Amazonが広告ビジネスへの本格的な進出を進めている。最新の動きはマンハッタンの新オフィスだ。Amazonによるとこれにより、ニューヨーク、それもマディソン街の近くで、広告を中心に2000人が働くことになる。
Amazonが広告ビジネスへの本格的な進出を進めている。最新の動きはマンハッタンの新オフィスだ。Amazonによるとこれにより、ニューヨーク、それもマディソン街の近くで、広告を中心に2000人が働くことになる。
ニューヨークを本拠とするマルチメディアエージェンシーの幹部たちは、自社や自社のクライアントに対してAmazon広告の売り込みがあり、Amazon関係者から話を聞くことが増えていると語った。また、ある幹部によると、Amazonからの連絡が増えていて、同市にあるこの幹部が勤めるエージェンシーのプログラマティック専門家がAmazonに採用されたという。
急速拡大するAmazon広告
Amazonのプログラマティック担当ディレクター、サウラブ・シャーマ氏によれば、Amazonの広告セールスチームは急速に拡大している。Amazonはほかのプラットフォームと異なり、チームが広告と小売の枠を超えて活動しており、大手ブランドに対しては専用チームを置いている。ニューヨークにも何年も前からチームがあるが、ほかにも東京やパリなど、「広告エージェンシーが置かれているあらゆるところ」で、広告における大きなプレゼンスを得ているとのことだ。
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Amazonは、同社が「非エンデミック(「(Amazonに)固有でない」との意味)」と形容する広告主(Amazonで販売していないブランド)への売り込みを強めている。たとえば、光ケーブルや無線、航空会社、レストランといったカテゴリーのブランドだ。シャルマ氏は、何が課題だと考えているかという問いに対してこの取り組みを挙げたが、課題というよりはチャンスだと続けた。「新しい価値をもたらすチャンスだ」。
Amazonは、あらゆる広告をカバーしている。具体的には、検索(Amazon.comで検索した際に表示されるスポンサード商品)のほか、バナーによる伝統的なディスプレイ広告、動画広告、デバイスに基づくKindle上の広告、エンターテインメント向けの新しいストリーミングサービスを通じた広告などだ。加えて「カスタム」広告と呼ばれるものがあり、例えば、ブラックフライデーのセールにAmazon.comのトップページを丸ごと買い取ったり、Amazonの箱を広告インベントリー(在庫)として使ったりと、いろいろなことができる。
シャルマ氏によると、Amazonが提供する広告の種類は今後さらに増える。Amazonからの荷物を受け取れるセルフサービス式の「Amazonロッカー」など、新たな「インベントリー」の取り組みを増やしているほか、「サーズデイ・ナイト・フットボール」をはじめとする「Amazonプライム・ビデオ」の新しいストリーミングサービス向けに、テレビ的な広告の提供をはじめているのだ(「サーズデイ・ナイト・フットボール」初のストリーミングとなった、9月末のベアーズとパッカーズの初戦は160万人が視聴した)。
非エンデミックな広告主事例
Amazonと仕事をしているあるエージェンシーのバイヤーは、「GoogleとFacebookの寡占状況をAmazonが本当に追いかけるためには、単なる商品広告とは違うものを考える必要がある」と語る。「小売は、オンラインビジネス全体のほんの一部にすぎない」。
シャルマ氏によると、非エンデミックな広告主としては、たとえば、自動車保険企業ガイコ(GEICO)がAmazonの「サーズデイ・ナイト・フットボール」に広告を出している。また、ヒュンダイも非エンデミックな広告主として、「プライム・ナウ。ドライブ・ナウ」という試乗のカスタムキャンペーンを実施している。
非エンデミックなブランドへのこうした売り込みが、エージェンシー向けの「教育」の中心になっている。独立系のメディアショップ、スウェルシャーク(Swellshark)のCEOで、アップルゲイト(Applegate)、ヴァージン・アトランティック航空、スパイク(Spike)、メキシコのビール「ドスエキス」(Dos Equis)といったブランドの仕事をしているニック・パパス氏は、「Amazonから話を聞くことが増えている」と語る。「Amazonの広告に非エンデミックなパートナーを増やす方法について話し合いを続けていて、盛り上がっている」。
eコマースと広告の交差点
Amazonのシャルマ氏によると、Amazonはプラットフォームとして、競争上、かなり優位な立場にある。というのも、Amazonはeコマースと広告の交差点なのだ。「適切なところにタイミングよく広告を掲載できるというだけではない。関連性も的確だ」とシャルマ氏は述べる。
インプレッション数やクリック数から、セールス情報、ショッピングジャーニー全体、顧客生涯価値などに関する掘り下げたデータに至るまで、高いレベルの測定指標をAmazonは提供している。Amazonではeコマースとマーケティングが連動するのだ。Amazonはプラットフォームとして、「リテール・レディネス(retail readiness:小売の心構え)」と呼ぶものについて、ブランドやエージェンシーとたっぷり協議している。
「我々は、キャンペーンの進み方については説明できるが、そこで何かを行うには、広告を超えた取り組みが必要になる」とシャルマ氏は語る。エージェンシーとブランドは、正しい商品ページの作り方や、インベントリーの在庫確保、レビューの管理といったことについて訓練を受ける必要があると、エージェンシー幹部らは語る。
「広告は大きな分野だ」
ただ、非エンデミックなブランドで重要なのは、普通のディスプレイ広告や検索広告を売ることが必ずしもできない点だ。そのためエージェンシーは、Amazonで売る商品のための訓練プログラムだけでなく、Amazonで売られていないブランドの広告方法に関しても情報を受けている。「(Amazonは)プランナーたちにデータの使い方を教育する必要がある」とある幹部は語る。たとえば、非エンデミックなブランドも、自社の顧客がほかに何を買っているのかを調べることで、顧客像をさらに充実させることができる。あるエージェンシーは、不動産会社と組んで、引っ越し用の箱をAmazon.comで購入している人に関するデータを探究している。
「我々にとって広告は、(中略)テクノロジーの点でも大きな分野だ」とシャルマ氏は語る。「たとえば、Amazon Web Servicesでは、うちのクラウドを使っているほかの開発者向けにテクノロジーソリューションを提供できる。同じように、アドテクノロジーにおいても、テクノロジーのリーダーとして、同様の価値をエージェンシーたちにもたらすことができる」。
Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)