週末は Slack 禁止!:「燃え尽き」症候群を防ぐ、エージェンシーたちの取り組み

エージェンシー、アナグラム(Anagram)のCEOでありファウンダーであるアダム・ケーヒル氏は、3年前に起業して以来、シンプルな哲学を掲げてきた。スタッフには彼らがやりたい方法で働かせるというものだ。会社のインスピレーションとなったのは、とあるスウェーデン人のモデルによる1日6時間の勤務と無制限のバケーションという勤務形態だ。しかし、ケーヒル氏はこの考えをさらに進化させたいと思っていた。最近になって長時間勤務とそれがメンタルヘルスに与える影響に関するニュースが増えたことで、彼は就労時間後のコミニュケーションを禁止するという規則を施行した。その内容がシンプルだ。eメールとスラック(Slack)は夜と週末は使用禁止、というものだ。(もちろん緊急事態は除いて)。

「常に全員が対応できる体制でいないといけなく、そこから離れることができないのは非生産的だ。人々は仕事に関してプレッシャーを感じてしまう。これは私には馬鹿げているように感じられる。具体的かつシンプルなことを我々は行いたいと思っていた。そのためそれをルールにした」。

広告業で20年の経歴を持つベテランのケーヒル氏は、このルールを施行して以来、彼自身もプレッシャーが減ったと語る。そして、彼だけではない。メンタルヘルスに関する問題や燃え尽き症候群といった問題を避けるための新しい方法をエージェンシーたちは行おうとしている。その方法にはコミニュケーションの禁止や同僚によるサポートチームの結成などがある。

「過去20年間に置いて、エージェンシーの仕事量に関する期待が変わったとは思わない。エージェンシーの業務は締め切りに追われるものであり、大規模なミーティングを重ね、キャンペーンや売り込みと言ったプロセスが何度も何度も繰り返される。夜遅くまで働くかないといけないという感覚は常に存在していた。大きな変化を生んだのはスマートフォンだ。業務上のピークとピークのあいだですら人々はつながっている。頭がリラックスすることなく、接続から離れることがなければ、燃え尽き症候群につながる蓄積される影響があると、私は思う」と、彼は語る。

「あなたの時間はあなたの時間」

デザインエージェンシーであるブラウン・アンド・カンパニー(Brown & Co.)のファウンダーを務めるトロイ・ウェイド氏はかつて、大手ホールディングカンパニーのエージェンシーで働いていた。彼もビジネスのペースが非常に速くなったと語る。2002年から2006年のあいだ、ウェイド氏はフリーランスになり、休暇を取り旅行をしている。これは彼の同僚たちの多くが燃え尽き症候群に苦しみ、ドラッグに手を出し、家族との生活が犠牲になっていることに気づいたからだった。「クリエイティブな報酬ではあっても、それに対する犠牲が大きかった。それが私を心配させた」と、彼は言う。

ウェイド氏が業界に戻ってきたとき、その心配は変わらなかった。

彼にとってのターニングポイントは、自宅で飼っていたペットが病気になったときだった。獣医に連れて行くために仕事を休んでもいいかと上司に聞いたら、「上司はダメだと言った」と、彼は言う。「これをきっかけにずいぶん長く考えた。残業や週末も働くことを人々には求めるにもかかわらず、個人的な理由で休暇が必要なときや自分のために何かをしたいときには、それは許されない状況だ」。

現在50人のスタッフを抱えるウェイド氏のエージェンシーだが、彼が創立したとき、この状況を止めるために完全なリモート勤務を行うことを決めた。彼のエージェンシーはオフィスを持っておらず、休暇も無制限となっている。

グローバル規模である彼の会社は「共同勤務する時差の帯」を狭めてもいる。それによって地域の時間帯が異なっているスタッフとは、仕事を一緒に行うことはなるべく起きないようになっている。「これまでは『私の時間は私の時間、しかしあなたの時間も私の時間』が業界の考えで、『あなたの時間はあなたの時間』とは考えられていなかった、我々がそれを変えなくてはいけない」。

32%がメンタルヘルスに懸念

DIGIDAY+によるリサーチでは、エージェンシーに勤めるプロフェッショナルのうち32%が自分のメンタルヘルスに対して心配を抱えていると報告している。この傾向はミレニアル世代による燃え尽き症候群に関する全国的な議論や、それにまつわる統計とも一致している。

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エージェンシー自身が抱える具体的な特徴のせいで、この問題はさらに状況悪化していると語るエグゼクティブたちもいる。長時間の勤務は一般的であり、クライアントにサービスを提供するというビジネスの性質が、スケジュールを決めることを難しくしている。

エージェンシーの従業員たちの勤務時間とメンタルヘルスのあいだに相関関係があることもDIGIDAYリサーチは示唆している。1週間の勤務時間が50時間から59時間のあいだである人々の40%ほどが自分のメンタルヘルスについて懸念を持っていると回答している。一方で40時間から49時間の従業員のうち約27%が懸念を持っていると回答している。

勤務形態を変えるチャンス

「広告エージェンシーはしばしば、ストレスの高い就労環境であると知られている。しかし、我々が発見したのは、我々の業界は実際には勤務形態を変える素晴らしいチャンスが眠っていることだ」と、ピュブリシス・ヘルス・サーチー・ウェルネス(Publicis Health and Saatchi Wellness)の最高法令順守責任者であるキャシー・デレイニー氏は言う。外の世界に出て、自宅で働くよう仕向けることが、彼女のエージェンシーではルールとなっている。「オフィスの外に出て、さまざまなものを見て、感じて、体験することで、蛍光灯の下で働くことによるストレスから解放される。またそれだけではなく、オーディエンスとのつながりが良い仕事が生まれる」。

従業員たちがメンタルヘルスやストレスといった課題について語り合うための方法を探る会社が増えていることも変化のひとつである。具体的な例としては、従業員たちはマネージャーとこれらの問題について語り、マネージャーはメンタル面での回復のために時間をかけることを促すことが挙げられると、デレイニー氏は言う。

ニューオーリンズの独立系エージェンシーであるピーター・メイヤー(Peter Mayer)では、ストレス、危機的状況、健康関連の問題に従業員たちが取り組むために作られた支援プログラムにリソースが割り当てられている。ストレスや悲しみの対処法、職場での言動や栄養摂取についてまで、プロとのコンサルテーションが6回まで無料で受けることができる。彼らの従業員の23%がこれまで申し込みをしたという。

また、社内チーム「ビー・ベター・トゥゲザー(一緒により健康になろう)」も存在する。ピーター・メイヤーの人事課マネージャーであるアンドレア・ラブ氏によると、このチームは燃え尽き症候群を避けるためのイベントを行っている。そして、ペットを連れてきても良いという「オープン・ペット」ポリシーも存在する。

コーチや心理療法士も存在

独立系エージェンシーのライトポイント(Rightpoint)では、従業員たちがボランティアで集って新しく作られたチーム「コンパッション・クルー(Compassion Crew)」というグループが、同僚同士のカウンセラーとして機能している。仕事や健康に関する問題やその他のニーズについて従業員たちの話を聴き、上の役職にそれを伝えている。

エッセンス(Essence)では、オフィスの数カ所に「ハピネス・ボタン」が設置された。それを使って、従業員が1日のあいだにどのような気分を持っているのかを測っている。また「逆向きの」モニタリングプログラムとして、ただキャリアについてだけでなくストレスや燃え尽き症候群について語ることのできるプログラムもある。さらに難しい会話、「困難な体験」、大きなプレゼンテーションといったイベントの前に助けてくれるコーチや心理療法士も存在している。

Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)