Facebookやインスタグラムが、動画の自動再生を採用したおかげで、音もなく静かに再生されるようになった動画広告。ホテルズドットコムやサウスウエスト航空の広告製作会社は、それぞれユニークなサイレント動画広告でエンゲージメント数を大きく伸ばした。ヒントはGIF画像や無声映画にあるという。
音声をオフにした動画を投稿するときの最大の課題は、メッセージをしっかり伝えるために、最初のフレームを出来る限り印象的にすること。そして、人々がスクロールで素通りせずに、つい見続けてしまうようにすることだ。
広告制作会社にとって現代は、1920年代の再来のような時代だ。
インスタグラムやFacebookが動画の自動再生を採用したおかげで、自分でクリックして音を出さない限り、動画は音もなく静かに再生されるようになった。逆に言えばこれは、ブランドやパブリッシャーが「音声があってもなくても同じように面白い広告」を作る努力が必要になったということだ。目を惹くデザインやサウンド、動きといった技巧にどっぷりと浸かっている広告制作会社にとって、こうした状況は、デザインと動きだけで創造性を発揮するという新たな課題を突きつけてくる。
GIF画像を参考に、自動再生動画を作る
マーティン・エージェンシー(The Martin Agency)でユーザーエクスペリエンス(UX)を担当するアレックス・マイコウスキー氏は、この状況について、次のように述べた。「勝利の決め手は、ユーザーとコンテンツの間にある垣根を取り除くことだ。音声をオンにするという余分な操作をしなくても見る人の目を惹く、魅力ある動画を作ることができれば、画面をスクロールしている最中に手を止めてもらえる確率が高くなる」。
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マイコウスキー氏は、サイレント動画が今後どのような効果をもたらすかを理解するうえで、GIF画像からたくさんのヒントを得てきたと語る。「GIF画像は、音声を使わずに、シンプルかつ素早くストーリーを伝える」。優れたGIF画像は「無声動画で関心を惹く方法についてインスピレーションを与えてくれる」という。
クリスピン・ポーター+ボガスキー(CP+B)のバイスプレジデントでクリエイティブディレクターを務めるマット・タルボット氏は、これはむしろ、何か独創的なことをする好機だと語る。「リッチメディアを使ったバナー広告と共通する部分が多い。バナー広告にも音は存在せず、クリックすれば音が再生されるだけだ」と説明した。
「音声がない」Facebook動画広告の好事例
各ブランドもまた、音声のない広告作りに向けて創造的で賢いアイデアを出している。たとえばCP+Bでは、ホテル予約サイトを運営する会社、ホテルズドットコムからの依頼で、音声の有無によって違う意味をもつ、Facebookの動画広告を作ったところ、エンゲージメント数がほかのFacebook動画広告と比べて5倍になったという。
その中身は、キャプテン・オブビアスが話す内容を伝えるサブタイトルと、手話通訳者の伝えている内容が実は違っていて、手話を理解できる人にだけ伝わる特別なメッセージをサイレント動画で発信していたというもの。手話のメッセージを理解して、ホテルズドットコムのFacebookページにコメントを残したものには特典を与えるというキャンペーンだった。
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Posted by Hotels.com on Tuesday, May 26, 2015
キャプテン・オブビアスの声は聴こえなくても、メッセージはちゃんと伝わる。
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Posted by Hotels.com on 2015年5月26日 火曜日
タルボット氏は、1920年代の映画を見ているときに、このアイデアを思いついたという。Hotels.comにとって幸運だったのは、キャプテン・オブビアスを演じた俳優がとても魅力的で、顔で感情をうまく表していることだ。コンセプト全体がうまく機能しており、Facebookの広告スペースをもっと買いたいという気持ちに駆られるほどの出来だろう。このケースでは、音声のないことが問題ではなく、逆にメリットだったからだ。
サウスウエスト航空の「まるで催眠術にかけるかのような」スポット広告(上の動画)を作成している、広告代理店GSD&Mのクリエイティブディレクター、スコット・ブリュワー氏は、次のように説明する。「ポイントは、音声のない動画をユーザーの経験とうまく関連づけること。テキストをチカチカ点滅させたり、醜悪な動きを入れたりするなど、安っぽい戦術に頼らないことだ」。
新しい動画広告の「機会」と「懸念」
米の広告制作会社、Hugeのクリエイティブディレクターであるデイブ・タッパー氏は、次のように語る。Facebookやインスタグラムに音声をオフにした動画を投稿するときの最大の課題は、メッセージをしっかり伝えるために、最初のフレームを出来る限り印象的にして、人々がスクロールで素通りせずについ見続けてしまうようにすることだという。「こうした動画は間違いなくチャンスだ。注意は引くが、煩わせはしないところがポイントだ」。
だが、多くの広告制作会社にとって、デジタル業界で起こる変化のペースについて行くのはやはり困難を極める。CP+Bのタルボット氏は、「現在標準になっていていることも、すぐに過去のものになってしまう。制作のためのリードタイムがたっぷりあるわけでもない。厳しい状況だ」と語った。
Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)
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