ジェネレーティブAIを業務に取り入れるエージェンシーが増えるにつれ、これらのツールが著作権侵害やコンテンツの偏りを避けるためにどの程度信頼できるのかという懸念が高まっている。
エージェンシーやマーケター向けのAIコーチング・トレーニングサービスを提供するヒューマンドリブンAI(Human Driven AI)は8月、企業内の広告チームやエージェンシーチームを含む1100人の米国マーケターを対象に「最も使用しているAIツールと、これらのテクノロジーに関する今後の課題や規制、組織における現在のトレーニングや教育に関する調査」を行なった。企業規模はさまざまで、回答者の42%が従業員数101~2000人の企業、30%が従業員数2000人以上の企業、28%が従業員数21~100人の組織であった。
「AIはデジタルマーケティングに革命をもたらした」
大手エージェンシーグループや独立系エージェンシーの多くは、企業やメディアサイドの顧客向けにジェネレーティブAIの応用を模索している。アマゾン(Amazon)やマイクロソフト(Microsoft)のようなハイテク大手と提携しているところもあれば、戦略やメディアプランニングで日常的にジェネレーティブAIをテストしているところもある。
「ジェネレーティブモデルと自然言語処理における急速な進歩は、AIを理論的な可能性から実用的な応用へと、ほとんど一夜にして引き上げた」と、ヒューマンドリブンAIの創設者であるジェニファー・ジョーンズ=ミッチェル氏は言う。「これまでにないほどカスタマイズされたサービスの提供から顧客エンゲージメントの強化まで、AIはデジタルマーケティングの展望に革命をもたらしている」。
ここでは、ヒューマンドリブンAIの調査結果の一部と、調査結果に対するエージェンシー側の反応を紹介する。
品質に対する懸念と規制
そもそも、エージェンシーは現在どの程度AIを信頼しているのだろうか。報告書では、回答者の63%はAIが生成したコンテンツや画像を使用する際に著作権侵害を懸念していることがわかった。このようなケースの一部はすでに訴訟になっており、2022年には複数のアーティストが、AIに学習させるため彼らのオリジナル作品を無許諾で使用したとして、複数のジェネレーティブAIプラットフォームを訴えている。
これは、判決によっては侵害罰則につながる可能性がある。2023年に入ってからも、企業が数千(潜在的には数百万)もの無許諾作品を含むデータリポジトリを活用し、AIモデルの学習に使用したという同様の主張がなされている。
さらに41%は、これらのツールに内在するバイアスについて懸念を抱いており、そのバイアスがインターネット上のコンテンツから取り込まれたものだと考えている。
「マーケティング担当者は、倫理的そしてヒューマンセントリックな方法で、AIの活用に責任を持ちながら効果的に使用するため、どのようにAIを自社の業務に統合すればよいのか、まだ考えあぐねている」とジョーンズ=ミッチェル氏は述べる。
ジェネレーティブAIを業務に取り入れるエージェンシーが増えるにつれ、これらのツールが著作権侵害やコンテンツの偏りを避けるためにどの程度信頼できるのかという懸念が高まっている。
エージェンシーやマーケター向けのAIコーチング・トレーニングサービスを提供するヒューマンドリブンAI(Human Driven AI)は8月、企業内の広告チームやエージェンシーチームを含む1100人の米国マーケターを対象に「最も使用しているAIツールと、これらのテクノロジーに関する今後の課題や規制、組織における現在のトレーニングや教育に関する調査」を行なった。企業規模はさまざまで、回答者の42%が従業員数101~2000人の企業、30%が従業員数2000人以上の企業、28%が従業員数21~100人の組織であった。
「AIはデジタルマーケティングに革命をもたらした」
大手エージェンシーグループや独立系エージェンシーの多くは、企業やメディアサイドの顧客向けにジェネレーティブAIの応用を模索している。アマゾン(Amazon)やマイクロソフト(Microsoft)のようなハイテク大手と提携しているところもあれば、戦略やメディアプランニングで日常的にジェネレーティブAIをテストしているところもある。
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「ジェネレーティブモデルと自然言語処理における急速な進歩は、AIを理論的な可能性から実用的な応用へと、ほとんど一夜にして引き上げた」と、ヒューマンドリブンAIの創設者であるジェニファー・ジョーンズ=ミッチェル氏は言う。「これまでにないほどカスタマイズされたサービスの提供から顧客エンゲージメントの強化まで、AIはデジタルマーケティングの展望に革命をもたらしている」。
ここでは、ヒューマンドリブンAIの調査結果の一部と、調査結果に対するエージェンシー側の反応を紹介する。
品質に対する懸念と規制
そもそも、エージェンシーは現在どの程度AIを信頼しているのだろうか。報告書では、回答者の63%はAIが生成したコンテンツや画像を使用する際に著作権侵害を懸念していることがわかった。このようなケースの一部はすでに訴訟になっており、2022年には複数のアーティストが、AIに学習させるため彼らのオリジナル作品を無許諾で使用したとして、複数のジェネレーティブAIプラットフォームを訴えている。
これは、判決によっては侵害罰則につながる可能性がある。2023年に入ってからも、企業が数千(潜在的には数百万)もの無許諾作品を含むデータリポジトリを活用し、AIモデルの学習に使用したという同様の主張がなされている。
さらに41%は、これらのツールに内在するバイアスについて懸念を抱いており、そのバイアスがインターネット上のコンテンツから取り込まれたものだと考えている。
「マーケティング担当者は、倫理的そしてヒューマンセントリックな方法で、AIの活用に責任を持ちながら効果的に使用するため、どのようにAIを自社の業務に統合すればよいのか、まだ考えあぐねている」とジョーンズ=ミッチェル氏は述べる。「業界での過度な期待が落ち着くにつれ、ブランドは、実際にAIをビジネスに導入する際の準備状況をチェックし、人材をスキルアップし、AIによる変革が企業と消費者の双方に利益をもたらすことを保証するためのガバナンスを開発するためにフレームワークを必要としている」。
AIツールの利用が拡大し続けるなか、エージェンシーは規制や倫理的な懸念も抱いている。報告書では83%の人が「追いつくべきツールの多さ」に圧倒されていると感じており、92%がハイテク企業の自主規制を信用していないことが確認された。彼らが最も懸念しているのは、ジェネレーティブAIの誤った使い方や、非倫理的な活用によるリスクであり、多くの人々が業界団体に頼ってガイドラインを確立しようとしていると述べている。
現状は人間が不可欠
ここ数カ月、エージェンシーはブランドの安全性、質の低いコンテンツ、ジェネレーティブAIによって悪化する広告や制作の無駄といった問題を提起してきた。
今のところ、クライアントにAIの影響を理解してもらうため、慎重なアプローチをとっているところもある。IPGグループのヒュージ(Huge)でグループ・クリエイティブ・ディレクターを務めるナタリー・コミンズ氏は以前、「現状コンテンツ開発のプロセスには人間が不可欠である」と語った。
「なぜかというと、人間はテクノロジーのリスクとリターンを調整し、テクノロジーだけではできないプライバシーと品質の基準を守る手助けができると信じているからだ」とコミンズ氏は述べた。
現在のAIツール
エージェンシーがニーズに応じて技術スタックに組み込んでいるマーケティング用のAIツールには、さまざまなものがある。DALLE-2とGPT-3モデルを使用して広告用の画像やテキストを生成するプラットフォーム、オムネキー(Omneky)のチーフ・クリエイティブ・オフィサー、アメリア・ベルトー氏は「我々はジェネレーティブ・ツールを使用することによって、広告パフォーマンスから新たな知見を直接得ている」と述べた。これにより、ブランドやクリエイターは、成功した広告を分析し、迅速なクリエイティブ制作が可能となる。
「全体として、我々はAI単独よりも人間とAIが組み合わせることで優れたコンテンツを生み出せると信じており、人間の創造性を高めるツールの作成に向けて取り組んでいる」とベルトー氏は語った。
教育とトレーニング
調査対象となったエージェンシーや社内チーム全体において、多くのエージェンシーがジェネレーティブAIに関する専門的な教育を望んでいると回答しており、回答者の54%が2023年、エージェンシーや会社がAIツールに投資していると答え、72%が2023年、雇用主がAIの社員研修を提供してほしいと望んでいる。
電通からオムニコム(Omnicom)まで、メディアエージェンシーは、AI能力を開発するためのトレーニングやリソースへの社内投資に注力している。電通の場合、7月にマイクロソフトと提携し、クライアント向けのプロトタイプやソリューションを開発する全チームにAIリソースを提供している。オムニコムもマイクロソフトと提携し、AIインフラを構築している。また、最近、同社のネットワークとエージェンシーに「Automationセンター オブ エクセレンス(Automation CoE)」を設立し、ユースケースの探求に注力している。
AIがエージェンシーの差別化要因になりつつある中、メディアモンクス(Media.Monks)のハイテク部門であるフォーミュラモンクス(Formula Monks)のCEOブレイディ・ブリム=デフォレスト氏は、「AIを完全に受け入れたものこそが未来を支配する」と確信している。そのためには、AIを活用するチーム(AIを活用したソリューション開発やキャンペーン活動など)にどう投資するかがポイントになる。
「競争の中で他社の先を行くことが重要であり、AIこそがそれを実現する究極のゲームチェンジャーなのだ」とブリム=デフォレスト氏は語った。
[原文:Agencies are concerned about how much to trust generative AI]
Antoinette Siu(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)