インフルエンサーを利用したマーケティングでフラウドが横行していることに、大手ブランドやエージェンシーが不満を表明し、フラウドを防ごうと努めている。だが、同業界はこれを取り締まるのは非常に難しいという認識でいるようだ。しかし、この波に乗って、業界全体レベルの連合が、この市場の標準化を一層進めようとしている。
インフルエンサーを利用したマーケティングでフラウドが横行していることに、大手ブランドやエージェンシーが不満を表明し、フラウドを防ごうと努めている。だが、同業界はこれを取り締まるのは非常に難しいという認識でいるようだ。しかし、この波に乗って、業界全体レベルの連合が、この市場の標準化を一層進めようとしている。
ブランドやエージェンシー、インフルエンサーからなる連合、インフルエンサーマーケティングカウンシル(Influencer Marketing Council、IMC)は、2017年にその存在と目的を発表し、さらに踏み込んだ一歩として、ベストプラクティスの一覧を公開した。この12のベストプラクティスには、アカウントのエンゲージメントが向上しているか? や、インフルエンサーのオーディエンスの存在場所とエンゲージメントの発生場所との対比などに注目すること、などが列挙されている。この一覧は、さまざまなエージェンシーやブランドの従業員約20人がグループとなり作成したものだ。
「IMC」設立の背景
標準化の必要性を個々で訴えたり、社内で各社独自の対策をいくつか取ったりするエージェンシーやブランドが増加してきたことが追い風となっている。たとえば、ユニリーバ(Unilever)やケロッグ(Kellogg’s)をはじめとするブランドは、昨年、独自の標準を作り上げた。米国連邦取引委員会(the U.S. Federal Trade Commission、FTC)は、独自のガイドラインを作成し、その内容を補強することを繰り返してきたが、あまり大きな変化はないと思うと、マーケターらは言う。
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IMCの望みは、ブランドがプラットフォームやインフルエンサーと団体交渉を実施しながら、社内でこの取り組みを一層推進することだ。そして、ベストプラクティスの一覧の作成はその第一歩となる。インフルエンサープラットフォームであるキャプティブエイト(Captiv8)の共同創業者で、この取り組みを先導するクリシュナ・スブラマニアン氏は、IMCは2017年6月に立ち上げられたものの、「時期尚早だった」という。
実際、IMCはほとんど活動しない状態が続いていた。そして、フラウドを防ぎ、これまで以上に透明性を確保しようという声が上がったのは、ここ2年の話だ。IMCに参加している、ホライズンメディア(Horizon Media)でデジタルエクスペリエンス担当のディレクターであるサエ・チョー氏は、転機が訪れたのは、クライアントが投じる予算が増加したことに伴ってインフルエンサー価格設定が上昇したときだったと思うと語る。彼女のエージェンシーは、2011年にインフルエンサーマーケティングに重点を置く社内チームを設け、現在までにチームの規模は4倍にまで拡大した。
「我々は価格設定の透明性に関心があり、マーケターは価格設定方法に発言権がある。我々はカウンシルとともに購買力を有しており、(インフルエンサーとの会話において)これがあなた(インフルエンサー)のビジネスの未来を保証するものだと言える」と、チョー氏は言う。
参加企業の見解
IMCに参加している別の企業、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)はパートナー(インフルエンサー)を評価する方法を定めた枠組みを構築することを含めた、インフルエンサーベリファイド(Influencer Verified)という取り組みを昨年開始したと、ピュブリシスでグローバルコンテンツパートナー統括バイスプレジデント、ジェレミー・コーエン氏は言う。
同氏は、関与を深め、予算を増やそうとしているエージェンシークライアントが増加してきているため、同業界におけるベストプラクティスがますます必要になってきていることが確認できたという。マーケター719人を対象にして楽天マーケティング(Rakuten Marketing)が2019年3月に実施した調査では、マーケターの60%が、2019年はインフルエンサーへの投資を拡大する予定だと答えた。
「IMCは、その設立目的が、近年ストレスにむしばまれてきた業界に対して、枠組みを構築することであるため、私にとってはありがたいものだ。時間とともに学びが蓄積されたことで、新品のきらきらした玩具のようだったインフルエンサーマーケティングは、どちらかといえば信用できない方法へと変容してしまった」と、コーエン氏は言う。
現在、IMCは電子メールのやりとりや四半期時に電話に対応するなどしてグローバルに事業を行っている。スブラマニアン氏は、ブランドやエージェンシー、そのほかのインフルエンサーマーケティングプラットフォームに属する個人200人以上が、このグループの一員となることに関心を持っていると表明しているという。今後の計画としては、少なくとも1年に1回は対面イベントを開催することを目標にしている。
IMCが目指す世界
同業界が価格設定や指標などの問題に関して合意できるように、関与するエージェンシーが増えれば良いと願っていると、コーエン氏は言う。
「これは、多くの人が関わるエコシステムであり、各社各様のアプローチが取られている。私にとっての理想的な目標は、業界全体が受け入れられる標準、つまり、インフルエンサーがどのようにブランドと協業すべきか、また、ブランドがどのようにインフルエンサーと協業すべきかを定める明確な枠組みを構築することだ」と、コーエン氏は述べた