「エージェンシーの動きは鈍い」:あるデジタルスタジオ幹部の告白

ブランデッドコンテンツに大きく予算を投じるブランドがいるなかで、その予算の大部分は結局、制作よりも配信にあてられているのが現状だ。

匿名を条件に本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回米DIGIDAYでは、ブランド向けに動画制作を行うデジタルスタジオの幹部に話を聞いた。多くの場合、エージェンシーとのあいだでかかるコストのせいで、コンテンツ制作の予算が削られているという。

以下、読みやすさのため少し編集してある。

――インフルエンサーを起用したデジタル動画を、ブランドとともに制作するデジタルスタジオとして、よく直面する大きな問題は?

マーケターはみな、エージェンシーと協働しなければならないと感じているようだが、彼らは右も左もわかっていない。エージェンシーの動きは鈍い。専門家が必要な場所なのに、彼ら自身は専門的な知識を持っていないのだ。バカげた中間コストのせいで、エージェンシーとのあいだでかかるコストは、信じられないほど大きい。

――それはブランド側の制作費の金額に影響があると?

当然だ。もしエージェンシーの社名が、そのブランド自体の信頼性に関わるような名前だった場合は、その社員に対して、また世界中のオフィスに対して、通常必要な金額の倍近い予算がつぎ込まれることになるだろう。制作側には予算は回ってこない。

――それが制作において、妥協の原因となるか?

いや、そのようなことはない。なぜなら我々はリーンショップ(lean shop)であり、必要以上に人員を割くようなことはしないからだ。

――何か面白いことをしたいブランドが、そのためには○○ドル必要な場合でも、エージェンシーコストが原因で「いや、支払える額は△△ドルだ」と言ってくるようなことはあるか?

間違いなくイエスだ。エージェンシーとの仕事でかかる高いコストに縛られて、ブランドの予算組みは厳しくなっている。それに、20年以上続いてきた昔ながらの手法は、何か新しい実験的な取り組みよりも承認を得るのも簡単だ。我々は常に予算と戦っている。だが最近は、こうした我々個々のレベルと比べればはるかに大きい、「これまでのやり方を変えて、年端の行かないデジタルメディアに対してどのように予算をあてていくべきか?」や、「エージェンシーのところでかかっているコストの割合は、どの程度なのか?」といった、マクロトレンド的な動きが活発になっている。

――こうした予算面での締め付けは、ブランド側から直接くるものなのか? リーンショップは低予算で最大限のものを引き出せるし、予算も削減できると思われているのでは?

ブランドがクリエイターとの協働や、デジタルコンテンツを軽視するようなことがあるとは思わない。制作費の締め付けに関しては、単にそれ以外のところにかけられている予算が原因だと思う。ただ、クリエイティブに予算の見直しをはじめているブランドも出てきている。

――たとえば?

たとえば、行おうとしているのがクリエイティブなキャンペーンだったとして、通常はコンテンツに対する予算も準備される。だが、メディア(購入)にあてる予算をうまくやりくりして、コンテンツ(制作)にさらに多くの予算を投じられるように動いているブランドもいる。

――費用対効果を簡単にあげるためには、制作費の一部をメディア(購入)にあてた方が良いのでは、という真逆のことを想像してしまったが

いや、○○ドルをメディアに使うなら、YouTube動画のクリエイターとの仕事に同じ予算を投じることで、オーディエンスのリーチはそれと同等か、それよりも増えるという発想だ。

――そこにエージェンシーは関与してくるか? そして「うまく回っている金とそうでないものがある。機能していないコンテンツにさらに予算をつぎ込もうとしているようだが、それは止めてくれ」などと言ってくるか?

幸か不幸か、私自身はそうした会話には関わっていない。だが、エージェンシーの「我々と一緒にやろう。彼ら(制作側)の言う通りにはしない方がいい。新しいことを試す必要などない。我々にだって同じことができる」といった話し声はよく耳にする。

Tim Peterson(原文 / 訳:Conyac