エージェンシーへインターンとしてやって来る人たちは、とてもクリエイティブで、この夏を退屈なデスクワークだけで過ごすつもりはない。
たとえば、サピエントニトロ(SapientNitro)の9人のインターンは、「ゲットシェルフド(Get Shelved)」というオンラインゲームを制作。食品廃棄というやっかいな問題に対する関心を高めようとした。また、BBDOの74人のインターンは、自己紹介のために料理本をテーマにしたマイクロサイトを制作している。
エージェンシーのインターンは、とてもクリエイティブで、この夏を退屈なデスクワークだけで過ごすつもりはない。
たとえば、サピエントニトロ(SapientNitro)の9人のインターンは、「ゲットシェルフド(Get Shelved)」というオンラインゲームを制作。食品廃棄というやっかいな問題に対する関心を高めようとした。また、BBDOの74人のインターンは、自己紹介のために料理本をテーマにしたマイクロサイトを制作している。
面白いことに、ほとんどのエージェンシーがインターンシッププログラムを実施している(なかには「見習いプログラム」といえるケースもある)のに、多くのエージェンシーは、インターンが取り組んでいるプロジェクトの詳細を尋ねられたときに、あいまいな答えしか返そうとしなかった(または社外秘扱いとした)。
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そこで我々は、先ほどのエージェンシー2社に加え、アーノルド・ワールドワイド(Arnold Worldwide)、RPA、およびジャイアント・スプーン(Giant Spoon)でインターンが中心となって取り組んだ、5つのキャンペーンを取り上げることにした。どのキャンペーンにも、何かしら注目に値する点が存在する。
インターンにクリエイティブ性を発揮する機会を与えているエージェンシーから聞く話は、どれも非常に興味深いものだった。
オンラインゲームの制作(サピエントニトロ)
ジェイク・ウェクスラー氏とダニエル・デシモーネ氏が、サピエントニトロで委託業務コーディネーターとしてインターンをはじめたのは、6月のことだ。2人は8月第1週に、プロジェクトマネージャー1人、開発者1人、クリエイティブ2人、ストラテジスト2人と共同で、初のサマープロジェクトを立ち上げた。これは「ゲットシェルフド」と名付けられたシェア可能なオンラインゲームで、食品廃棄に対する関心を高めることを目的としている。
「我々はサピエントニトロが米広告協議会のために企画した、『セーブザフード(Save The Food)』キャンペーンから着想を得た。米国では毎年、全農産物の26%が、見た目の問題のみを理由に廃棄されている。しかし、こうした果物や野菜は、通常の農作物と比べて、味も栄養も変わらない(そして値段は安い)」と、デシモーネ氏は語る。「そこで私たちは、この事実を楽しくシェアしやすい方法で伝えたいと考えた」。

プレイヤーは、選んだ果物や野菜に名前をつけることができる
ゲームを始めるにあたって、プレイヤーは「GoGetShelved.com」で、リンゴ、レモン、ニンジンという3つの商品からどれかを選択できる。そして、選んだ不格好な果物や野菜の一生を通じて、その栄養、味、見た目を簡単なテストで学ぶ。ゲームが終わると、プレイヤーはFacebookやTwitterで「#GetShelved」というハッシュタグをつけて、ゲームで体験したことを口コミで広めることができる。
また、ゲームでプレイした食べ物を、廃棄食品を減らす活動をしているハングリー・ハーベスト(Hungry Harvest)や、形の悪い農作物からジュースを作る活動をしているミスフィット・ジューサリー(MISFIT Juicery)から買うこともできる。
ウェクスラー氏とデシモーネ氏は、食べ物を題材にした取り組みを通じて、チームのすべての人と連携する方法や時間をもっと賢く使う方法など、いくつかのことを学んだ。なかでも重要なのは、「クリエイティブに関して限界はない」ことに気づいた点だ。

プレイヤーは、FacebookとTwitterでゲームをシェアできる
「私たちにはたくさんのアイデアがあるが、したいこととできることのバランスを取る必要がある」と、デシモーネ氏は語る。この2週間で、彼らのサイトを訪れたのは4000人だが、その75%はソーシャルメディア経由でアクセスしているという。
料理本のマイクロサイト(BBDO)
BBDOではこの5年間、自己紹介の新しい方法を考え出すという課題が毎年インターンに与えられている。この夏、世界の58の異なる学校からBBDOにやって来た74名のインターンは、「BBDOイーツ(BBDOEats)」という料理本のマイクロサイトを制作し、自分がどういう人間であるのかを伝えるちょっとしたレシピを全員が公開した。
レシピのなかには、ボリュームたっぷりのブランズウィック・シチューのような故郷の伝統料理もあれば、もっと比喩的な料理もある。たとえば、ニューヨーク大学からやって来た顧客管理担当のインターン(匿名希望)は、境界のないコミュニティで暮らしていくためのレシピを公開した。彼女の食材には、辞書、開かれた精神、5個を超えるソーシャルメディアアカウント、そして仮想プライベートネットワーク(VPN)が含まれている。
「Facebook、Wechat(微信)、カカオトーク(KakaoTalk)など、交流を続けるには複数のトレンドを抑えておく必要がある」と、彼女は述べる。「また、信頼性の高いVPNがあれば、中国のグレート・ファイアウォールさえも、愛する人とのコミュニケーションを妨げることはできない」。
インスタ自己紹介とスナチャの1日利用(アーノルド)
インスタグラムやSnapchat(スナップチャット)などのビジュアルプラットフォームは、アーノルド・ワールドワイドのインターンシッププログラムで中心的な役割を果たしている。7月から8月にかけて、ボストンにいる24名のインターンとニューヨークにいる4名のインターンは、インスタグラムを使った自己紹介に取り組んだ。それぞれの写真には、被写体となったインターンに関する興味深いキャプションが添えられている。
「すべてのコンテンツは当社のインターンが作ったものだ」と、アーノルドでエージェンシーマーケティング担当ディレクターを務めるジンジャー・ラドウィグ氏は言う。「このやり方なら、インターン期間中にさまざまなコンテンツを簡単に集めることができる。そのため、ウチのインターンは、アーノルドにおけるインターンとしての活動がどのようなものであるかを全体的な視野で眺められるようになる」。
アーノルド・ワールドワイドにインターンがやって来た! これから数日間、私たちは#Arntern16Xチームのメンバーをみなさんに紹介します。最初は、シェリー・ロマンジさん(@abominableroman)。当社制作部門のコピーライターで、プリンストン大学(@Princeton_University)の3年生です。音楽はシェリーさんの得意分野。彼女はあらゆるジャンルの曲を作曲したり演奏したりするのが大好きなだけでなく、8歳のときにはキッズ・チョイス・アワードで2万人の聴衆の前で歌ったことがあります。物を書くこと、編み物、そして料理も彼女の得意分野です。彼女の弱点ですか? 数学に関係するすべてことです。
また、インスタグラムでの自己紹介だけでなく、各インターンはSnapchatにサインインして独占的に利用し、「職場での1日」を記録する機会も与えられる。会議、チームランチ、都心への通勤の様子などを紹介するのだ。ソーシャルおよびコンテンツシステムチームでインターンをしているカーリー・シュウィーター氏は、Snapchatの独占利用を最近経験し、ブレインストーミングやチームミーティングの様子を紹介した。
シュウィーター氏はまた、アーノルドの本社ビルを歩きまわった様子を撮影した音楽入りのタイムラプス動画を、自分のインスタグラムアカウントに投稿している。「アーノルドは素敵なところなので、インスタグラムのフォロワー(1421名)に自慢したかったの」と、シュウィーター氏は語った。
ベルガモットのお出かけスポット(RPA)
6月にアート制作担当インターンとしてエージェンシーのRPAに加わったケルシー・シーダーメイヤー氏は、自分自身で考えたプロジェクトを制作するようにいわれた。そこで同氏は、ベルガモット駅のギャラリーで行われている展示会をリストにまとめ、RPAのスタッフが毎週水曜日の昼休みに見に行けるようにした。
「私たちの部署は、着想が得られる環境を常に探し求めており、ベルガモット駅は10分も離れていない場所にあるから、うってつけではないかと考えた」とシーダーメイヤー氏は語る。
また、おすすめのギャラリーだけでなく、RPAの「インスピレーション・ウォール」(同社がこれまで受け取ったアーティストや写真家の宣伝素材のコラージュ)をアレンジしなおし、カラーパターンを追加した。
「私は時間をかけて、会社が保有している宣伝素材を眺め、会社の持っている領域、スタイル、美的感覚に慣れるようにした」と、同氏は説明する。「色使いや色合いで宣伝素材を構成しなおせば、このウォールがもっとまとまりを持った芸術的な美しさを持てると感じた」。

RPAの「インスピレーション・ウォール」
RPAの広告担当幹部らは、シーダーメイヤー氏のクリエイティブな仕事を大いに気に入っている。「まるで、彼女に窓を与えてもらったようだ」と、同社でアートプロデューサーを務める、リンダ・ハードウィック氏は述べた。
若年層と政治に関する調査(ジャイアント・スプーン)
2016年は、アメリカの政治にとって重要な1年となる。ジャイアント・スプーンで戦略担当インターンを務めるロブ・ストーリー氏は、ミレニアル世代と政治の関係を魅力的なテーマとして捉えている。
「ほとんどの人々が、ミレニアル世代は怠け者で、実際には投票に行かないと考えているが、ミレニアル世代はソーシャルの場で政治について語っている」と、ストーリー氏は言う。「人々は、ソーシャルメディアが政治に与える影響を過小評価していると思う。ドナルド・トランプ氏がTwitterで何をしているのかを見て欲しい」。
ジャイアント・スプーンのシニアストラテジスト、ジャスティン・ラク氏によると、ストーリー氏の調査は、ファクトシートを作ったりコムスコア(comScore)のデータを丸写ししたりするのではなく、人類学的な視点から人々と文化を眺めるものだったという。
「たとえばロブは、ミレニアル世代にはゲーミフィケーションを好む傾向があると述べる。そのうえで、ヒラリー・クリントン氏が最近リリースしたキャンペーンアプリに、支持者にポイントを与えたり支持者をつなぎとめたりする機能が備わっていることは、その傾向の現れだと論じたのだ」と、ラク氏は語った。

Snapchatでのロブ氏のプレゼンテーション
ストーリー氏の作品をシェアするため、同社はジャイアント・スプーンのSnapchatチャンネルに同氏のプレゼンテーションを配信して、誰もが見られるようにした。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)
Homepage image via Arnold Worldwide.