ブロックチェーン に便乗する、エージェンシーたちの思惑:「現実的にはコンセプトのようなもの」

ホライズン・メディア(Horizon Media)は今年3月、ブロックチェーンに関するサミットを主催し、各種プラットフォームたちが参加した。議題はブロックチェーン技術の取り組みだ。ブロックチェーンについてエージェンシーたちに教育機会を与えること、そして彼らが抱えるパブリッシャークライアントたちに興味を持ってもらうことがカンファレンスの目的だった。

ブロックチェーンは安全にシェアするために情報が暗号化された台帳のようなもので、メディア上の流れを広告主たちがトラッキングすることを可能にする。ホライズン・メディアはこれまで、メディアサプライチェーンにおける広告詐欺を撲滅するという目標に対して、ブロックチェーン技術は有効なのか懐疑的だった。

「全員がブロックチェーンについて知りたがっていた。しかし、それが一体何なのか、分かってる人はあまりいなかった」と語るのは、ホライズン・メディアの広告オペレーション部門バイスプレジデントであるエリック・ウォーバートン氏だ。「カンファレンスを実施して明確になったのは、ブロックチェーンは新しすぎて、まだまだテストが必要だということだ」。ホライズン・メディアはブロックチェーン技術をテストしたいと思っているクライアントを積極的に探し求めている。今後のキャンペーンにそれを活かすことで、広告詐欺を撲滅することができるのか、見たいと思っているのだ。

「コンセプトのようなもの」

ブロックチェーンの波に乗ろうとしているエージェンシーは、ホライズン・メディアだけではない。ハバス(Havas)、グループ・エムGroupM)、ドローガ5(Droga5)、ザ・マーケティング・グループ(The Marketing Group)、360iもブロックチェーン活用に関してクライアントたちと一緒に戦略を練っているという。しかし、彼らは詳細を明かさなかった。

このテクノロジーが広告詐欺を排除できるかどうか、マーケターたちは疑問を呈している。現状では、ただエージェンシーたちが、一時的な新しいトレンドを利用して、お金を得ようとしているだけだと考えている。

「現実的に言うと、実用的というよりはコンセプトのようなものだ」と語ったのは、ブルックリンにあるクリエイティブエージェンシー、マッドベル(Madwell)のCEOであるデイヴィッド・アイゼンマン氏だ。「広告会社たちがブロックチェーンを使っていることは、ほとんど確認できていない。もしくは、本格的にブロックチェーンを使って、メディア展開されているというのも見たことがない。『注目されている』という点を人々がただ利用しようとしているだけだと、私は思う」。

これまでのところ、ブロックチェーンの使用法はサプライチェーン管理とファイナンスサービスに存在してきた。たとえば、トローガ5はブロックチェーンを使ってプロダクトに使われる素材が本物かどうかの承認を行っているクライアントがあるというが、クライアント名は明かさなかった。ハバスは、フランスのスーパーマーケットであるケアフォア(Carrefour)と一緒に、鶏肉の生産地はどこであるかをブロックチェーンを使って承認し、この情報をウェブサイト上に表示するということに取り組んでいる。こういった例であればエージェンシーたちはたくさん持っているが、広告におけるブロックチェーン活用に関してはそれほど例がない。

広告活用の歴史は浅い

「広告においては、ブロックチェーン活用はほとんど存在していない」と、とあるエージェンシーのエグゼクティブは語ってくれた。彼はまさにクライアントとブロックチェーンで取り組んでいるエージェンシーで働いているため、匿名を希望した。

もちろんエージェンシーに聞けば、異なった話が飛び出してくる。ザ・マーケティング・グループがブロックチェーン技術を使うエージェンシーとして11月にローンチしたエージェンシー、トゥルース(Truth)のCEOメアリー・キーンドーソン氏によると、5つのクライアントと現在ブロックチェーン技術に取り組んでいるという。パートナーの名前は明かさなかったがキーンドーソン氏は、ブロックチェーン技術を提供することによって競争優位を得ていると考えているようだ。Facebookのデータ流出問題がどんどんと明るみになるなか、業界では特に透明性が大きな重要性を持っている。しかし、まだ歴史は浅い。トゥルースによる最初のブロックチェーンによるキャンペーンは3月末にローンチされたばかりだ。キーンドーソン氏自身も、ブロックチェーンの効率性はまだテスト中であると言っている。

AT&TやIBM、そしてユニリーバ(Unilever)といったブランドたちもブロックチェーンに試験的に取り組んでいる。しかし、エージェンシーに頼むのではなく、NYIAX(ニューヨーク・インタラクティブ広告エクスチェンジ)やアミノ・ペイメンツ(Amino Payments)といった広告マーケットプレイスと直接取り組んでいるようだ。

広告詐欺には十分でない

ブロックチェーン技術は情報をデータベースに保管する賢い方法かもしれないが、広告詐欺に対抗するという点では十分ではないと、アイゼンマン氏は言う。ほとんどの広告詐欺は、人が作ったボットがインプレッション、クリック、ビュー数の割増に使われることで行われていると、彼は考えており、暗号化された情報のデータベースが登場しても、ボットを止めることはできないだろう、というわけだ。なぜなら、誤った情報をそこに加えることは、それでも出来るからだ。

パーミッションド・ブロックチェーンについては、これが特に顕著だとアイゼンマン氏は主張する。ビットコインはパーミッション(承認)を与える承認者が存在しないため、ひとつの団体や組織などによってコントロールされるということがない。しかし、ほとんどの会社のブロックチェーンはパーミッションド形式、つまり誰が情報をブロックチェーンに追加するかどうかについて、会社がすべてのコントロールを持っている形になっている。

「たとえば、あなたがウォルマート(Walmart)でサプライチェーン管理をしていて、ブロックチェーンを利用しているとしたら。世界中の全員がそこにアクセスできるようにはしないはずだ。特定の人々がそこにアクセスできるようにする承認コマンドをセットアップするだろう。しかし、それを複数の関係者に公開してしまうことにリスクが伴っている」と、アイゼンマン氏は言う。

「なりすまし」には有効かも

ウォーバートン氏は、ブロックチェーンが広告詐欺のすべてを解決するわけではないが、ドメインスプーフィング(なりすまし)に対抗する助けにはなるだろうという。広告エクスチェンジにおいて、ドメインネームが本物のドメインネームか、ボットからによるものかをプログラマティックのベンダーが見ることができるからだ。

「ブロックチェーンがしていることは、『あなたはこのペイメントIDを持っているからCNNだ』と特定してくれることにある。ほかの誰かが入ってきてIDなしに『自分は誰それだ』と名乗ることはできないのだ」と、ウォーバートン氏は説明する。

ホライズン・メディアはドメインスプーフィングにブロックチェーンがどう対抗できるのかをテストしたいと考えている。しかしクライアントからは反発があるようだ。「新しいテクノロジーをテストしたいと思っていても、パブリッシャーからは単純にノーと言われてしまうことが多い」と、彼は言った。ブロックチェーンのテストをするためには、クライアントたちに対してより積極的になる必要があるという。

「パブリッシャー自身が自分たちをちゃんと監督できるか、ということに関しては私は悲観的だ。彼らのほとんどが、そんなことをしたくないと思っていることが、もはや明らかになったからだ。これを言いたくないが、原因はお金にある」と、ウォーバートンは語った。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:塚本 紺)