米DIGIDAYのアドテク専門記者ロス・ベネス氏は、SSPをめぐって、プレミアム媒体にとって価値が薄れているが「ないよりもあるほうが需要を多く集められるパブリッシャーがある」という記事を書いた。 SSPは非効率的だが、な […]
米DIGIDAYのアドテク専門記者ロス・ベネス氏は、SSPをめぐって、プレミアム媒体にとって価値が薄れているが「ないよりもあるほうが需要を多く集められるパブリッシャーがある」という記事を書いた。
SSPは非効率的だが、ないよりもあるほうが需要を多く集められるパブリッシャーがあるのだから、ニーズはまだあるのだと、複数の関係筋が強調した。だから、完全に萎んでしまうのではなく、市場規模が縮小するにつれて、効率のいいSSPは合併することになるだろう。
技術進歩を活かし、プレミアム在庫をもつ媒体は、デマンドと直接接続して予約型などの高単価案件で売ればいいという。廉価な在庫を大量に捌くモデルが確立しているパブリッシャーにとっては、SSPは依然として意味合いがあるようだ。つまり、(1)リソースを割いてSSPをスキップするか、(2)ヘッダー入札などの最新の技術開発に熱心な「元SSP」に委託してフィーを渡す―のどちらが収益性が高いか、だ。これは媒体や在庫の性質による。
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デジタル広告先進国の米国、英国ではデジタル広告をプログラマティックバイイング(DIGIDAY定義:データを利用する自動化された買い付け)で取引する流れが主流だ。伝統的なニューヨーク・タイムズも主導権をもつ形で、プログラマティックでプレミアム動画在庫を取引している。
広告主/代理店側からは一部の米SSPに関して不透明な行いを指摘されていた(ロス・ベネス記者の関連記事)。商流という観点で見れば、基本的には「在庫を再販売している」ので、買い手側にもスキップするインセンティブが生じやすい。
ただし、これはアメリカの話。日本にはこの前提条件となる技術の採用が進んでおらず、パブリッシャーには現状はこの分野の知見と開発部隊が薄く、日本のアナログ媒体に対するデジタル広告市場の比率はほかの富裕国と比べてとても小さい。
アドテクはその初期からカオスマップに代表されるエコシステムが生まれた。課題はステークホルダーの多さに根ざした、パイの細分化であり、透明性だった。

Chaos map via LUMAscapes
近年はGoogleとFacebookのデュオポリー(2者独占)で商流・システムが極めて簡略化されてきた。両者のエコシステムを介さない部分に関しても上述の通り、「SSPという役割」の縮小可能性やダイレクトなプログラマティックの台頭があり、商流・システムの簡略化が目指されている。
買い手側も簡易な買い付け志向
WPPもアドテク企業アップネクサス(AppNexus)への出資を通じ、トレーディングデスクを通じたカオスマップ一気通貫に注力したが、GoogleやFacebookなどの大型プレイヤーの壁は厚く、透明性の課題にぶつかっており、近年はGoogleの買い付けに秀でたエッセンス(Essence)を買収し、予算を2社に振り向けてきた。
WPP CEOのマーティン・ソレル氏によると、2016年の同社の上位広告予算投資先はGoogle(50億ドル)、Facebook(17億ドル)、懇意にするルパート・マードック氏のFOXとニューズコープ合算(25億ドル)というバランス(Adweek参照)。ソレル氏はここに近く上場のSnapchatが三番手に入るという見通しをもっている。昨年の投資額は9000万ドルにとどまったが、今後は増やすだろう。
以下、今週の他のトピック。
▼NYTがデジタル動画をプログラマティック買い付けに開放
AdExchangerによると、ニューヨーク・タイムズはプログラマティックによる広告買い付けの前に、クライアントとNYTの営業とで一度話し合いを設けている。広告需要が拡大する第4四半期には予約型のプログラマティックの買い付けを広告主側に奨めていた。予約型のプログラマティックと営業担当からの直接買い付けの価格を同水準に設定している。
▼Snap上場、時価総額2兆6800億円
Snapchatを運営するSnaph2日(現地時間)に新規株式上場した。株価は上場直後45%上昇。時価総額は一時330億ドル(約3兆6000億円)を超えていた。
▼YouTubeがネットテレビを開始
YouTubeが40ネットワーク・月額35ドルのインターネットテレビを発表。WSJが報じた。同じジャンルには昨年冬に米通信大手AT&T傘下のDirect TV Nowが参入。Facebookは今週、コネクティッドTV用のアプリをローンチした。
今年はテレビとデジタルの融合の年。
▼マイクロソフトなどブロックチェーン企業同盟発足
JPモルガンチェース、マイクロソフト、インテルを含む約30の企業は、ブロックチェーン技術「イーサリアム」の活用を共同で研究し、業界標準を構築するための企業同盟を発足した。ロイターが報じた。
▼Facebook、アフリカに500マイルのケーブル敷設へ
コネクティビティ(ネット接続)の提供のため。現地通信会社2社と協業。
▼LINEの広告配信、台湾運用開始
広告配信プラットフォーム「LINE Ads Platform」の台湾での本格運用を開始した。リリースによると、2016年12月12日より、「LINE」のタイムラインの一部広告配信面において、「LINE Ads Platform」を活用した運用型広告のテスト配信を開始し、本格運用に向けた準備を進めていたという。
▼インスタグラムストーリーズ広告を全世界で販売
Facebookは24時間で消えるタテ型画像・動画のインスタグラムストーリーズ広告を全世界で販売を開始した。米国で1月から先行してテストしていた。
▼LINEが家庭用バーチャルロボット開発
LINEは2日、家庭用のバーチャルロボット開発を手がけるベンチャーのウィンクル(東京)の株式の過半数を取得し、子会社化すると発表した。時事通信が報じた。LINEが同日公表した、音声認識を使う人工知能(AI)システム「Clova」を使い、家庭用のバーチャルロボットを共同開発する。
Written by 吉田拓史 / Takushi Yoshida
Photo by GettyImage