アドテク業界の技術進歩が停滞する中、メディアエージェンシーにアドテク知識を持った人材が多く流入している。そのほとんどの場合が、もともとはアドテク業界に興味を持ったためにエージェンシー業界を去った者たちなのだ。
この理由は、とてもわかりやすい。投資家などがアドテク企業に対する投資をやめたのだ。その結果、上場しているいくつかのアドテク企業の株価が暴落し、成長が止まってしまった。セントロ(Centro)、ロケットフュエル(Rocket Fuel)などのアドテク企業では費用ばかりが増えてしまい、数百人のスタッフを解雇している。ロケットフュエルは2015年5月に大量のスタッフを解雇したが、これは年間の運営費を3000万ドルほど抑えるためであった。他にもさまざまなアドテクベンダーがレイオフを実施した。
「アドテク業界から流入してくる人材が増えている。『隣の芝生もあまり青くない』ということに気づき始めたのだろう」と、メディアエージェンシー・スターコム(Starcom)の投資とアクティベーション部門を統括するアマンダ・リッチマン氏は言う。
アドテク業界の技術進歩が停滞するなか、メディアエージェンシーにアドテク知識をもった人材が多く流入している。そのほとんどが、もともとはアドテク業界に興味をもったためにエージェンシー業界を去った者たちだ。
この理由は、とてもわかりやすい。投資家などがアドテク企業に対する投資をやめたのだ。その結果、上場しているいくつかのアドテク企業の株価が暴落し、成長が止まってしまった。セントロ(Centro)、ロケットフュエル(Rocket Fuel)などのアドテク企業では費用ばかりが増えてしまい、数百人のスタッフを解雇している。ロケットフュエルは2015年5月に大量のスタッフを解雇したが、これは年間の運営費を3000万ドル(約32億円)ほど抑えるためであった。ほかにもさまざまなアドテクベンダーがレイオフを実施した。
「アドテク業界から流入してくる人材が増えている。『隣の芝生もあまり青くない』ということに気づき始めたのだろう」と、メディアエージェンシーであるスターコム(Starcom)の投資とアクティベーション部門を統括するアマンダ・リッチマン氏は言う。
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Google、Facebookも出戻りの一因
デイビッド・ゲインズ氏も、アドテク企業から出戻ってきたひとりだ。彼は現在メディアエージェンシーであるマクサス(Maxus)の最高企画責任者を勤めているが、少し前まではオーストラリアのアドテク企業エデンティファイ(Edentify)のマネージングパートナーであった。マクサスのグローバル最高戦略責任者であるダミアン・ブラックデン氏も同様に、2015年4月までアドテク企業、アドノロジー(Adnologies)に勤めていた。アイクロッシング(iCrossing)のメディア部門を統括しているマイク・ラシク氏も、数年間ロケットフュエルで働いていた。
「メディアエージェンシー側からすると、どんどん当たり前のことになってきている」と、ゲインズ氏は話す。彼のエデンティファイでの職務は、マーケティング戦略の判断材料となる大量のデータと調査結果を簡素化するツールを開発することであった。AmazonやGoogle、Facebookなどの大手デジタル企業の「ウォールドガーデン(壁で囲まれた庭)」の裏側で起きているM&Aなどを指摘し、「買収や合併も(出戻りの)大きな要因となっている」とも付け加えている。
また、リサーチ企業ピボータル(Pivotal)のアナリストであるブライアン・ウィーザー氏によると、2015年の第4四半期では、大手アドテク企業の採用に減少が見られたという。純粋なアドテク企業やマーケティング企業は79社あるが、第3四半期と比べると、0.8%の上昇でしかなかったのだ。第1四半期では5.2%、第2四半期では6.8%、第3四半期では7.4%と成長していたので、これは目を見張るほどの減少だ。
プログラマティックを強化する代理店
このようにアドテク業界の仕事は減っているが、エージェンシー業界は自らの技術力を向上させるためにも投資に力を入れている。アドテク企業から流出した才能ある人材を確保しようとしているのだ。アドテク知識のある人材を集めることにより、エージェンシーはプログラマティック分野を強化することができ、それと同時に、アドテク企業の強みと弱みを把握することもできる。
「アドテク技術をもった人材がエージェンシーに流入することについては、エージェンシーが社内能力を向上させる動きをしていることが要因だと考えられる」と、ハリウッドに拠点を構えるアドテク企業エンゲージ:BDR(engage:BDR)の最高経営責任者テッド・ダーニック氏は語る。「エージェンシーたちは、アドテクの技術に詳しく、また、アドテクの今後の展望が見えている人材を集めている」。
マクサス独自のオペレーティングシステムを企画・設計するためにエージェンシーに戻ったゲインズ氏はほんの一例に過ぎない。ゲインズ氏の同僚であるロバート・マーシャル氏も、プログラマティックスキルを磨くためにアリーナメディア(Arena Media)というエージェンシーを辞めている。そしてロケットフュエルでプログラマティックを学んだ後、マクサスのプログラマティック部長としてエージェンシー業界に戻ってきたのだ。
「知識を増やすことは良いことだ。しかし、アドテク企業で技術は学べても、学んだ技術を実際に使用する機会はないため、技術の本質を見抜くことができない」と、彼は指摘する。
新たなマーケターを生み出す
プログラマティックがエージェンシーにとって永久的な部門になりつつあるため、部門を統率できる人材が必要なのだ。エージェンシーであるアキュエン(Accuen)の最高経営責任者メガン・パリュウカ氏は、「プログラマティックプランニングスペシャリスト」という新たな役職を作り対応している。テクノロジーとマーケティングを融合させる役割だ。
「長いあいだ、プログラマティックは単なるひとつのツールに過ぎなかった」と、彼女は話す。「私たちがやりたいことは、データを使ってオーディエンスを理解する、新たな種類のマーケターを生み出すことだ」。
アドテクがメディアにとってますます重要なツールになるなか、これからも同じようなことが繰り返し起きるとゲインズ氏は指摘する。
「このようなアドテク企業とエージェンシーのあいだでの動きは、私たちの限界に挑戦するような、次なる目標を与えてくれる」と、彼は言う。「業界として、このような事態には慣れなければならない。そして、このような動きを推奨する体制を整えていく必要もある」。
Tanya Dua(原文/訳:BIG ROMAN)
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