウォルトン・スミス氏も同感だという。「これはライフスタイルそのものの変革だ。次なるステップは、黒人コミュニティをはじめ、周縁化されているコミュニティに対するケアを社のビジネスモデルの一環として実践すること。それを社のミッションおよびビジョンの一部にする。それができてはじめて、我々は正しい方向に歩を進めることになる。すべてを解体し、一から作り直さなければならない」。

KRISTINA MONLLOS(原文 / 訳:SI Japan)