企業アプリは伝統的なマーケティングでグロースできる:App Annie CMOアル・カンパ氏

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世界的なスマホ保有率の拡大傾向が続いており、モバイルアプリ市場は拡大を続ける。近年ではサブスクリプションモデルにより、アプリベンダーの収益化の可能性は拡大している。

米国ではポケモンGOがヒットし広告によらない収益化を成功させ、メルカリがインフルエンサーマーケティングでダウンロード数を伸ばし、金融・小売・消費財メーカーもまたアプリ市場を多様化している。

9月6〜7日に東京都渋谷区で開かれた「Tech in Asia Tokyo 2016」で、モバイルアプリ市場調査大手のApp Annie CMOのアル・カンパ氏にアプリ市場の状況について聞いた。

――Fintechがバズワードになっています。米銀行のアプリの活用状況はいかがでしょうか?

米大手銀の動きは早いとは言えず、少し保守的かもしれない。彼らは争うようにモバイルアップに進出した。シティバンク、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴらだ。彼らは百年を超えるあいだ事業を進めており、大量の予算をもっている。

銀行大手が、モバイルアプリで先行するベンダーの買収を行うのも驚きではない。若者にはアルゴリズムがフィナンシャルアドバイザーや証券ブローカーが担ってきた役割を取って代わることに抵抗がない。

――若い人には銀行での手続きが心地良くないかもしれません。モバイルアプリで行いたいと考えているはずです。

40代以上の人々は銀行の店舗での手続きをとても心地よいと感じている。彼らは小切手を切り、ATMで現金を引き出し、送金手続きをとる。しかし、ミレニアル世代にとってはそうではない。彼らは現金を使わず、モバイルペイメントを利用する。決済、送金、投資などの分野でモバイルを利用するのは普通であり、彼らが成長するとそれが常態になるだろう。

――10年以内にバンキングサービスの30%がテック企業によるものになるとの予測もあります。必然的にこれらのサービスはモバイルのなかに入ると思います。どう考えますか?

そう思う。この10年間でアプリケーションの利用はPCからモバイルに劇的に移転している。人々はテレビを観る代わりにモバイルでFacebookやTwitterを訪れるようになった。WeChat(微信)はほぼモバイルで使われている。若い人はデスクトップがなくなることを気にしはしないだろう。

――Wechatはモバイルペイメントなど複合型のモデルになりました。ほかの世界も後を追うでしょうか?

中国では決済にWeChatを利用しており、生活に染み込んでいる。他の世界でも中国ほどの速度ではないが、同じことが起きるだろう。

――モバイルアプリの消費時間は依然として伸びているそうですが、一部の大プレイヤーがその時間を占めています。ブランド、パブリッシャーはどうアプリを確立すればいいでしょうか?

アップストアの世界は少しずつ変わっている。アップストアの上位「トップアップ」に入っているゲームアプリなどが人気を得るのに有利だった。しかし、いまやスターバックス、マクドナルドなどの小売、デパートメントストア、銀行らの大企業のアプリが数百万のダウンロードを達成している。彼らはアップストアでの順位を気にする必要がない。テレビ広告、屋外広告などの伝統的な広告により成長できるし、顧客とのリアルな接点があり、そこで彼らに利用を促すことができる。

たとえば、メルカリは米国でいくつかのとても自然な「広告」により、ダウンロード数を伸ばすことができた。彼らは日米間での連携もうまくいっている。ダウンロード数を力強く伸ばすのに必ずしも巨人である必要はない。

――App Annieのレポートによると、メルカリはインフルエンサーマーケティングによりダウンロード数をのばしたそうですね?

インフルエンサーマーケティングにより米国ではいくつもブランドが衣料品の売上を上げることなどに成功した。ジャスティン・ビーバー、セレーナ・ゴメスなどを起用するケースが多々ある。彼らほど影響力がないが、YouTubeスター(日本のユーチューバー)のようにさまざまな領域にたくさんのフォロワーを抱えるインフルエンサーがいる。ティーンエイジャーに対し動画でメイクアップのハウツーを教えるインフルエンサーには1200万人のフォロワーがいる。若者は友人から聞いた情報に高い信頼を置いているのでインフルエンサーがワークする。

――若者にはSnapchatが人気だが、「次のSnapchat」はどんなものになるか?

私には2人のティーンエイジャーの子供がいる。彼らはFacebookを使わない。大人たちが使うものだと思っている。インスタグラムとSnapchatを利用する。しかし、未来は簡単に予測できない。もし「次のSnapchat」が何か分かるのならば、私が真っ先に投資する。

とにかく、Snapchatは写真が消える。しかしFacebookに投稿した写真はサーバーに眠り続ける。若者はクレイジーな写真を送り合うので、Snapchatが好ましいのだ。

彼らのコミュニケーションからテキストが減ってきている。インスタグラムを見ればわかるように動画や写真で意思疎通をしている。彼らはモバイルとともに育っている。だからモバイルオンリーのインスタグラムが人気なのだ。Snapchatはもっと対面のコミュニケーションに似ており、インスタグラムはよりオープンだ。

――一部の大きなユーザーベースをもつアプリは多機能化しています。新規参入が可能な市場なのでしょうか?

FacebookやWeChatは巨大なユーザベースをもち、ひとつのアプリに多くの機能を含んでいる。いまの世代はWeChatやLINEを好んでいるが、次の世代がどうかはわからない。テクノロジーは高速で動いており、新しいトレンドが出てくるのは止められない。Facebookが何もないところからいまの規模に成長したを思い出してほしい。Facebookが誕生したときYahooが巨人だった。Googleは検索に遅れて参入し、当時は100社ほどの検索のプレーヤーがいた。同じことが起きる可能性は大いにある。

――マクドナルドとポケモンGOの協業はどう見ますか?

マクドナルドとポケモンGOは、ブランドがアプリとの協業を成功させた素晴らしい例だ。ポケモンGOを開発したナイアンティックはGoogleからスピンアウトした企業で、Googleマップの開発者によるものだ。ナイアンティックはゲームのキャラクターに関して検討した後にポケモンがベストだと判断した。

マクドナルドとポケモンGOの双方とも適切な規模を持っているのも奏功した。ポケモンGOのプレイヤーはゲーム上、マクドナルドの店舗を訪れる必要が生じるようにした。拡張現実(AR)ゲームの物理的な目的地としてマクドナルドは最適だったのだ。

――ポケモンGOはアプリ内広告は使わず、ブランドとの協業をひとつの収益源としたが、この収益化方法はどうですか?

インスタグラムは2014年、Twitterも2010年に広告を開始した。アプリのマネタイゼーションはもとのユーザーから嫌がられないよう細心の注意が必要になる。パートナシップはとても素晴らしい方法だ。

――iOS、アンドロイドともにサブスクリプションモデルを推進しています。このトレンドは短期的なものでしょうか、長期的なものでしょうか?

サブスクリプションモデルは新聞や牛乳配達などで採用されていた古典的なモデルだ。テック業界ではある程度新しいと言える。SAPやオラクルは以前からそういうビジネスをしていた。Webでは近年とても熱心に活用されている。しかし、良い点と悪い点がある。いい部分は毎月収入を期待できる部分だ。悪い点はサブスクリプションモデルはサブスクライバーがすぐ解約できることだ。サブスクリプションモデルはAppleからマッキントッシュを2000ドル(約20万円)で買うという部分にまで及ぶだろう。

Written and Photographed by 吉田拓史