FUTURE OF WORK

大型イベントの「作戦室」を仮想化するエージェンシーたち:「これはオフィス空間の未来に関することだ」

例年、スーパーボウル開催日には、ソーシャルメディアチームやアカウント担当責任者、クライアントが、混み合った作戦室(ウォールーム)に籠もってTVやコンピュータの画面を取り囲み、スポット広告がオンエアされるのを待っている姿が見られる。だが、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってからほぼ1年が過ぎ、スーパーボウルの作戦室はバーチャル化された。

R/GAのチームの場合、アカウントディレクターのベッカ・ティーチ氏によると、パンデミック中に対面で集まるのは問題外だったという。だが、スーパーボウルは、広告を配信する最大級の舞台であり──チームが連携し、ソーシャル投稿や、その他のクリエイティブコンテンツの制作・発行にリアルタイムで取り組める──作戦室をあきらめるという選択肢もなかった。代わりに、チームは、SlackやZoom、Microsoft Teams、Google Meetといったバーチャル会議ツールを利用して、チームと、今年のスーパーボウルの広告枠を確保しているクライアント、ウーバー(Uber)とウーバーイーツ(Uber Eats)用のバーチャルワークスペースを構築した。

グレイグループ(Grey Group)でソーシャルメディア担当エグゼクティブディレクターを務めるケニー・ゴールド氏によると、バーチャル作戦室は、コロナ禍で加速しているコンセプトだという。ゴールド氏が率いるソーシャルメディアチームでは、2020年の今頃にパンデミックが始まって以来、バーチャル作戦室をテストしてきた。チームが同じ部屋にいなくてもリアルタイムで協働を続けられる方法を見つけることが、業界にとって必要な措置となる。

「作戦室を構築して、リモートで行えることが、業界がシフトしつつある道を示唆している」と、ゴールド氏はいう。

あらかじめ計画することが成功の鍵

1年前、ゴールド氏のチームは、実際に集まってスーパーボウルと広告を観た。それまでの試合では、グレイグループは、チームメイトがゲームプランのコンテンツを用意して、リアルタイムでソーシャルメディアで会話に参加できるようにするための巨大なピンボードを用いて、全力を尽くしたという。スポット広告がオンエアされると、ピンボードからコンテンツが取り去られ、スタッフが残りの投稿内容を把握できるようにしたと、ゴールド氏は説明する。

「共にいて、必要な設備を用意し、準備を整えておくことで実現できることだ」と、ゴールド氏は語った。

2021年、ゴールド氏らグレイグループは、プリングルズ(Pringles)向けのクライアントのスポット広告を監督した。ゴールド氏のチームは、春にバーチャル作戦室を試し始め、クライアントであるフランクス・レッドホット(Frank’s RedHot)向けのアクティベーションを開始した。ゴールド氏によると、あらかじめ計画する(ソーシャルキャンペーンに備えてデザインファイル、コピー、色調に関するガイドラインを用意する)ことが、バーチャルでの成功の鍵だという。

バーチャル作戦室に乗り出しているのは、グレイグループとR/GAだけではない。2021年の試合に先立ち、PRウィーク(PRWeek)は、ウェーバー・シャンドウィック/3PM(Weber Shandwick/3PM)のバーチャル作戦室戦略について報じ、技術を利用して、リアルタイムでオンラインの会話を監視し、そこに参加する事例を紹介している。「私たち全員をつなぐ技術を除けば、違いはない。軽食が少ないだけだ」と、ウェーバー・シャンウィック/3PMでエグゼクティブバイスプレジデントを務めるブライアン・ウィリアムズ氏は述べている。

バーチャル作戦室における課題

だが、R/GAのエグゼクティブクリエイティブディレクター、チャピン・クラーク氏によると、バーチャル作戦室への移行には課題があったという。ウーバーおよびウーバーイーツのグローバルソーシャルメディア担当主任を務めるクリス・ジャクソン氏と同じく、クラーク氏はライブ配信でスーパーボウルを観戦した。一方、ティーチ氏は、TV放送で視聴した。

米国の東海岸と西海岸で働くチームメイトとのあいだでは、バーチャル空間で迅速に働くことが不可欠だ。「こういう時には、1秒、1秒が大事だ。すばやい反応が重要で、遅れが、適切なタイミングをつかむか、機会を逃すかの違いにつながりかねず、先を見越して進まなければならない」と、クラーク氏は話す。

ウーバーイーツのスポット広告のオンエア初日に先立ち、ラッパーのカーディ・Bは、ウーバーイーツやR/GAのチームの知らないうちに、スポット広告でのカメオ出演をほのめかすツイートを投稿した。この1件のツイートにより、R/GAとウーバーイーツは上手く対応する方法を見つけようとリアルタイムで動いたので、バーチャル作戦室は予想されていたよりも早く始動した。

「皆がZoomを利用しているので、作戦室内でエネルギーを消耗するような感じだ。何もかもが2次元風だ」と、ジャクソン氏は話す。

バーチャルツールが優れているのと同様に、作戦室で、一緒にスーパーボウルのような大イベントを視聴したり、リアルタイムで対応を考えたりすることには何かがあると、クラーク氏は語る。作戦室でリアルタイムに行われる対面での会話は失われるが、「対面での会話は、バーチャルで完全に再現できるとは思えない効率性がある」。

もっと前に導入されているべきだった

とはいえ、Zoomの課題はあるものの、バーチャル作戦室なら、エージェンシーは、ソーシャルチャンネル向けのリアルタイムの取り組みを続けられる。スーパーボウルやそれ以上の大イベントには、そうした協働が必要だ。R/GAの場合、スーパーボウルは、「4時間の時間枠に押し込まれて、一緒に働かなくてはならないひととき」だとわかったと、ティーチ氏は話す。

協働スペースの将来に目を向けるなかで、SlackやZoom、Microsoft Teamsのようなバーチャル空間が、もっと前に導入されているべきだった技術であることを、広告業界の一部は知っていたと、ゴールド氏は指摘する。バーチャル技術に反対してきた業界のほかの者たちにとって、今後も続いていくであろう現実とプラットフォームのシフトに適応する必要性がますます高くなる。

「これは、バーチャル作戦室よりも大きな問題だ。私の意見では、これはオフィス空間の未来に関することなのだ」と、ゴールド氏は語った。

[原文:‘This is about the future of office space’: Agencies pivot to virtual war rooms for major events

KIMEKO MCCOY(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:長田真)