才能ある人物を惹きつけ、獲得することは、エージェンシーにとってひとつの課題だ。
ましてや、人材の流動性が高い業界である。しかし、現在において人材獲得競争はエージェンシーの間だけの話ではなくなり、Google、Facebook、Uber(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)などとも争わなくてはいけない時代になった。
エージェンシーたちはクリエイティビティを総動員してリクルートに臨んでいる。以下が、それぞれのエージェンシーが才能ある人物を発掘するために用いた独創的方法の例だ。
才能ある人物を惹きつけ、獲得することは、エージェンシーにとってひとつの課題だ。
ましてや、人材の流動性が高い業界である。しかし、現在において人材獲得競争はエージェンシーの間だけの話ではなくなり、Google、Facebook、Uber(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)などとも争わなくてはいけない時代になった。
エージェンシーたちはクリエイティビティを総動員してリクルートに臨んでいる。以下が、それぞれのエージェンシーが才能ある人物を発掘するために用いた独創的方法の例だ。
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ソーシャルキャンペーンの考案
ハバス・ワールドワイド・シカゴ(Havas Worldwide Chicago)
広告世界6位のハバス・ワールドワイドのシカゴ支部は2013年以降、インターンシッププログラムを継続して実施している。Twitter、Facebook、インスタグラムなどのソーシャルプラットフォームや、HBOの大ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」に着想を得た、Snapchatチャレンジを通じてリクルートを行ってきた。
2015年11月11日より開催されている最新のプログラムでは、候補生たちに最低でも3つのソーシャルチャンネルを使用し、慈善活動のためのソーシャルキャンペーンを考えよという課題を出した。
「履歴書だけでは全員が同じに見えるが、ソーシャルメディアを使わせることによって彼らの情熱、思考過程やモチベーションが見えてくる」と、ハバスの上席人事担当者であるヘザー・ヘイデン氏は話す。「彼らがどういう人物であるかということを聞かせてくれるのではなく、見せてくれるのだ」。
このエージェンシーではこれらのインターンシッププログラムのことを「ドラフト」と呼び、永年働いてくれる才能ある人物を発掘するのに役立てている。インターンシッププログラムを開催するたびにインターン生の50%以上を正社員として毎回雇い入れているという。
「現在は、ただ単にソーシャルにリップサービスをしていればいいという時代ではない」と、主席クリエイティブオフィサーであるジェイソン・ピーターソン氏は話す。「今後は誰が業界をリードしていくのか? ソーシャルとともに育ち、ソーシャルを熟知している、いまの子供たちしかいない」。
キャンペーンコピーのコンペ
R&Rパートナーズ(R&R Partners)
この独立系のエージェンシーでは、従来のリクルート方法を通して才能ある人物を発掘することができなかった。そこで、R&Rパートナーズは、自社の代表作でもあるラスベガスに観光を促す「What Happens Here, Stays Here(ここで起きたことは、ここに残る)」キャンペーンの一環として、スニーカーのマーケティングに着目した。
「Creative Sole Search(独創性ある靴底への探求)」というコンペを開催し、参加者たちに29センチの靴を使ってキャンペーンのキャッチコピーである「What Happen Here, Stay Here」を次の次元に昇華させるための方法を考えさせた。
「従来のリクルート方法では、選考過程の途中で、なぜ自分がこの業界で働いているのかがわからなくなるほど、立ち往生してしまうときがある」と、R&Rパートナーズのエグセクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるアーニー・ディジョージ氏は話す。「素晴らしいアイデアはどこからでも生まれうるからこそ、このコンペを開催した。実際、靴はどうでも良い。問題はどういう仕事をしたかだ」。
スピードデート形式の面接
MEC
2015年、広告世界最大手WPPグループのMECは、世界最大級の広告祭「アドバタイジング・ウィーク」の会場で採用面接を行った。面接は未経験から始められる仕事を対象とし、スピードデート形式を模して行われた。タイムズスクエアにテントを張り、北米の最高経営責任者であるマーラ・カプロウィッツ氏や本部の最高経営責任者であるチャールズ・コーティア氏などのエージェンシーの役員たちが朝から候補者たちの面接を行い、そして同日の午後には合格通知を発送していた。
面接は通常よりも速いスピードで行われた。予定ではそれぞれの候補者たちの面接時間は30分だったが、結果的には2時間の面接となるものもあったという。「従来の面接方法と変わりはない。ただ、時間を短縮しただけだ」と、MECにてグローバル・チーフ・タレント・オフィサーを務めるマリー・クレア・バーカー氏は話す。
ハッカソンの主催
レイン(Rain)
デジタルエージェンシーのレインでは、ニューヨーク市やユタ州の事務所で「ハッカソン」を主催。ハッカソンはソフトウェア開発者のイベントだが、レインでは一定期間集中的にプログラム開発やサービス考案などの共同作業を行っている。才能豊かな開発者たちが集まるからだ。
事実、ハッカソンの最中に雇われた者もいる。また、レインはニュヨーク州の北部で開催される有名なハッカソンである「ハックアップステート(Hack-Upstate)」の共同スポンサーでもある。レインはこれらのハッカソンを通じて、才能ある人物のリクルートを行っている。
「才能あふれる人材とは従来の雇用契約とはかけ離れた雇用契約を結ばないといけない。特に開発者とはだ。そうすることによって彼らが自由に仕事やプロジェクトに打ち込めるようになる」と、レインの最高執行責任者であるニック・ゴッドフリー氏は話す。「これが我々のエージェンシーの文化であり、人々がレインに魅了される理由だ」。
有望な候補生たちの合宿
ハバス・ブーンドグル・アムステルダム(Havas Boondoggle Amsterdam)
アムステルダムに拠点を構える、このエージェンシーは、宿泊先を提供することで夏のインターンシップ生のリクルートを行った。
Airbnbをリクルートのツールとして利用し、高い目標をもった候補生たちにAirbnbのプラットフォームに彼らの代表作を送らせた。そのなかから選ばれた候補生たちは一晩10ユーロと言う破格の価格でエージェンシーの事務所を宿として使えるのだ。
このプログラムは、Airbnbを利用して旅をする人とエージェンシーが求める人材には共通点があるという考えからできている。その共通点とは冒険心と柔軟な考えだ。「もしこの業界で成功したいならば、食べるときも、呼吸をするときも、寝るときも、広告のことを考えないといけない。そこで、実際にそうできるようにした」と、ハバス・ブーンドグル・アムステルダムの最高経営責任者であるサンダー・タックス氏は話す。
ソーシャルから一本釣り
ドイチェ(Deutsch)
ドイチェは才能ある人物の発掘をソーシャルメディアを通じて行ってきた。最近ではインスタグラムで3人も才能あふれる人材を見つけ、ソーシャルブックマークサイト「Reddit」でも1人見つけている。ブライアン兄弟とボー・アボット氏は彼らのWebサイトや、野球カードに面白いイラストが描かれているインスタグラムのアカウントから発見されたが、ダン・アトウォーター氏はインスタグラムのポートフォリオ付きプロフィールからドイチェが見つけた。
ドイチェのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるピート・ファヴァット
氏は経済ニュースサイト「ビジネスインサイダー」に「広告業界に人を雇い入れるという考えはもう終わった」とし、従来のリクルート方法はもう使えないと述べた。
Tanya Dua(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image from ThinkStock / Getty Images