匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらう DIGIDAYの告白シリーズ。今回は、ある広告代理店スタッフに、解雇によるストレスについて語ってもらった。この人物は、広告業界歴わずか3年のあいだに2度も解雇を経験している。
広告代理店(アドエージェンシー)での仕事には、つねにプレッシャーが付いてまわる。そしてその職業柄、クライアントや営業成績に大いに左右されるため、解雇は日常茶飯事だ。
しかも、ますます多くの代理店と持株会社が業務やブランドを統合し、マーケティングをインハウス化している昨今、解雇への不安はさらに増している。
匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらう DIGIDAYの告白シリーズ。今回は、ある広告代理店スタッフに、解雇によるストレスについて語ってもらった。この人物は、広告業界歴わずか3年のあいだに2度も解雇を経験している。1度目はパブリッシャー、最近経験した2度目は代理店でのことで、勤続年数はどちらも1年半ほどだったという。
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――最近、その代理店に解雇された理由は?
私の在籍部署がまるごと切られたの。会社がいちばんの大口客を失ったせいでね。総勢80名のうち、別のクライアントを割り当ててもらえたのは、ほんの数人。残りの社員に回せるだけの仕事がなくて、もうお手上げだって。まったく、いまでもはらわたが煮えくりかえってる。
――解雇予告はどのように?
そっちもひどくてね。電話会議の場で、全員に対して一斉に。個人的には、誕生日の前日だったんだ。それはともかく、そのあとの対応もほんと、メチャクチャもいいところだった。
――というと?
最初は、すぐに解雇するようなことはしない、と言われた。できるだけ多くの社員を残せるように努めると。でもそのうちに、残れるのはせいぜい15人で、残りは、ヨソの会社に追い出すつもりでいる、という噂が流れた。でも、会社はあくまで味方のふりをしたの。確かに、タウンミーティングみたいな質疑応答の場を毎週1時間ばかり設けてはいたけど、その誠意はただの見せかけでね。君たち全員の今後のことは、いついつまでに必ずはっきりさせる、とかなんとか言っていたくせに。
私も希望をきかれたから、ここに残りたいです、と伝えた。その会社がそれくらい好きだった。会社は、わかりました、残れるように努力しましょう、と。なのに、それから2カ月ものあいだ、残れるのかどうか、ひと言もなし。最初から決まっていたくせに、ずっと黙ってて、それで解雇通知を突きつけてきたんだ。
――それに対して、あなたは?
ひどいストレスのせいで、胃潰瘍になった。潰瘍なんて、生まれてはじめて。1週間、ろくに食べられなかった。上司にも泣きついたわ。でも上司は、いかにも面倒くさそうに、人事に言ってくれ、と。金と時間が山ほどかかるからやらないけど、本当は訴えたいわね。
――業界に入った当時、解雇は日常茶飯事だと思っていた?
まったく知らなかった。もし、そういうものだと知っていたら、近づかなかったと思う。私と一緒にクビになったベテランたちは、「よくあることさ、早く切り替えな」という感じでね。でも、はじめてそんな目に遭わされた連中はもちろん、途方に暮れていた。ベテランに聞きたいわ、「こんなことされて、なんで大丈夫なの? なんで黙ってるの? これって、最低じゃない?」って。
でもまあ、勉強にはなったかな。(従業員が雇用主について匿名で投稿できるサイト)Glassdoor(グラスドア)の代理店に関する口コミを読めば、一発でわかる。こういうのはごく当たり前のことで、この業界で働く以上、それなりの心構えがいるわけ。
――当時の年収と解雇手当の額は?
年収は5万ドル(約540万円)、解雇手当は小切手1枚、1500ドル(約16万円)だった。それでもラッキーな方だったんだと思う。なかには、1週間分の給料しかもらえなかった人もいたらしいから。
――職探しに不安は?
ないわね。というか、つい最近、別の広告代理店に就職できたの。ほかの人たちも多くはすぐに仕事が見つかって、無職の人はもうほとんどいない。それに、解雇があちこちで起きているのは業界の常識だから、採用責任者も事情をわかってくれているし。それと、今回のことで、私も賢くなったからね、今度はメディアエージェンシーを選んだ。メディア業界のほうが、仕事の数がはるかに多いから。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:SI Japan)